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江戸時代後期「富士信仰」 5年ぶりに重要郷土資料 市ノ坪の民家で所蔵〈川崎市中原区〉

タウンニュース

(上)木造食行身禄坐像、(下)坐像の由来などが書かれた造像記=市教委提供

中原区内在住の個人宅で所蔵していた「市ノ坪の富士講関係資料」が3月26日、川崎市文化財の重要郷土資料として指定された。江戸時代後期の現中原区域での富士信仰の様相がわかる学術的な資料で、市の重要郷土資料としての指定は、約5年ぶり10件目。

今回指定された「市ノ坪の富士講関係資料」は、木造食行身禄(じきぎょうみろく)坐像や、その像の由来等が書かれた造像(ぞうぞう)記といった関連文書22点。講とは、組織をつくって行事を行うグループのことで、富士講は修験者の修行の山として代表的な富士山を信仰するグループを指す。

木造食行身禄坐像は、三重県出身の商人で富士講の指導者・食行身禄の座る姿を現した木造の彫刻で、高さ29cm、袖張33cm、膝張22・7cmの大きさで、寄せ木造り。造像記には、1811年6月に「真行妙仲(しんぎょうみょうちゅう)」が奉納した「食行身禄像」であることが記されており、「一ノ坪、北加瀬、中丸子、井田」などの村名や地域の行者名などが列記されている。そのほかにも、富士講の伝えや講の活動の資料が含まれており、江戸時代後期の川崎市域の富士信仰のようすがわかるという。

市文化財の重要郷土資料に指定した川崎市教育委員会の担当者は「暮らし、生活、信仰といったものがうかがい知ることができるのが重要郷土資料。今回の資料は、市ノ坪周辺の地域の人たちの信仰がわかり貴重なもの」と解説する。

区内では初

今回の指定によって、川崎市の指定文化財は117件に。そのうち有形民俗文化財が対象の重要郷土資料は、2019年7月23日に指定された「遊山慕仙詩碑(ゆうざんぼせんしひ)」(川崎区)以来、約5年ぶり10件目。中原区内の重要郷土資料は今回が初めて。

同資料は、中原区内在住者が所蔵するもので、その個人から文化財の申請が行われ、市教委が専門家の指導のもとで調査した結果、今回重要郷土資料に指定された。なお、同資料は一般公開は行っておらず、市教委ウェブサイトで詳細が紹介されている。

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