三河屋本店で来春、新事業 長谷の婚礼会社が利活用
若宮大路沿いにある1900年創業の酒店「三河屋本店」が2026年春にリニューアルオープンする。手がけるのは、長谷で結婚式場「萬屋本店」を運営する株式会社Daiyu。地元への配送などの酒販事業は続けながら、結婚式も行えるレストランとして再始動する。建物は、文化的価値の保全と法令上の安全性を確保し、改修することで国の登録有形文化財かつ防火地域内木造建築として全国初の建築基準法適用除外を実現した。
竹内福蔵氏が125年前に創業した三河屋本店。創業時の建物が関東大震災で倒壊したことを受け、1927年(昭和2年)に再建された出桁造り木造2階建ての店舗兼住宅。鎌倉の戦前の商店建築を代表する貴重な建物で、国の登録有形文化財、鎌倉市景観重要建築物等にも指定されている。現在、店は休業中で、2024年12月から工事や発掘調査が進められている。
官民学連携で保存
文化財かつ防火地域に指定されていることから、法規制が厳しく、建物の維持管理が課題だった。そこで、18年から鎌倉市や消防、東京大学、横浜国立大学などの専門家を交えた、官民学連携の保存活用プロジェクトがスタート。防火・耐震・構造に関して、法同等以上の安全基準を個別に設計・検証。柱や梁を取り外し、構造を強化し組み直すなどの代替措置で文化的価値の保全と法令上の安全性を実現させた。防火地域内の木造文化財における建築基準法の適用除外は全国初。
蔵で挙式も
来春からは結婚式場やレストランとしての活用が始まる。母屋は床の間や欄間などの意匠を残したままレストラン兼披露宴会場に、敷地奥にある石と木で作られた蔵は挙式会場になる。酒販事業は継承し、厳選した日本酒を取り揃え、地元への配送サービスも続ける。
「文化財を未来へとつなぎ、より豊かで持続可能な地域社会を実現していく」と同社。