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「約束を破ったのはお前か?」家ナシ金ナシ女性が特殊警棒でチンピラをボコるハードボイルド劇『リボルバー』

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「約束を破ったのはお前か?」家ナシ金ナシ女性が特殊警棒でチンピラをボコるハードボイルド劇『リボルバー』

チョン・ドヨン×犯罪サスペンス『リボルバー』

“タンクトップにスカジャンを羽織ったチョン・ドヨン”のビジュアルだけで鑑賞決定! なインパクトを放っていた映画『リボルバー』が、ついに2月28日(金)より公開。豪華キャストの演技合戦が堪能できる、ヒリヒリとした空気に心拍数上昇不可避のサスペンス・アクションだ。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

夢に見たマンションへの入居を待ちわびていた警察官スヨン(チョン・ドヨン)は、恋人(イ・ジョンジェ)の突然の裏金問題に巻き込まれ、“すべての罪を被ってくれるなら大きな補償を約束する”と謎の男アンディ(チ・チャンウク)に持ち掛けられる。スヨンはこれを受け入れ刑務所に入ることに。

そして2年後の出所日、刑務所の前で彼女を待ち伏せしていたのは、見知らぬ謎の女ユンソン(イム・ジヨン)だった。何かが間違っていると直感したスヨンは、大金も家も、失ったすべてを取り戻すために、補償を約束したアンディを探しまわる。そして、この背後にある巨大な勢力と向かい合うことになるのだが……。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

優れた犯罪映画に派手さは不要? じっとり強張るリベンジ劇

多くの傑作を送り出してきた韓国ノワールに新たな作品が加わった。犯罪モノの女性主人公といえばファム・ファタル的な役どころが多いが、『修羅の華』などの残虐アクションや『悪女/AKUJO』のようなウルトラC級アサシンはそういったイメージを良い意味で覆してきた。

本作『リボルバー』はそんな“クールな女性主人公像”とも一味違い、脛に傷を持つ女性と取り巻く人々が顔面で直球勝負を繰り広げる群像クライム劇。しかも主演は『シークレット・サンシャイン』(2007年)のチョン・ドヨンで、姫カット風(?)黒髪ストレートが過去作のイメージを覆す。監督のオ・スンウクとは2015年の『無頼漢 渇いた罪』から10年ぶりの再タッグだ。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

ドヨンはNetflixの『キル・ボクスン』(2023年)でアクションへの適正を見せつけたが、『リボルバー』は“体当たり系”アクション映画ではない。全編を通して描かれる彼女の目的はシンプルで、「約束の金を取り戻すこと」だけ。そして“契約”が反故にされた理由を暴くため、関与したであろう人々にじりじりと詰め寄っていく。

物語の大筋を聞けば、メル・ギブソン主演の『ペイバック』(1999年)やジェイソン・ステイサム主演/ガイ・リッチー監督の同タイトル作(2005年)あたりが思い出される。しかしドヨン演じるハ・スヨンは元警官だし、(ある時点までは)声を荒げることもなく冷静に「なんで、こんなことに、なってんだ?」と事態を解明しようとする。主人公がドッタンバッタンあーだーこーだと大騒ぎするアクション映画に辟易している人は、ある意味リアルなスヨンのキャラ造形に新鮮さすら覚えるだろう。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

イ・ジョンジェも登場! 濃厚キャラから目が離せない

リアルタイムで真相を追うスヨンの姿と同時に、序盤で<トラブル発生~身代わり逮捕~ムショ暮らし>が並行で描かれ、そこで重要になるのがイ・ジョンジェ演じる“恋人”の存在。ハリウッド進出済みの大物の贅沢な出演は眼福だが、刑事だった彼が“裏切り”に関与していたのか、という謎も大きなポイントになっている。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

スヨンを「オンニ(お姉さん)」と皮肉交じりに呼ぶチョン・ユンソン(イム・ジヨン)の敵か味方かわからない挙動も気になるし、近年のクライム映画によく登場する“実家が極太の無軌道なチンピラ”ど真ん中の輩、アンディの無責任ぶりはホームラン級。演じるのがチ・チャンウクなのでルックス的には甘めだが、分かりやすく例えると北村一輝がハマりそうなキャラだ。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

また、堅めの役柄のイメージが強いキム・ジョンス演じる“本部長”の存在はアンディとの関係性を含め、どことなくステイサム映画『ビーキーパー』でジェレミー・アイアンズが演じた元CIA長官ウォレスを彷彿させる。絶大な権力を持つ“わるいおとな”の枯れた色気ぷんぷんで、実際いちばん怖い人でもある。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

そして“わるいやつ”と言えばこの人、『アシュラ』(2016年)などでもおなじみのチョン・マンシクが本作で演じるチョ社長は、立ち回り重視の小悪党。なお本作はキャラ造形に一定のコダワリがあるようで、物語に直接絡まない端役にも強烈な個性を載っけつつ“匂わせて”くるのでお見逃しなく。

緊張みなぎる“非アクション”が新鮮! 女性陣の駆け引きがキモに

本作は韓国ノワールの系譜というよりも、たとえば北欧サスペンス/ミステリーのような“じっくり見せる”面白さで観客の興味を引っ張る。私立探偵のように関係者を当たり、少しずつ真相に近づいていくスヨン。登場人物ひとり一人をこってり見せる手法が効いていて、アクションは少ないがちょっとしたセリフも聞き逃がせない。撮影ロケーションもいちいち最高だ。

『リボルバー』© 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

とはいえスヨンは『キル・ボクスン』のような暗殺スキルを持つわけでもないので、その言動には常に緊張感が伴う。まるで『ドライヴ』(2011年)のようなバイオレンスシーンもあるにはあるが、それよりも会話の端々に込められた“明確な殺意”がサラリと流されたりするドライな世界観のほうが恐怖を催させる。イ・ジョンジェやチョン・ヘジンの重厚な存在感はさすがだが、変なカリスマ性を載せないところも良い。

そして最後まで印象に残るのはチョン・ドヨンとイム・ジヨンの絶妙な距離感と、たまにクスリとさせる軽妙な掛け合い。すべてを失ったスヨンの非フィジカルな強さと、権力者に媚びてブツクサ言いつつも彼女を放っておけないユンソンの関係は、血みどろ韓国ノワールのなかにあってかなり新鮮だし、なんなら爽やかですらある。

イム・ジヨン、チョン・ドヨン、チ・チャンウク、オ・スンウク監督『リボルバー』撮影メイキング © 2024 PLUS M ENTERTAINMENT, SANAI PICTURES AND STORY ROOFTOP ALL RIGHTS RESERVED.

装填弾数は少ないがシンプルな構造ゆえに丈夫で壊れにくいリボルバー。鑑賞後には硝煙の匂いを想像しつつ、安い肴をアテに1杯やりたくなること請け合いのサスペンスフルかつ滋味ある“人間”ドラマだ。

『リボルバー』は2月28日(金)よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー

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