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これぞ神業!一人でいくつもの役割をこなす「アニメーター」の仕事とは

アットエス

SBSラジオ「TOROアニメーション総研」のイチオシコーナー、人気アニメ評論家の藤津さんが語る『藤津亮太のアニメラボ』。今回はメッセージテーマ「神業」にちなんで「アニメーターの仕事」についてお話を伺いました。※以下語り、藤津亮太さん

アニメの動きのキーとなる絵を描く、「原画マン」

アニメーターは画面に出てくるキャラクターなどを描く仕事に携わる人のことです。アニメーターは大きく「原画マン」と「動画マン」に分けられます。

原画マンはアニメの動きのキーとなる絵を描くのが主な仕事ですが、その仕事の内容を細かく見ると「カメラマン」「俳優」「特撮マン」といった3つの仕事を兼ね備えているということができます。もうそれだけで神業ですよね。

カメラマン

アニメーターは演出家が描いた絵コンテをもとに、まずは「レイアウト」を描きます。「レイアウト」は、映像の構図を決める工程で、どんなふうに風景を切り取るのか、その構図がキャラクターの演技がみやすいものになっているのか、などを考えて描く必要があります。これは実写作品の「カメラマン」の仕事と重なる部分が多い工程といえます。

背景となるの見え方一つとっても、望遠レンズで見たような風景と広角レンズで見たような風景では、全然異なるわけで、絵ではあるけれどそれを描くためには、「どんなレンズで撮っているか」ということを想定するだけの知識と画力が求められるのです。

そのためアニメーターの練習として、実際にカメラで撮影をして、レンズによって見え方がどう変わるかを学ぶ場合もあります。またレイアウトは、写真のような正確さだけでなく、そこにアニメ的なウソ、誇張もプラスして描くことで、さらに魅力的な画面になります。正確さとウソの両立もまた「神業」の一種ですね。

俳優

次の「俳優」とはつまり演技のこと。絵コンテでもキャラクターのお芝居は、大雑把に指定されています。それを踏まえて、原画でさらにそのキャラクターらしい動きをさせるのも原画マンの仕事です。

例えば椅子に座るときの様子でも、どんなふうに座るか、座るときにどんなポーズで座るかみたいなものを膨らませて描くことで、キャラクターが一層存在感を持ってきます。原画マンの仕事は、そういう演技を通じてキャラクターを表現していくという「俳優」に通じる部分もあるのです。逆にいうと演技というものへの理解も求められる側面もある仕事なわけです。

例えば、『もののけ姫』で、主人公アシタカが人をおんぶして歩いているシーンがあります。ところがおぶわれている人がだんだんずり落ちてくるから、一度背負い直す動作が入ります。メイキングを見ると、これは実際に現場のスタッフが人をおぶってみて、それで動きを確認しています。

演技といっても単に想像力だけで描くわけではなく、現実の動きを観察するということが大前提で、そこからどう演技を膨らませていくかが求められるわけです。

特撮マン

最後の「特撮マン」。いわゆるエフェクト・アニメーションといわれる分野です。アニメーターは煙や炎、フラッシュやビームなども描く必要があります。こういうエフェクトは、煙や炎に基本のスタイルはあるものの、最終的にはアニメーターのセンスによるところも大きいです。手描きでエフェクトを描くと、例えば煙の動きや形からしてそのシーンの雰囲気にふさわしいものとして描くことができるのです。これは実写には難しいことです。手描きなら、こういう自然現象的なものにも“演技”をさせることができるわけです。
『マクロス』シリーズでアニメーター・板野一郎さんは、どうやったら自分なりのエフェクトが描けるかと、家を壊してるところを観察して、破片や土煙がどんなものかを研究し、それをメカ描写やエフェクト描写に生かしていたそうです。

この「カメラマン」「俳優」「特撮マン」という3つの要素を併せ持った人が原画マンというわけですね。

原画を清書していく「動画マン」

その後が動画マンの仕事ですが、まずは原画マンが描いたキーとなる動きと動きの間を指定された枚数の絵で埋めていきます。これを「中割り」といいます。振り向くというシーンだったら、「向こうを向いてる姿」と「こっちを向いてる姿」が原画で、その2つの絵の中間のポーズを描きます。

もう一つは原画を清書(トレス)する仕事。動画マンは全ての原画をトレスし清書します。この動画の線を、スキャンして色を塗っていくので、テレビ画面やスクリーンに出てくる線は、動画の線なのです。この原画をトレースする作業も、難易度が高く、実際にアニメーターになって原画をバリバリやっている人でも、動画時代は綺麗な線がなかなか引けなくて苦労した、なんていうエピソードを持っていたりします。

トレスといってもただなぞるだけではありません。大事なのは、原画マンがどういう意図でその線を引いてるかを理解すること、そしてそのニュアンスを拾うことが重要です。これはどういうパーツで、どういうふうに動くんだというのを理解しないで漠然となぞると、ものの形が不正確になり、いわゆる「動画が溶ける」という状態になったりします。

アニメーター教育をやっている方がSNSで、これから動画を始める人に向けて、「1ミリの中に10本の線が引けることを目標に」と投稿していました。動画に求められる精度というのは、それぐらいシビアなものなんですね。これもまたアニメーターの仕事が神業たる所以だと思います。

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