「海洋戦士シーセーバー」と共に護(まも)る!湘南の海~トングをその手に、いざ立ち上がれ~
大きな黄色い目に、ブルーを基調としたボディ。水色のマフラーをなびかせ闘う湘南・江の島のご当地ヒーロー「海洋戦士シーセーバー」。彼はなぜ生まれたのか? 活動拠点の片瀬東浜海岸で彼は何と闘っているのか?
説明しよう!「海洋戦士シーセーバー」とは
海を愛する青年が江の島に伝わる五頭龍大神の子「コッズ」(タツノオトシゴ)の力を借りて変身したヒーローで、五頭龍大神の化身。人間社会が生み出したゴミ怪人と戦いながら、江の島近辺でのビーチクリーン活動を行う。登場の決め台詞は「海の平和を守り、海のピンチを伝える、海洋戦士シーセーバー!」。武器は三叉槍(さんさそう)、必殺技はドラゴンストローム。
「とにかく子供に海に来てもらいたくて」
ビーチクリーン活動は今や日本各地で見られるが、ヒーローが一緒にゴミ拾いなんてなかなかない。片瀬東浜海岸で行われるNPO法人「海さくら」のゴミ拾いに、「海洋戦士シーセーバー」が現れたのは2021年のこと。
「とにかく子供に海に来てもらいたくて生み出しました。日本財団のデータによると、10代の子供の4割超が海に関心がないというのです。海水浴客の数も50年前と比べると4分の1に減り、子供の海離れが加速しています。それはとても怖いこと。海で遊ぶことで、その素晴らしさや恐怖を知ってほしい」と、理事長の古澤純一郎さん。
2023年にはなんとテレビ神奈川で特撮番組に(2025年7月現在はDMM TVで配信)! 「画面で見たバーチャルなシーセーバーと毎月ゴミ拾いするリアルな姿をつなげたかったんです」と古澤さん(以下同じ)。ちびっ子は本物に会えてさぞ興奮しただろう。
シーセーバーのモチーフはタツノオトシゴ。これは、江の島の海にかつていたタツノオトシゴが再び暮らせるほどのきれいな海を取り戻したい、という「海さくら」の設立目的が込められている。2005年に立ち上げ、2006年9月の第1回からゴミ拾いはほぼ毎月開催。20年目となる2025年は6月で212回に。一体どんなゴミがあるのだろうか。
「放置ゴミもありますが、8割近くが川から流れて来る街のゴミです」
なんと! 多いのはプラスチック、タバコのフィルター、釘だという。
打ち上げられたヨシやアシに人工芝が絡まっていたりもする。今までで印象的だったものは?
「注射器は衝撃でした。量が半端じゃなかったので不法投棄だったかもしれません。あと、たぶん処分に困ったからだと思いますが……、ダッチワイフ。死体かと思いましたよ。心臓に悪いから本当にやめてほしい」
でもうれしい変化も。「最近誰かがゴミを拾ってくれているんです。明らかに浜はきれいになっています」。その一方、悪い変化も感じている。
「僕はダイビングをするのですが、20年前は海底にワカメ、ヒジキ、アカモクなどの海藻類の森がわんさかあった。それが今ほとんど打ち上がらなくなっています。植物性プランクトンが生まれず、魚にとってもよくないです」
そこで「海さくら」は江の島の西浦で海底に森を作るプロジェクトにも取り組んでいる。
では、今後の目標は?
「やはり僕が生きている間にタツノオトシゴを取り戻したいですね。それと、情熱ある若者にこの活動を引き継ぐことも使命だと思っています」
海を愛する未来の若きリーダーよ、シーセーバーと共に闘おう! ゴミがなくなるその日まで。タツノオトシゴが江の島の海を再び泳ぐまで。
次回のゴミ拾いの開催予定は、umisakura.com/にて。
シーセーバーがDVDに!
2023年4月からテレビ神奈川で放映された『海洋戦士シーセーバー』全12話をまとめたDVDが、2025年6月14日に発売。主役の大矢剛康さん、ヴィーナ役・山本夢さんの撮影秘話やテーマソングの誕生秘話を収めた特典映像付き。エンドロールで流れる「海さくら」の活動映像は全話異なるので細部まで見逃すな!
1話15分×全12話。海さくらオンラインショップumisakuraonline.com/にて販売。1500円。
取材・文=下里康子 撮影=加藤熊三
『散歩の達人』2025年7月号より