ケアレスミス、字が汚い…発達障害中高校生、定期テスト対策は【専門家QA】
監修:井上雅彦
鳥取大学 大学院 医学系研究科 臨床心理学講座 教授/LITALICO研究所 スペシャルアドバイザー
中学生、高校生…発達障害のある思春期の子どもの悩みって?アンケート結果発表!
親のフォローでカバーしていた未就学、小学校時代とは違い、中学・高校に進学すると学習面、生活面、人間関係などまた別の悩みが出てくる頃だと思います。精神面などで変化が大きい時期には、特性による困り事の表れ方にも変化がみられる傾向にあります。
今回発達ナビでは「発達障害のある中学生・高校生の悩み」についてのアンケートを実施いたしました。結果は「学習面での悩みがある/あった(勉強、テスト、宿題、受験など)」が46%で一番多い結果となりました。また、アンケート内での読者の方のコメントも紹介させていただきます。
中学生になって、教科書のルビが見えていないことがわかりました。
慌てて学校に「授業やテストでルーペを使わせて下さい」とお願いしました。
スクールカウンセラーの先生に通級指導を勧められ、学校の提案で、次の年から一部の教科で拡大教科書を使うことになりました。
最近、盲学校の先生が色々テストしてくれて、視力の問題ではなく、教科書が白くてまぶしいため、文字が消えたりしてしまうらしいことがわかりました。
遮光レンズのメガネを作って、だいぶ楽になったようです。
(以下略)
(なまちゃんさん)引用:「中学生、高校生の子どもの悩み」アンケート&エピソード募集!
https://h-navi.jp/selective_surveys/244
読者の皆さんも気になる方の多い学習面での悩み。その中でも困り事として多い「家庭学習やテストの悩み」について今回は専門家にお答えいただきました。
テスト勉強の仕方が分からない、ケアレスミスが治らない…発達障害のある中学生、高校生の 定期テスト対策は?【専門家QA】
Q:ASD(自閉スペクトラム症)の中学生がいます。こだわりが強く、テストは必ず順番通りに解かないと気が済まず、途中で分からない問題があるとそこで時間を取られてしまい、後半白紙で提出……ということがよくあります。どのようにアドバイスをしたらよいでしょうか。
A:テストの本番ではなく、事前に問題を飛ばして回答する練習をしておきましょう。
問題を飛ばしながら解く体験を重ね、それによって回答できる問題数が増えることが理解できると解決につながることが多いと思います。
Q:ADHD(注意欠如多動症)の高校生がいます。問題を解くスピードは早いのですが、見直しが苦手で回答欄がずれていたり、ケアレスミスも多く……本人も注意しているようなのですが中々治らず困っています。
A:テストの本番ではなく、見直しのための練習をしておきましょう。最初は口頭で先生が見直し指示を出し、ミスを発見したり修正したりできるようにしておき、徐々に見直し指示がなくても自分でできるようにしていきます。見直し回数や見直しポイントを予め決めておくのも良いと思います。
Q:ASD(自閉スペクトラム症)グレーゾーンの中学生がいます。不器用さもあり、字を書くことが苦手です。テスト前にノートを確認すると解読不能なこともしばしば……。丁寧に書こうとすると時間が足りないようです。どのような支援が受けられるのでしょうか。
A:ASD(自閉スペクトラム症)のお子さんの中にはDCD(発達性協調運動症)や発達性の読み書き障害を併存する子がいます。専門機関でそれらの診断や評価がなされれば宿題をノートに書くことや、板書などに対する合理的配慮が得られると思います。
連絡帳などのメモに関しては、本人が読める字であることが最低条件だと思います。本人が理解できるようであれば、単語レベルや記号などで書いていくのも一つの方法です。
Q:ASD(自閉スペクトラム症)の中学生がいます。普段から提出物などを忘れたりして先生からたびたび注意をされています。また、テスト前はテスト範囲を把握していなかったり、間違えていたり……親がフォローすることもできますが自立も大切だと思い、どこまで手を出していいのか悩んでいます。
A:発達障害のある大学生の場合、合理的配慮として提出物や試験の範囲などを個別に伝えることも可能です。また、年齢が上がればカレンダーアプリやTODOアプリなどを使って自動的に締め切りなどをアラートで知らせることもできるようになっています。
中学生の場合、最初から完璧にできるようにすることを目指すのではなく、その年齢に合わせた親や教師からの指示や支援ツールを活用すること、支援やツールを活用して成功体験をしていけることを目指すのが良いと思います。
テスト、テスト勉強関連コラム
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的発達症(知的障害)、自閉スペクトラム症、注意欠如・多動症、コミュニケーション症群、限局性学習症、チック症群、発達性協調運動症、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
知的発達症
知的障害の名称で呼ばれていましたが、現在は知的発達症と呼ばれるようになりました。論理的思考、問題解決、計画、抽象的思考、判断、などの知的能力の困難性、そのことによる生活面の適応困難によって特徴づけられます。程度に応じて軽度、中等度、重度に分類されます。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。
ADHD(注意欠如多動症)
注意欠陥・多動性障害の名称で呼ばれていましたが、現在はADHD、注意欠如・多動症と呼ばれるようになりました。ADHDはAttention-Deficit Hyperactivity Disorderの略。
ADHDはさらに、不注意優勢に存在するADHD、多動・衝動性優勢に存在するADHD、混合に存在するADHDと呼ばれるようになりました。今までの「ADHD~型」という表現はなくなりましたが、一部では現在も使われています。
SLD(限局性学習症)
LD、学習障害、などの名称で呼ばれていましたが、現在はSLD、限局性学習症と呼ばれるようになりました。SLDはSpecific Learning Disorderの略。