週3・4友だち呼ぶも一人で動画鑑賞の自閉症小5息子。在宅勤務の夫は「呼ぶ意味ない!」と怒り…どうすればいい!?
監修:鈴木直光
筑波こどものこころクリニック院長
お友だちを家に呼ぶようになったASD(自閉スペクトラム症)の長男
4月から小学6年生になった長男のミミ(ASD/自閉スペクトラム症)が家にお友だちを連れてくるようになって1年が経ちました。
数人のお友だちがやってくるとそこは溜まり場のようになり、みんなわいわい遊んでいます。わが家は私は在宅勤務で、パパは自営業。そばでミミと友だちたちの様子を見られるので、1年間観察してきました。
ミミに親友といえるようなお友だちが1人でもできればいいなと思っていますが、「親友」と言えるような特定の子はおらず、遊ぶことはありません。
「友だち呼ぶ意味ないじゃないか」という夫に長男は意外な返事を
お友だちを呼んだ日はこんな流れです。
最初の30分くらい、ミミは自分が好きな動画を見ます。お友だちが「ゲームやろうよ」と誘っても、動画に夢中でゲームをやりません。なので、お友だちは1人でゲームをしたり、あとから来た子とゲームをしています。
ミミが動画を見て気が済んだ頃には、お友だち同士が遊んでいて、ミミは輪に入れず1人でゲームをしていることが多いです。ミミが自分から声を掛けて輪に入れることもありますが、「時々」です。
そんな様子をいつも見ていた私とパパ。ある日、お友だちが帰ったあとパパは「1人で遊んでいるなら、友だちを呼ぶ意味ないじゃないか」と強めの口調でミミに言いました。私も気になっていたので、「ミミ1人でゲームして、1人でゲームに文句を言ってて、楽しそうに見えなかったよ。きっとパパもそう思ったんだよ」と伝えました。するとミミは、「みんなといると落ち着くんだよ」とポツリ。輪に入れなくても、同じ空間に居ることでミミの中では「友だち」であることになり、学校での立ち位置や、自信になっているのかもしれない……と気づき、思い出したことがありました。
ミミがまだ小学2年生くらいの頃、公園で鬼ごっこで遊んでいたことがありました。ミミは鬼にタッチされても鬼役にならないので、お友だちから相手にされなくなりました。でも、鬼ごっこには不参加なのに、ふわふわとお友だちの周りに居続けたのです。だんだん公園にも行かなくなっていったのですが、その時と重なって見えました。
一緒に遊んでいなくても、ただ側にいることで安心するんだなと、私はミミが友だちを呼ぶのに納得したのでした。
ですがパパは納得できなかったようで……。
パパ我慢の限界⁉「もう友だちを呼ぶな!」に「パパなんか居なくなればいい......!」
その後、週に3、4日のペースでお友だちが遊びにくる週も増えてきました。そして回数を重ねていくうちに、お友だちと過ごすのは17時30分までと決まりを作りました。
ですがある日、遊びに夢中になり10分以上過ぎてしまったことがありました。お友だちが帰宅した後、パパは激怒!「呼ぶのは週に3日まで!」とルールが少し厳しくなりました。ミミには「帰るのが遅くなると、お友だちのお家の人が心配するからだよ」と理由を伝え、納得してもらいました。
パパもミミがお友だちを呼びたいならと頑張ってくれていたとは思うのですが、週の半分以上も呼ばれること、また呼んでもミミが友だちを遊んでいるわけではないことにストレスを感じていたんだと思います。そしてついに爆発する日が来てしまいました。
その日はまたミミがお友だちの輪に入れず1人でゲームをやり、思い通りに行かずゲームをしながら暴言をずっと言っていた……という一日でした。
お友だちが帰ったあと、パパは真っ赤な顔で「1人で動画を見たり1人でゲームやってるならもう呼ぶな!」とミミに怒ったのです。
ミミは別室でシクシク涙を流して「パパなんか居なくなればいい......!」と声を小さくしてパパに対するひどい暴言をたくさん言いました。私は「パパは、ミミがひとりぼっちで遊んでいて仲間はずれにされてるんじゃないかって心配してるんだよ。私もそう見えるよ。ミミがゲームをしながら怒っていたのも、友だちと遊べない気持ちをぶつけていたんじゃない?」と聞きました。でも怒っているミミは「パパなんて……!」と繰り返すばかりで、話を聞いてくれる状態ではありませんでした。
再びお友だちを呼べるようにするために
このようにして、うちにお友だちを呼ぶことは禁止になってしまいました。それでも、遊びたいお友だちがいるなら、外やお友だちのおうちに行くと思います。でも、自分の家以外で、いままでと同じペースで遊ぶのかと思うと、分かりません。
ミミは今もパパに対して「禁止にするなんてひどい!」と、かなり強い怒りの感情を持っています。きっと学校で「パパのせいで呼べなくなった!」と文句ばかり言っているのだろうと想像してしまいます。私は友だちの側にいることをミミが望んでいるのだから、パパと相談してまたいつか家にお友だちを呼べるようにできないかなと思っていました。
ですが、実はミミとパパの間に誤解があったことが分かったのです。それはまた次回にお話しさせていただきます。
執筆/taeko
(監修:鈴木先生より)
実はパパはミミさんの友だちの声がうるさかったのかもしれません。そして、友だちが来たら一緒に遊ぶものだという一種の規則(こだわり)がパパの心の中にあったのでしょう。ミミさんが楽しければお友だちを呼ぶことを禁止しなくてもよかったのです。周りに人がいると安心できるのは実は私たちも経験しています。図書館自習室での勉強です。家で一人だけでやっていてもはかどらないが、図書館へ行くと不思議にはかどるという経験は誰にでもあると思います。皆で一緒になって勉強するわけでもなく、同じ教科をやるわけでもなく、集団の中の一人として存在していることで安心感が生まれるのです。
(コラム内の障害名表記について)
コラム内では、現在一般的に使用される障害名・疾患名で表記をしていますが、2013年に公開された米国精神医学会が作成する、精神疾患・精神障害の分類マニュアルDSM-5などをもとに、日本小児神経学会などでは「障害」という表記ではなく、「~症」と表現されるようになりました。現在は下記の表現になっています。
神経発達症
発達障害の名称で呼ばれていましたが、現在は神経発達症と呼ばれるようになりました。
知的障害(知的発達症)、ASD(自閉スペクトラム症)、ADHD(注意欠如多動症)、コミュニケーション症群、LD・SLD(限局性学習症)、チック症群、DCD(発達性協調運動症)、常同運動症が含まれます。
※発達障害者支援法において、発達障害の定義の中に知的発達症(知的能力障害)は含まれないため、神経発達症のほうが発達障害よりも広い概念になります。
ASD(自閉スペクトラム症)
自閉症、高機能自閉症、広汎性発達障害、アスペルガー(Asperger)症候群などのいろいろな名称で呼ばれていたものがまとめて表現されるようになりました。ASDはAutism Spectrum Disorderの略。