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プリンシパルになって10年、母になった近藤亜香が今思う「踊りの変化」~15年ぶりの来日を果たすオーストラリア・バレエ団の「顔」

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オーストラリア・バレエ団『ドン・キホーテ』近藤亜香

世界的に活躍してきたデヴィッド・ホールバーグを芸術監督に迎え、2023年シーズンには年間の総観客動員数30万人を達成したオーストラリア・バレエ団。今、バレエ界で注目を集めるこのカンパニーが、2025年5月、15年ぶりの来日を果たす。そこで10年に渡り、最高位のプリンシパルとして活躍する日本人ダンサーが近藤亜香だ。ホールバーグからの信頼も厚く、カンパニーの「顔」となった彼女に日本公演への意気込みや演目の見どころ、プリンシパルになってからの変化について話を聞いた。

近藤亜香 (Photo:Sally Kaack)

――2010年に入団し、今年で15年目。プロのダンサーになるまでの歩みを教えてください。

私は昔から負けず嫌いな性格で、誰よりも上手になりたい一心で努力してきました。高校2年生のときに出場したコンクールでスカラシップをいただき、留学先に選んだのがオーストラリア・バレエ学校です。入学後、外国の生徒たちと自分との見た目のギャップに悩んだ時期もありましたが、当時の先生が「バレエは見た目だけでなく、踊りが大切なんだよ」と励ましてくださり、自分の個性を強みに変えることの大切さを学びました。その苦しい時期を乗り越えたことが、今の芯の強さにつながっていると思います。

――入団後はとんとん拍子に進みましたか?

私はなかなか役がつかず、自信を失って悩みました。でも入団2年目のとき、勇気をふり絞って当時の芸術監督に気持ちを伝えに行ったんです。私は日本で生まれ育ったので「入ったばかりの自分なんかがアピールしてもいいのかな」という迷いがありましたが、結果的にそうしたことで芸術監督に気持ちが伝わり、役に選ばれる機会が増えていきました。海外のバレエ団で生き残るには、自分にはやる気があるのだとアピールし、コミュニケートすることが大切なのだと気づけたんです。

――そこから着実にランクを上げていき、プリンシパルになって10年。踊りへの向き合い方にはどんな変化がありましたか?

プリンシパルはうまく踊れて当たり前で、それ以上を求められるポジションです。若いころはそのプレッシャーに負けたくなくて、練習量をかなり増やしました。でもあるとき、がむしゃらに練習しなくても落ち着いて主役を踊れている自分に気づき、「経験って舞台に出るんだな」と感じたんです。それから、3年前(2022年)に出産したことで、私は今、カンパニーの中でお母さんっぽくなっている気がします(笑)。プリンシパルとしてみんなを引っ張っていこうと気負うより、ダンサーみんながうまくいくようにサポートしたい気持ちが大きいですね。

(Photo: Rainee Lantry)

――今回の来日公演で上演されるルドルフ・ヌレエフ版『ドン・キホーテ』は、オーストラリア・バレエ団が2023年に新制作したものですよね。そのときにシルヴィ・ギエムがコーチとして来てくださったと聞きましたが、彼女から学んだことは?

キトリは大好きな役で、若いころはエネルギーを120%出し切って踊っていました。でも、シルヴィから「客席がわっと沸く瞬間を作るためには、引くべきところを引いて、盛り上げたいところにエネルギーを注いだほうがいい」とアドバイスをもらったんです。強弱をつけることで、ただ元気いっぱいなキャラクターではなく、余裕のある大人の女性像も見せられるようになったと思います。

――大スターのシルヴィ・ギエムから直接指導を受けた経験はかけがえのないものですね!

そうなんです。対面したときはみんなと同じように「シルヴィ」と呼んでいましたけれど、恐れ多くて……裏では「シルヴィさま」と呼んでいました(笑)。

――来日公演で相手役のバジルを踊るのは、近藤さんの公私ともにパートナーであるチェンウ・グオさんです。彼の魅力を教えてください。

お調子者のところのあるチェンウはバジルそのもの。私たちはふたりとも負けず嫌いな性格で、お互いに意見をぶつけ合って、試行錯誤しながらよいものを生み出すことが多いのですが、ヌレエフ版の『ドン・キホーテ』はキトリとバジルの関係はまさにそれ。ダンス・バトルのように、どちらがうまく踊れるかを競い合うシーンもあるので、素の私たちが舞台上で垣間見えると思います。

(Photo: Rainee Lantry)

――ご自身が踊るシーンのほかに、注目ポイントはありますか?

今回の『ドン・キホーテ』はヌレエフが遺した映画作品をベースに、新たに制作した作品です。映画にあった舞台装置や衣裳、照明を踏襲していてとにかく豪華ですし、映像を舞台化した作品ならではの仕掛けもあります。特に好きなのはファンダンゴのようなキャラクター・ダンスのシーン。ヴェルヴェットの衣裳が見事ですし、オーストラリア・バレエ団は民族舞踊のスタイルが得意なので、とても合っていると思います。

――最後に、今のバレエ団の魅力を教えてください。

デヴィッドが芸術監督になってから、今まで以上にダンサーたちは活気に満ちています。プリンシパルからコール・ド・バレエまで個性豊かなダンサーが揃っていて、『ドン・キホーテ』は今のエネルギッシュな私たちをお見せするのにぴったりな作品。ぜひ観にいらしてください!

近藤亜香 (Photo:Sally Kaack)

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