魚の名前が付けられた河川の不思議 理由はいっぱい獲れるから?
日本には数え切れないほど多くの河川がありますが、その中には「魚の名前」がついているものが少なからずあります。どういった物があるのか調べてみました。
鮭がいっぱい?鮭川
日本三大急流の一つ最上川。観光川下りで有名ですが、そのスタート地点のほど近くで本流に合流する支流に「鮭川」という川があります。
鮭川はその名の通り、サケが多く上ることから名付けられたと言われています。鮭川の合流地点は海から30kmほど上流ですが、秋になると数多くのサケが産卵のために上ってきます。
鮭川の流れる鮭川村では秋になると「ウライ」と呼ばれる梁や刺し網でサケが漁獲され、秋の味覚として親しまれています。ただ近年は海洋温暖化などの影響でサケの遡上量が激減しており、このままでは鮭川のサケは幻の存在となってしまうかもしれません。
なんで川なのにサメ?鮫川
福島県の南部には「鮫川」という川が流れています。鮫川が注ぐ太平洋にはたくさんのサメがいますが、鮫川は普通の河川なのでサメは生息しません。一体なぜこのような名前なのでしょうか。
鮫川は福島県の山中にある鮫川村に端を発しますが、その源流には遠い昔「鮫池」という池が存在したと言われています。そしてその鮫池には、サメが姿を変えた美しい娘の伝説があり、サメに戻った娘がこの川を下ったために鮫川と呼ばれたのだそうです。
ちなみに北海道の函館にも鮫川という名前の川があります。こちらはアイヌ語で「和人」を表すシャモ、シャムという言葉がなまったものが由来だと言われています。
「塩」の隠語・鰍沢
山梨県には「鰍沢」という地名があります。山梨県下を南流してきた釜無川と笛吹川が合流し、中部屈指の大河川・富士川になってすぐのところにあるこの地では、清流の砂利底に生息する美味な川魚カジカ(鰍)が多く生息していたために鰍沢と呼ばれたと言われています。
余談ですがこの鰍沢、江戸時代には「塩」の隠語としても知られていたそうです。甲府盆地の南端である鰍沢は、富士川の舟運で運ばれてきた物資が陸路に積み替えられる場所であり、海から信州へと運ばれる塩の集積地だったのです。
各地にある!鯎川・鮎川
これらの河川名と比べると比較的数が多いのが「鯎川」そして「鮎川」です。それぞれ「うぐいがわ」「あゆかわ」と読みます。
ウグイもアユも全国の河川の下流から上流まで幅広く生息している身近な魚であり、河川名としても一般的な存在であったのは容易に推測ができます。ちなみに現在でこそウグイは取るに足らない魚と思われていますが、かつては食用にしていた地域も多く、食材として重要な存在であったため「ウグイの獲れる川」というのは大事な存在だったと考えられます。
ひとつ不思議なのは、北海道にも鮎川が存在していることです。現在でこそ、海洋温暖化もあって北海道の河川にもアユが生息するようになっていますが、かつては北海道にはほとんど生息していない魚でした。当然北海道の鮎川でアユが獲れる可能性は低く、名前の由来は謎となっているようです。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>