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「嘘を抱えて辛い…」結婚を考えている相手への悩みに自分を“二の次”にしないアンサーは【お悩み#90】

Sitakke

Sitakke

はーい皆さん、ごきげんよう!満島てる子です。

先日、参議院選挙が行われましたね。

今回の選挙戦は、あたしにとっては穏やかなものではなく。
特定の属性を「第一」とすることで、その他の属性を持つ、えてしてマイノリティの当事者たちを「二の次」に、あるいは用に応じて攻撃(言ってしまえば、差別)の対象にしてしまうような言説も、一部の候補者たちの間に見られたりもして(LGBTQに関する種々の発言も、しばしば取り沙汰されていましたね)。

自分の手の中にある短冊形の紙が、どうかそうした差別を許さない社会の実現につながってくれますようにと。
票を投じる際にあたしは、そう強く願わざるにはいられませんでした。

ライター・満島てる子

……と、いきなり選挙の話からスタートしてはしまったんだけれど。

あたしね、実はちょっと最近、この「第一」「二の次」という話で反省したというか、考えさせられたことがあるの。

それはね、この区分けって少なからず、自分も含めいろんな人たちが気づかずに前提にしてしまいがちなもので。
しかもその前提によって、陰ながら苦しんでいる人がいるんじゃないかなぁって。

こんな反省をしているきっかけになったのは、選挙だけでは実はありません。
こちらのお手紙、ぜひ紹介させてください。

読者のお悩み 結婚を考えている彼女に「バイセクシャル」であることを伝えられず、でもゲイ友だちの前では…

RYOMAさん、こんにちは。
「真剣」なんて言葉じゃ片付けられないような深い悩みを打ち明けてくれて、本当にありがとう。

これまできっと、彼女といるときは間違いなく幸せだったろうし、ゲイ友と交流するときだって、あなたなりに楽しくずっとやってきたんだろうけれど。

どっかこっか"いずい"(北海道方言ですね苦笑)というか、喉に魚の小骨が刺さったようなしんどさを抱いたまま、日々を送ってきたところ、きっとあったんだろうなぁ。

「嘘を抱えていて辛い」という一言が、あたしの胸には小骨千本まとめてぐらいの勢いで突き刺さってきています。

コミュニティの只中でも味わうこともある「二の次」

仲間たちと訪れた、大きいサイズの靴専門店。私たちにシンデレラフィットするステキなヒールたち…!

RYOMAさんもふくめて、当事者から話を聞くたびに「深刻だし、他人事ではないよなぁ」と思うのですが。

バイセクシュアルの人たちは、冒頭で言ったような「第一」「二の次」で言う、二の次のほうに押し込められてしまうという(あるいは、みずから生き残るためにそう振る舞ってしまうような)事態を、LGBTQのコミュニティ外部だけでなく、まさかのその只中でも少なからず経験しているように思います。

悲しいことに世の中の大半の人は、男だと見れば「ああ女が好きなんだ」と、あるいは、女だと見れば「恋愛対象は男性なのね」と、向こうの気持ちを聞くこともあまりなく、相手を異性愛者として勝手に扱いがちです。

なんなら、目の前の相手がLGBTQだと知ったとしても、この「勝手に扱いがち」な傾向は残っているときがあります。

(例えば、店で「男好きなんて勿体無い!」と言われたりすることがあるのですが、その際、ああこのお客さんはあくまで「男は女にモテるのが一番いい」と一方的に考えていたりするんだろうなぁ、とあたしは感じたりします。相手が「男を(も)好きである」という可能性を、勝手に消しているわけです)

そうやって、あたしは自分がゲイであることを「二の次」にされることで、社会の構造には異性愛という強固な軸が通っているのだと、定期的に思い知らされているのですが。

これさ、実はゲイの世界にも似たような軸があったりするのよね。

「ゲイは『男が好きな男』なんだから、格好も性格も男らしくてなんぼ」(この価値観のせいで、女装だとバレると相手が途端に冷たくなるなんて経験、ザラにあります)とか、「ゲイなんだから男好きな自分の諸々を、カジュアルに友だちと飲み屋で話せてなんぼ」とか。
なんなら「ゲイが好きになるのはもっぱらゲイであるべき(異性愛者に恋するなんて悪手だし、ましてや女性に恋する可能性なんて無い)」って価値観を、しっかり持っている人も少なくないコミュニティだったりして(デビュー当初、いろんな人からこれ言われたなぁ)。

そんな「ゲイファースト」な環境では、女性にもときめきを抱くことのあるバイセクシュアル男性の存在は、二の次どころか不可視化されてしまうわけです。

もしかしたら自分もそんな「ゲイ第一主義」的なものに、無意識的に加担してきたところがあるんじゃないかなぁと、RYOMAさんのお手紙から我が身を振り返って、あたしは今回個人的に反省させられました。

RYOMAさん、きっとこれまで、大変だったよね。

彼女といてもゲイ友といても、どこかその身の一部を隠れ蓑で覆わなければならなかっただろうし。
しかも、そうやって自分を隠すことを、暗に強いられていたわけですから。

あなたのこころは今少しでも健やかにいてくれているのかしらと、そうその身をあたしは案じずにはいられません。


あたしなりのAnswer

お花シリーズ「スターチス」花言葉は「変わらぬ心」

さて、RYOMAさん。
あなたの目下のモヤモヤは、さっくり言葉にするなら「彼女とこれから一緒にいるためにどうしたらいいか」、そして「ゲイ友との付き合いはどうしていけばいいか」のはずよね。

ここからはこの2点について、あたしの考えるところを綴らせていただこうと思います。

まず、個人的にはですが。

生涯のパートナーに自分のセクシュアリティを打ち明けるべきかどうかについては、あたしは必ずしも「伝えるのが正解」とは思いません。

この件については、当事者の数だけ正解がある。
実際自分の周りにも、おのれがLGBTQだと伴侶に伝えている人もいれば、一生伝えることはないと決めているという人もいます。

ただ、です。
あたしが思うにRYOMAさんはきっと、自分がバイセクシュアルとして歩んできたこれまでを彼女にきちんと聞いてもらったほうが「生きやすくなる」タイプなんじゃないかしら?

再度の引用になりますが、「隠し続けるのも嘘を抱えていて辛い」というあなたの手紙の文言は、そんなあなたの性向を明らかにしているように思います。

難しいと思う。
決して無理はしなくていいとも思う。

カミングアウトによって大切な人とのつながりを失ったという話は、LGBTQコミュニティの中ではザラです。
だからこそ、「沈黙」という方法によって自分の身を守りつつ、相手と適切な仕方で付き合い続けていくというのも、当事者にとっては立派な選択のひとつになりえます。

でも。
セクシュアリティとはその人のアイデンティティに、なんとなれば、人生の根幹に関わる大事なものです。

それを確かなものとして受け止め、大切な人に明らかにしたいと願うのならば。
RYOMAさん、あなたにはカミングアウトについてどうか積極的に考えてみてほしい。

今はカミングアウトのための準備方法が、当事者団体によって発信されている時代です。
そうした情報をキャッチしながら、自分なりの用意を進めてみてはいかがでしょうか(過去に、その準備について詳しく書かせてもらっているので良かったらみてみてね)。


下支えになってくれるもの、常々思っているの

お店で。パルプ姐さんと!

そしてね。
あたし常々思うんだけれど、カミングアウトの下支えをしてくれるのって(実際にカミングアウトするしないに関わらず)、LGBTQの友だちとのつながり•コミュニティとのつながりだったりすると思うの。

「仲間の輪がある」という安心感は、もし悲しい出来事と遭遇することになったとしても、当事者の気持ちを、こころを救ってくれる。
だからこそあたしはRYOMAさんに、これまで付き合ってきたゲイ友たちと、これからもどうか縁をつないでいってほしいなと、そう願います。

そのために、少しだけRYOMAさんは頑張らなければならないかもしれません。

具体的に言うならば、これまで仲良くしてきたゲイ友たちに、改めて「自分バイセクシュアルなんだ」と自己紹介をしてみる必要だけは、あるんじゃないかなぁと思う。

「え?まじかよ」とひるまれたり、批判的なことを言ってくるゲイ友もいるかもしれません。

その時は、切ないけれどその相手から距離を置きましょう。

でも、決してそういう人ばかりではないはず。
むしろ、打ち明けたことでその後「今の大丈夫?不本意なキャラ演じてなかった?」「やだなって思うことあったら言ってな」と、サポーティブになってくれる友人もきっといると思います。

そういう人を、周囲に置いていきましょう。
仲間へのカミングアウトがきっかけとなって、同じくバイの友人とも出会えるかもしれませんしね。

RYOMAさん。
バイセクシュアルであることを大切な人に打ち明けるにしても、そうでないにしても。
あなたが自分のことを隠さなくていい相手がこの世界にひとりでもいること。
それは生きていくにあたっての大きな糧になるはず。

彼女との付き合い方を考えるためにこそ、コミュニティのメンバーとの関係性は、どうか大切にしてみてほしい。

あたし自身も、コミュニティの仲間のひとりとして。
あなたのこれからの幸せを、心から願っていますよ!

ま・と・め♡

というわけで、今回はLGBTQの中でも様々な異なる悩みがあることを、お手紙と向き合うのを通じて描写させてもらいました。

どこかに光があたれば、そこに影が生まれます。
誰かを「第一」に置くこともそれに似ていて、必ず特定の範囲にいる人々を「二の次」として、暗いところに追いやってしまう。

これは、誰もが一度は無意識的にやってしまうことなのかもしれないけれど。
少なくともそうしない、それに加担しないように意識することは、忘れずにいたいと改めて思いました。

さてさて、次回はどんな内容になるかしら。
Sitakkeね〜!

***

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文:満島てる子
イラスト制作:VES
編集:Sitakke編集部あい
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満島てる子:オープンリーゲイの女装子。北海道大学文学研究科修了後、「7丁目のパウダールーム」の店長に。 2021年7月よりWEBマガジン「Sitakke」にて読者参加型のお悩み相談コラム【てる子のお悩み相談ルーム】を連載中。お悩みは随時募集しています。

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