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【昭和の春うた】柏原芳恵「春なのに」中島みゆきの世界観を完璧に表現した17歳の少女

Re:minder

1983年01月11日 柏原芳恵のシングル「春なのに」発売日

リレー連載【昭和・平成の春うた】VOL.10
春なのに / 柏原芳恵
▶︎作詞:中島みゆき
▶︎作曲:中島みゆき
▶︎編曲:服部克久・J.サレッス
▶発売:1983年1月11日

1983年、柏原芳恵が勝負に出た「春なのに」


今年(2025年)デビュー45周年を迎える柏原芳恵。長きにわたりトップアイドル歌手として活躍し、ヒット曲も多数… なのですが、ほとんどの方がすぐ思い浮かぶヒット曲は2曲に絞られるでしょう。それはもちろん「ハロー・グッバイ」、 そして「春なのに」。

「春なのに」は柏原芳恵がデビュー4年目の1983年1月発売。タイトル通り “春うた” と同時に “卒業ソング” の定番。当時のアイドルの曲は季節を先取りするのが定番だが、この曲がヒットし始めた頃は春どころか真冬。この年の2月には雪が降った記憶も。

1983年初頭の歌謡界を振り返ってみると、柏原を含む “80年組” の松田聖子、河合奈保子が4年目でも絶好調。“花の82年組” の中では先に松本伊代、中森明菜がブレイク。そして、春には小泉今日子、堀ちえみ、石川秀美、早見優が一気にブレイク。柏原にとってもライバルが増え、色々な意味で柏原にとって大事な時期だった1983年。勝負に出たのが、この「春なのに」だった。

作詞・作曲は中島みゆき、ニューミュージック路線にシフトした第2弾


作詞・作曲は当時ヒット曲を連発していた中島みゆき。前作の「花梨」は谷村新司が作詞・作曲を担当。アイドル路線ではなくニューミュージック路線にシフトした第2弾が「春なのに」だった。そして、この曲で柏原は伸びた。化けた。成長した。才能が一気に開花した。

舞台がまだまだ寒い3月というのが想像できるイントロ。そして「♪卒業だけが理由でしょうか」という冒頭の歌い出しにゾクッとする。惹き込まれる。悲しいマイナー調が似合う声質だと気づいてはいたけど。歌いっぷりが圧巻。

女の情念を描いた中島みゆきの歌詞


この曲の主人公の女の子は、とにかく救いようのないほど雑な扱いを受けている。好きな男の子から見たら大勢の顔見知りの中のひとり。でも、彼は卒業式で女の子に囲まれている人気者。ドキドキしながら話そうとしたら「♪君の話はなんだったの」という晴れの舞台の卒業式の日に最悪な仕打ちをされてしまう。しかし女の子は「♪記念にください ボタンをひとつ」ここまではいい。

そして「♪青い空に 捨てます」……さすが中島みゆき。この3分ちょいの世界に様々な揺れ動き変わっていく “女の情念” を描き切っている。私はこの曲で、女性の恐ろしさと男性には理解し難い女性ならではの感情を学んだ気がする。この世界観は中島みゆきの十八番と言えるが、それを18歳が舞台の卒業式で曲にしたのも凄い。そして怖くなるくらい完璧に表現し切った柏原芳恵が凄すぎる。当時彼女は、まだ17歳。

レコードの歌唱も素晴らしいけど歌番組での絶唱がまた最高。一番は切なく愛しげに。二番に入ると感情が一層プラス。「♪青い空に 捨てます」からは圧巻。相手の男の子に “こっちから願い下げよ!” バリの迫力。もはや17歳の少女ではない。

寒さ残る卒業式がリアルに浮かぶアレンジ。中島みゆきならではな切なさも冷酷さも感じる歌詞にドラマチックな曲調。そして柏原芳恵の唯一無二な表現力と歌唱力。全てが見事にマッチしたスタンダードな卒業ソングに、そして永遠の “春うた” になった。

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