淡麗&濃厚の2本柱が売り!北千住で『らーめん桔梗と空』の淡麗醤油らーめんを堪能
北千住駅の西口側、国道4号沿いにある『らーめん桔梗と空 千住寿町店』は、2024年12月に西新井から移転してオープン。淡麗醤油らーめんと濃厚煮干しらーめんの2本柱で、地域の人々の心をつかんでいる。淡麗醤油らーめんのスープには4種の醤油をブレンドし、あっさり感とコクのある旨味を両立。トッピングの自家製餅もユニークだ。
らーめん桔梗と空 千住寿町店(らーめん ききょうとそら せんじゅことぶきちょうてん)
西新井から北千住へ移転した足立区の実力派ラーメン店
足立区の東西を横断する環七通りは、日本有数のラーメン激戦区として知られている。環七付近にある北千住でも、近年ラーメンやつけ麺の専門店が増加中だ。北千住駅周辺は、個性豊かなラーメン店がしのぎを削るエリアになりつつある。
北千住駅西口、駅前から続く通称「きたろーど1010」と呼ばれる商店街を進んでいくと、国道4号に突き当たる。その国道沿いにあるラーメン店が『らーめん桔梗と空 千住寿町店』だ。
店主の伊豆和也(いずかずや)さんは、神田淡路町の『麺巧 潮』をはじめとしたラーメン店で修業を積み2019年に独立。『麺巧 潮』の6番弟子として足立区西新井で『らーめん桔梗と空』を開業し、2024年12月に現在の場所へ移転した。
「私の出身地が足立区の隣の荒川区なんですよ。なので、最初は荒川区で物件を探していたんですけど、なかなかいいところがなくて。西新井の物件は『5年後ぐらいに再開発が進んだら立ち退きになる』というのを了承して借りたんです。一から自分の味で勝負をするっていうチャレンジショップの位置づけだったんですよね」
北千住に移転してからも、西新井時代の常連客は「毎日どなたか来てくれる」という。そして事前におこなった市場調査の甲斐もあって、『らーめん桔梗と空』の味は近隣の人々にも受け入れられているのだ。
店主が食べたいラーメンを追求した淡麗醤油らーめん
主なメニューは、桔梗/淡麗醤油らーめん1100円と、空/濃厚煮干しらーめん1100円の2種類。
開業前、伊豆さんは淡麗醤油1本で勝負する予定だったそう。しかし足立区のラーメン店を調査したところ、こってり系が好まれる傾向があることを知った。そこで開発したのが濃厚煮干しらーめんだ。
淡麗醤油と濃厚煮干しには、それぞれ味玉やチャーシューなどのトッピングを追加したバージョンがある。今回は標準の淡麗醤油に味玉が加わった、初来店の人におすすめの淡麗醤油味玉らーめん1200円をオーダー。厨房にお邪魔して調理工程を見せてもらおう。
「私が好きなのは淡麗醤油ですね。なぜかっていうと、師匠から学んだ醤油や製麺の技術を応用してつくった、私が食べたいラーメンだから。最初は濃厚煮干しのほうが人気でしたけど、いまは半々です」
自家製スープの醤油ダレは、3年熟成の溜まり醤油をはじめ4種類の醤油をブレンドしたもの。そのうちの1つには、ラーメン激戦区・町田市にある醤油蔵『岡直三郎商店』の醤油が使われている。
麺は、伊豆さんが『麺巧 潮』での修業で身につけた製麺技術をもとにした特注品だ。麺の太さや硬さなど、細部までこだわり抜き、納得のいく仕上がりに到達した。
「ラーメンに関しては、開店1、2年目からブラッシュアップしてきて、自分の中で合格点を超えたかな、と。味を変えることも大切なんですけど、いままでの味を守ることも大切なので、変えるのは夏場と冬場ぐらいですかね。夏と冬で削り節の量を変えて、スープの塩味を調節しています」
続いてトッピングは、三元豚と鶏のチャーシュー2種類を筆頭に、香味野菜や水菜、そして追加の味玉も。また四角くカットされた餅が盛り付けられているのは見逃せない。
「淡麗醤油らーめんには、自家製の餅を付けているんですよ」と伊豆さん。「お雑煮のようなイメージですかね。お客さまから『なんでお餅入れてるの?』って言われることもあるんですけど、それは私が餅好きだからです(笑)」
ラーメンができあがったら、さっそく実食へ!
まずスープをすすると、淡麗系らしいスッキリした風味でありつつ、醤油の旨味やコクが織り成す奥深い余韻を堪能できる。細めのストレート麺は、適度にコシがあって歯切れがよく、かむほどに小麦が香り立つ。
甘辛いタレに漬け込んだ三元豚チャーシューは、しっとり柔らかく濃厚な味わいだ。鶏肉そのものの旨味を引き出した鶏チャーシューとの対比を楽しみたい。シャキシャキとした各種野菜、プニプニの餅、黄身がトロトロの味玉が生み出す食感と風味の変化も大きな魅力。
また、味変には卓上に設置された各種調味料を試してみてほしい。伊豆さんのイチオシは、『岡直三郎商店』の万能調味料「しょうゆすこ」。バルサミコ酢に醤油、ハチミツ、ハラペーニョなどを加えたもので、スープに垂らすと酸味や辛味がプラスされる。
質・量ともに満足度の高い淡麗醤油らーめんを味わえば、自ずと濃厚煮干しらーめんも食べたくなる。いずれも伊豆さんが自信を持って提供する珠玉の一杯だ。
店名の「桔梗」と「空」に込められた意味とは?
ラーメン店で修業を始める以前は、アミューズメント業界の企業に勤めていた伊豆さん。2015年に脱サラした後『麺巧 潮』で約3年、豚骨ラーメンの名店で約1年の修業を経て、2019年4月に西新井で開業した。その後、北千住へ移転するまでの5年間を、伊豆さんは「濃縮された5年」と振り返る。
「コロナ禍を生き残れたのは、近隣のたくさんのお客さまに支えられてきたおかげです。だからこそ恩返しじゃないですけれど、本店は西新井で考えているんですよ。いまの『千住寿町店』は2号店兼移転先っていう位置づけなので、本店は欠番になっています」
そんな伊豆さんの恩返し精神は、足立区民にしっかり伝わっている。その証拠に『らーめん桔梗と空』は2023年に実施された「第6回あだちの輝くお店セレクション」にて、好きなラーメンのトップ10に選ばれた。
「お客さまに対して真摯に、誠実に対応することがいちばんですよね。店名にもそういう由来がありまして。『桔梗』には、日本の花言葉で誠実って意味合いがあるので、お店の営業も誠実に、真面目にやっていこうっていう気持ちを込めました」
さらにこの「桔梗」は、漢字を変換すると「帰郷」になる。「サラリーマン時代、いわゆる転勤族だったので。故郷に帰ってきたことも考えて、桔梗と帰郷を引っ掛けました」と伊豆さんは言う。
「全国転勤していた当時、いろいろな土地に住んでいて、各地の地元の人たちにすごいお世話になったんです。『空』には、そういった人たちと離れていても上を見れば同じ空を共有できる、つながっているっていう意味を込めています」
「空」にも、読み方を変換した複数の意味がある。まずは空(くう)=食う。そして空(から)と読ませて「心を空にして、おなかいっぱい食べてもらいたい」という意味も掛かっている。
これらの伊豆さんの思いは、店舗のロゴに反映されているので、ぜひ看板やのれんなどをチェックしてみてほしい。もちろん絶品ラーメンも要チェックだ。
らーめん桔梗と空 千住寿町店(らーめん ききょうとそら せんじゅことぶきちょうてん)
住所:東京都足立区千住寿町2-17 サンモール千住1F/営業時間:11:00~16:00(スープがなくなり次第終了)/定休日:月、第2・4火/アクセス:JR・私鉄・地下鉄・つくばエクスプレス北千住駅から徒歩7分
取材・文・撮影=上原純
上原 純
ライター
東京都出身。編集プロダクション勤務を経て、2018年からフリーランスに。雑誌やWeb媒体で、グルメやビジネスなどの取材記事を中心に幅広く執筆。カレーとスイーツ全般、とくにチョコレートには目がなく、毎月コストコに通ってお菓子を買い溜めする。ブリティッシュロックやハードロック、ヘヴィメタルなどの音楽が原動力。