品川駅の隣の「西大井駅」には何がある?【住みたい街の隣も住みよい街だ】
ビジネス街であり、商業施設も充実している交通の要、品川駅。駅から少し歩けば高層マンションが並び、空港へのアクセスもよく住むのに人気のエリアだ。しかしその隣駅はどんな駅なのだろう? ということで、【住みたい街の隣も住みよい街だ】第4回は品川駅の隣駅、横須賀線・湘南新宿ライン・相鉄直通線が通るJRの「西大井駅」周辺を散策します!
【住みたい街の隣も住みよい街だ】とは
住みたい街ランキング常連の人気の駅。その隣の駅も、実は住みよい街なのではないか——?
いつか住むかもしれないあなたのために、灯台もと暗しの面白さを探して散歩してみました!
ニコンのできたて社屋は新名所になりそう!
初めてJRの西大井駅に降り立った。
東側にひとつだけある改札を出ると、すぐにバスのロータリー。
周りにはマクドナルドや日高屋といったお財布に優しいチェーン店が目に留まり、気張らなくていい街だなと安心する。
特に、広めのマクドナルドは老若男女関係なく、よく利用されているようだ。
前回、同じく品川駅の隣として訪れた北品川駅周辺は思わぬ観光地だったけど、こちらはザ・住宅地といった雰囲気。
ほかに何かあるかなと地図を見ると、「光学通り」というちょっと変わった名称が目に留まった。歩いてみよう。
光学通りを調べてみると、どうやらカメラでおなじみのニコンが関係しているみたいだ。
西大井はニコンが100年以上にわたって拠点を構えているゆかりの地で、旧社名「日本光学工業」から光学通りの名がついたようなのだ。
西大井広場公園の奥にはすぐ、ニコンの大きい社屋がドーン!
人気の『ニコンミュージアム』(入館無料)もこちらに移転し、この2024年10月にオープン。
取材時はミュージアムはまだオープン前だったし、週末だったので人の出入りはなかったけど、今後はこの施設目当てで西大井に訪れる人は多そうだ。
地元の人に聞いた「特に何もない」けど「住むには良い」街
光学通りをいったん駅方面に戻り、線路わきにある通称「たまご公園」と呼ばれる森前公園で地元の方に聞き込みをしてみることに。
たまご公園は滑り台とちょっとした遊具、砂場がある小さい公園なのだけど、ファミリーが遊んだり、お年寄りが休憩したり、入れ替わり立ち替わりよく使われていた。
そこで数人に声をかけてこの辺りのおすすめを聞いてみる。
けっこう粘ったのだがいずれの方も「特に何もないな~」という回答だった。
だが分かったことがある。
これといった推しの場所は出てこないが、「住みやすい」という言葉が共通して出るのだ。
たとえば、以下のような理由だ。
・自転車があれば大井町や戸越銀座、大森などに行けるし、『しながわ水族館』や公園などけっこういろんなところに行けちゃう。子供と遊ぶ場所には困らない。
・駅前に皮膚科や眼科などが入っているメディカルセンターがあり助かる。
・駅前にフラダンスや書道などが学べるカルチャースクールもあるので楽しい。
・スーパーも近くに2つあって便利、焼き芋が安くておいしい。
ほんとだ、調べたら『しながわ水族館』まで自転車で13分ほどで行けるみたいだし、自転車なら東急大井町線、地下鉄浅草線などいろいろな路線の駅へのアクセスもいい。
駅前にはコンパクトに医療関係の施設がそろい、カルチャースクールもあるからファミリーや高齢者も住みやすそう。
電車でもすぐ品川駅に出られるから、会社勤めの人にも便利である。
お豆腐屋さんの手作り豆腐が旨い!
特に何もない、と地元の人の生の声を聞きつつも、散策していたらめちゃくちゃ良いスポットを見つけたのでいくつか紹介したい。
まずはたまご公園から徒歩3分くらいのところにある『手作りとうふの店 喜多村』さん。
手作り豆腐なんてずいぶん食べていないのでぜひ食べたい!
あとで調べたところ1960年開業だそうだ。
私も小さいころ、ボウルや鍋を持ってこういった感じの豆腐屋に買いに行っていたことを思い出した。
昔は豆腐屋さんがラッパを吹きながら自転車で売っていて、それを追っかけたこともあったなあ。
たまご公園のベンチでいただくことに。
これが豆腐屋さんの胡麻豆腐かあ。
一般的に「胡麻豆腐」で連想するのは、精進料理などで出てくる葛粉を使いモッチリとした食感のものだが、こちらは豆腐に胡麻がミックスされている。
醤油か塩をかけようか迷ったけど、そのままのほうが胡麻の香りや風味がしっかり堪能でき、ツウな感じ。
最近は豆腐にしっかり向き合っていなかったのでとてもうれしい体験だった。
必見! 巨大な五智如来と新幹線のある景色
踏切を渡り、今度は西大井駅の西側を散策することに。
そこで見つけたのは如来寺だ。
美しい境内の奥にある如来堂には「大井の大佛(おおぼとけ)」と呼ばれる五智如来坐像が並んでいる。寛永12年(1635)に造立されたもので、最も大きい中尊大日如来で3.21mもある。
社務所に寄ってみるとお寺の方がこの辺りの歴史を教えてくれた。
この辺は昔、沼地になっており、雑木林で山賊も出たらしい。
品川に住んでいた池波正太郎の歴史小説にも描かれたそうだ。
また、西大井駅から4分ほどのところには初代内閣総理大臣の伊藤博文の墓所があり、かつてはその辺り一帯を「伊藤町(ちょう)」と呼んでいたことも教えてくれた。
あとで調べたところ、如来寺のある5丁目と、伊藤博文の墓所のある6丁目の旧町名は「大井伊藤町」とある。
近くの品川区立伊藤小学校も伊藤博文の名前に由来しているようで、影響力がうかがえる。
伊東博文の墓所は普段は中に入れないが11月に数日のみ一般公開されるそう。ちなみに門の隙間からは銅像が見えた。
白蛇に囲まれ開運を願う! 蛇窪神社
他にも蛇窪神社という白蛇だらけの縁起が良さそうなパワースポットもあった。
良縁、財運、病気平癒、立身出世などの御利益があるという。
境内には、社会やお金がよい方向に回るように願いをこめて回す「銭回し」や「銭洗い」、撫でると開運する撫で白蛇などがあった。
白蛇は神様の使いとされているそうで、脱皮をする蛇のイメージから「復活と再生」を表しているそうだ。
日によっては本物の白蛇も見られるようで、参拝者を楽しませてくれる工夫がちりばめられている神社だった。
来年の2025年は巳年なので蛇窪神社に訪れる人が多そうだ。
散歩の締めは西大井駅前に戻り、オシャレなコーヒースタンド『自家焙煎珈琲の99coffee』でひと休み。
後ろが緑道になっており、自然が感じられて心地いい。
冒頭で「ビジネス街であり、商業施設も充実している品川駅」と書いたが、お隣の西大井駅周辺はそういったものとは無縁の、のんびりした住宅地だった。
品川駅のように全国から人は集まってこないし、若者向けの遊び場があるわけでもない。
でもだからこそ住むのには平和で、ちょうど良いのかもしれない。
それに、紹介したように見どころはあるので、ぜひお散歩に訪れてみてほしい。
私も新しい『ニコンミュージアム』や、如来寺から見える新幹線をまた見に行きたいと思う。
取材・文=小堺丸子
小堺丸子
ライター/ビル毛収集家
東京都葛飾区生まれ。上野・浅草あたりが庭。視点をちょっとずらした企画や、ガイドブックには載らないだろう地元の人ならではのプチ情報を取材するのが好きです。人にすぐ声をかけがちで、偶然出会った人が記事によく出てくるのが特徴です。趣味はビル毛集め(https://san-tatsu.jp/articles/294153/)。お散歩ラジオも始めました(https://podcasters.spotify.com/pod/show/osanporadio)。