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介護施設のインフルエンザ対応マニュアル!2024年の流行状況と感染対策、予防のポイントを解説

「みんなの介護」ニュース

長谷川 昌之

介護施設における2024年インフルエンザ流行の特徴と感染リスク

2024年インフルエンザの流行状況と特徴

2024年のインフルエンザは、第44週(10月28日~11月3日)において定点当たり報告数が1.04を記録し、流行開始の目安となる1.00を上回り、本格的な流行シーズンに入ったと考えられます。11月3日の報告時点で確認されている季節性インフルエンザウイルスは、A(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型、B型(ビクトリア系統)の3種類です。

地域別の流行状況を見ると、沖縄県が定点当たり報告数10.64と最も高く、次いで静岡県(2.09)、千葉県(2.00)と続いています。全国的には徐々に感染が拡大傾向にあり、特に都市部での感染拡大が懸念されています。

2023年の同時期(第44週)では定点当たり報告数が21.13であったことと比較すると、現時点での流行規模は小さいですが、今後の感染拡大には注意が必要です。

過去5年間のデータと比較すると、2020年から2022年はコロナ禍の影響で例年に比べて低い水準で推移していましたが、2023年以降は従来の季節性インフルエンザの流行パターンに近い傾向を示しています。

特に注目すべき点として、2024年は年始から継続的な感染者の報告があり、従来とは異なる流行パターンを示している点が挙げられます。

このような状況を踏まえ、介護施設では例年以上の警戒が必要となります。特に、複数のウイルス型が同時に流行している現状では、一度の感染流行で複数の型による感染が起こる可能性も考慮に入れる必要があります。

高齢者施設における感染リスクと重症化の要因

高齢者施設における感染リスクは一般の環境と比べて著しく高く、特に重症化のリスクが大きな課題となっています。2024年の入院患者データによると、70-79歳の入院患者が112名、80歳以上が198名と、高齢者の入院患者数が突出して多くなっています。

さらに、重症化の指標となるICU入室患者のうち、70歳以上が全体の約37%を占めており、高齢者の重症化リスクの高さが明確に示されています。

高齢者施設における感染リスク要因は主に以下の3つに分類されます。

1. 施設特有の環境要因 共有スペースでの集団生活による接触機会の増加 介護時の密接した身体接触 施設内の換気状況や湿度管理の難しさ 2. 入所者の身体的要因 加齢による免疫機能の低下 基礎疾患(心臓病、糖尿病等)の併存 咳エチケットや手洗いなどの予防行動が不足 3. 介護提供体制の要因 職員の交代勤務による接触者の多様化 緊急時の人員配置の困難さ 医療機関との連携体制の複雑さ

施設内での感染拡大は、個々の入所者の健康リスクにとどまらず、施設運営全体に大きな影響を及ぼす可能性があります。職員の感染による人員不足、集団感染による施設の一時閉鎖、さらには地域の医療体制への負荷増大など、複合的な問題に発展する可能性があることを認識してきましょう。

施設内感染対策の基本方針と重要性

医療に関するガイドラインでは施設内感染対策の重要性が示されています。施設内での感染対策は、感染症医療及び通常医療の双方のひっ迫を防ぎ、医療の提供を滞りなく継続するために不可欠な要素として位置付けられています。

特に、準備期から予防計画及び医療計画に基づき、有事に関係機関が連携して感染症医療を提供できる体制を整備することが重要です。この体制は、研修・訓練等を通じて強化していく必要があります。

医療機関における院内感染対策の例として、ゾーニングによる感染エリアの区分け、換気の徹底による環境整備、個人防護具の適切な使用、標準予防策の徹底が挙げられています。 これらの感染対策は、入所者の健康被害を最小限にとどめ、施設運営を継続的に行うための基盤となります。また、健康被害を最小限にとどめることは、社会経済活動への影響を最小限にとどめることにもつながります。

なお、施設での感染対策を効果的に実施するためには、全体の対応能力の向上が必要です。そのため、平時から感染症対応に従事する医療従事者以外の職員も含めた訓練や研修を実施することが推奨されています。

このように、施設内感染対策は単なる予防措置にとどまらず、施設運営の継続性を確保し、地域の医療体制を維持するための重要な役割を担っています。

介護施設でのインフルエンザ予防対策

インフルエンザの基本的な感染対策

高齢者や基礎疾患のある方が感染すると、重症化するリスクが高まることから、予防対策が重要です。 厚生労働省発表の資料によると、インフルエンザをはじめとする感染症の予防には、「手洗い」「マスクの着用を含む咳エチケット」などが有効とされています。

特に医療機関への受信や高齢者施設への訪問をする時、混雑場所に行く際はマスクをするようにしましょう

また、職員の健康管理も重要な予防措置の一つです。特に、出勤前の体温計測等による職員の健康状態の把握を確実に実施することが求められています。

高齢者や基礎疾患のある方が多く入院・生活する医療機関や高齢者施設などでは、基本的な感染対策のさらなる徹底が必要となるのです。

施設内の環境整備における重要ポイント

医療に関するガイドラインには、医療機関における感染対策の実例が示されています。介護施設においても、これらの実例を参考に、施設の特性に応じた環境整備を行うことが重要です。

特に、医療機関で重視されているゾーニングの考え方は、重要な感染対策となります。医療機関では感染症患者とその他の患者を空間的に分離することが基本とされていますが、この考え方を応用し、感染の疑いのある入所者とそうでない入所者の生活空間を適切に区分けすることが有効です。

ほかにも、臨時の医療施設の環境整備要件を参考に、以下の点がポイントだと考えられます。

必要な医療品や介護用品の十分な確保 感染疑い者の一時的な隔離スペースの確保 共用の衛生設備(トイレ、浴室等)の使用ルール設定 食事提供時の感染対策 適切な室温管理と換気の実施 施設内の動線の整理

特に換気については、医療機関での院内感染対策でも重視されている要素です。介護施設においても、共用スペースを含めた施設全体での換気の徹底が、感染対策の基本として重要となります。

これらの医療機関での取り組みを参考に、各介護施設の構造や入所者の特性に応じた環境整備を行うことで、より効果的な感染対策が可能となります。

予防接種の推進と実施体制の整備方法

厚生労働省の発表によると、インフルエンザワクチンの予防接種には、発症をある程度抑える効果や重症化を予防する効果があるとされています。 65歳以上の方、60~64歳で、心臓、腎臓若しくは呼吸器の機能に障害があり、身の回りの生活が極度に制限される方などは定期の予防接種の対象者になっています。

また、インフルエンザワクチンと新型コロナワクチンは同日に接種することが可能であることが示されており、新型コロナワクチンの接種と合わせた接種の検討が推奨されています。

インフルエンザ等の感染症に関する相談については、感染症・予防接種相談窓口が開設されています。この窓口は平日の9:00から17:00まで(祝祭日、年末年始を除く)利用可能で、予防接種に関する相談にも対応しています。

インフルエンザ発生時の介護施設における対応体制

感染者発生時の初動対応と実施手順

政府の医療に関するガイドラインによると、感染症発生時には都道府県が医療提供の司令塔となり、関係機関との連携のもと対応を行うことが示されています。施設内で感染者が発生した際は、この体制に基づいて迅速かつ的確な初動対応を取ることが求められます。

まず、施設内で感染が疑われる入所者が確認された場合、第一に、該当する入所者の隔離を行い、他の入所者との接触を最小限に抑えます。同時に、対応する職員を限定します。体調不良者の症状、体温、発症日時、行動歴などの情報を可能な限り収集し、記録することも重要です。

次に、状況に応じて相談センターへの連絡を検討します。相談センターは症例定義に該当する有症状者等を対象としており、該当する方はまず電話による問い合わせを行うことが求められています。相談時には収集した情報を正確に伝え、その後の対応について指示を仰ぎます。なお、相談センターは全ての発熱・呼吸器症状等を有する者から相談を受けるものではないことに留意しましょう。

相談センターでは、電話での相談内容に応じて、必要な場合は速やかに感染症指定医療機関への受診調整を行います。一方で、新型インフルエンザ等に感染している疑いがない場合は、適切な情報提供を行い、必要に応じて一般の医療機関の受診を指導することとされています。

同時に施設内での感染対策を行いましょう。職員の健康観察も強化し、体調不良者が出た場合の代替え体制を確保します。他の入所者の健康状態の観察も徹底し、新たな症状の出現がないか注意深く見守ります。

共用部分の消毒を強化し、必要に応じて一時的に共用スペースの使用を制限することも検討する必要があるでしょう。 また、関係者への連絡も重要な初動対応の一つです。施設管理者、嘱託医、協力医療機関など施設内外の関係者に状況を報告し、今後の対応について協議します。特に、家族への連絡は丁寧に行い、施設での対応状況や今後の方針について説明します。

これらの初動対応を円滑に実施するためには、事前に対応手順を文書化し、職員間で共有しておくことが重要です。また、定期的な研修や訓練を通じて、実際の場面で適切に対応できる体制を整えておく必要があります。

感染者発生時は多少の混乱が予想されますが、冷静に手順に従って対応することで、感染拡大を防ぎ、適切な医療につなげることができます。

医療機関・保健所との連携における重要ポイント

医療機関や保健所、消防機関等との連携で基本となるのが、感染症指定医療機関との協力体制です。都道府県は感染症指定医療機関における感染症患者の受入体制を確保し、保健所、医療機関、消防機関等と連携して入院調整に係る体制構築を進めることとされています。

施設としては、このような体制を理解し、スムーズな連携が図れるよう準備しておくことが重要です。

まず協力医療機関との日常的な関係構築が基本となります。施設の状況や入所者の基礎疾患などの情報を事前に共有し、緊急時の対応について協議しておくようにしましょう。特に、夜間や休日の連絡体制、受診の判断基準、搬送方法などについて、具体的な取り決めを行っておくことが有効です。

保健所との連携体制では、施設内で感染者や疑い例が発生した場合の報告手順や集団感染が疑われる際の対応方針、感染対策に関する指導・助言体制などについて事前に確認し、体制を整えておくことが重要です。

入院が必要となった場合の調整においては、都道府県が構築する入院調整の体制を活用します。この体制には、医療機関、保健所、専門職能団体、消防機関、民間搬送事業者等が関わることが想定されています。施設としては、この調整の流れを理解し、必要な情報を速やかに提供できる体制を整えておくことが求められます。 特に高齢者施設では、入所者の重症化リスクが高いことを考慮し、早期の受診判断と医療機関との連携が重要です。

基礎疾患のある方や症状が重い方については、協力医療機関と相談の上、より迅速な対応を検討するようにしましょう。

このような連携体制を効果的に機能させるためには、施設側でも連携窓口を明確にし、必要な情報を整理しておくようにしましょう。入所者の基本情報、医療・介護に関する情報、家族の連絡先など、緊急時に必要となる情報をすぐに提供できるよう準備しておくことで、スムーズな連携が可能となります。

まとめ

2024年のインフルエンザ流行を受け、介護施設における感染対策の重要性が改めて考えなくてはなりません。本稿で解説した予防対策の実施、環境整備の徹底、そして医療機関等との連携体制の構築は、いずれも入所者の命と健康を守るために欠かせない要素です。

特に重要なのは、これらの対策を「準備期」のうちに整えておくことです。いざという時に慌てることなく適切な対応がとれるよう、今回ご紹介した内容を参考に、各施設の実情に合わせた対策を講じていただければ幸いです。

入所者の皆様が安心して生活できる環境づくりのために、施設全体での取り組みを進めていきましょう。

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