<全日本大学野球選手権> 早大、日本一への〝陰のキーマン〟 渋谷遊撃手(静岡高出)が初戦2安打3打点1盗塁 打撃好調も「守備で貢献したい」
全日本大学野球選手権第2日は10日、東京ドームなどで2回戦5試合を行い、東京六大学の覇者・早大が8強入りを決めた。抜群の機動力で揺さぶる東亜大(中国)に初回に先制を許したものの、最終的には先発全員の13安打12得点、6回コールドで圧倒した。
1試合二塁打6本は大会最多タイ記録。主将の小澤周平選手が2ランを放ち、エース伊藤樹投手が5回を4安打2失点にまとめるなど役者がそろった初戦で、〝陰のキーマン〟として存在感を示したのが2番遊撃手で先発出場した渋谷泰生内野手(静岡高出)だ。
打線のつなぎ役
4打数2安打3打点1盗塁1四球。打線のつなぎ役として、見せ場をつくった。
1点を追う一回、先頭の尾瀬雄大選手が左翼越えの打球で三塁を狙って憤死。嫌なムードが漂う中、続く渋谷選手は「点を取られた後の回なので何とか出たかった」と落ち着いて四球を選んで出塁。2敵失に乗じて同点の本塁を踏んだ。「(尾瀬選手が)いい当たりを打ってチャンスかなと思ったらアウトになったので、向こうに流れが行きそうなところを出塁できて良かったです」と振り返る。
チャンスでしぶとく1本
四回の打席は2死二塁、追加点の好機。「スライダー、カットボールなど変化球が多かったのでそれを狙いつつ、いろんな球に対応できるように、強引にいかずにセンター方向にという気持ちでした」ときっちり中前に運んで4点目を挙げた。この1点で打線が勢いづき、打者一巡の猛攻で一挙6点のビッグイニングをつくった。
コールド勝利を決める一打を放ったのも渋谷選手だ。六回2死満塁であと2点入ればコールド勝ちの局面で、2球目をしぶとく左前に運んだ。「最後は打ち気になって打たされたんですけど、何とかバットの先っぽに当たってくれました」
故障で離脱、早慶戦で復帰
日本ハム入りした山縣秀内野手の後を継いで、今春から正遊撃手の座をつかんだ。春季リーグ戦は第1週の東大戦、第2週の法大戦で打率4割と順調に滑り出したものの、練習中に左足首を捻挫して離脱。
立大、明大との2カードはベンチを外れた。治療、リハビリを経て、最終週の早慶戦で復帰を果たし、離脱前と変わらぬ働きを見せている。
「腕でなく体幹で打つイメージ」
打撃好調の理由については、プロ野球・西武などで活躍した金森栄治助監督の助言を受け、継続して取り組んできたことが実りつつあるという。
「今までは後ろを大きく取って、反動を付けて(腕で)打っていたところを、少し後ろを小さくして腰で打つ、体幹で打つイメージ。それが形になってきたのがこの冬ですね。最初は違和感があったけれど、我慢しながら、実戦の中で試行錯誤し続けることで自分の形になってきました」と語る。
〝足〟でも欠かせない戦力に
また、今年の早大はチームとして走塁を強化してきた。30メートル4秒を切る俊足の渋谷選手が欠かせない理由がここにもある。
「代が替わってからベースランニング、盗塁、打球判断など走塁練習を重点的にやってきて、常に次の塁を狙う姿勢は持つようにしています。小澤が健大高崎という走塁のチームの出身なので、小澤から教わった技術をみんなで共有しながら試合で生かせるように練習してきました。例えば、ベースランニングなら今までは二塁から三塁を蹴ってホームに行く場面はずっと全力で走っていたけれど、ちょっと緩めて、ベースを踏んだタイミングでもう一回加速するとか、そういうところは自分が知らなかった技術です」と明かす。
「守備でチームを支えたい」
攻撃面での活躍が目立つが、遊撃の守備もそつなくこなしている。「バッティングより守備面でチームを支えられるようにしたい」と渋谷選手。「やるべきことをきっちりやる」というのが小宮山悟監督の教え。10年ぶりの日本一へ、派手な役回りは仲間に任せて〝陰のキーマン〟として勝利に貢献する。
(編集局ニュースセンター・結城啓子)