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JR東海道本線「村岡新駅」計画と「周辺地区まちづくり方針」とは?

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旧国鉄湘南貨物駅周辺で土地の整備計画が進行中

村岡新駅の建設予定地。JR東海道本線「藤沢駅」から約2.0km、「大船駅」からは約2.6kmに位置している(出典:藤沢市都市整備課資料)

JR東海道本線の「村岡新駅」とその周辺地区の整備計画が現在進行中だ。場所は、藤沢市村岡地区の国鉄湘南貨物駅の跡地約7.3ヘクタールと柏尾川を挟んで鎌倉市深沢地区のJR鎌倉総合車両センター跡地約31.1ヘクタールだ。「村岡新駅」は、JR東海道本線「藤沢駅」から約2.0km、「大船駅」からは約2.6kmに位置している。新駅の開業は2032年頃になる予定だ。

藤沢市村岡地区の国鉄湘南貨物駅は、1985年に廃止された。その後、跡地は商業施設やフットサル場などに利用されてきた。そのような場所で、なぜ今、新駅の計画が進行中なのか。期待される未来像や問題点などを解説しよう。

新駅開発の経緯

藤沢市の「6つの都市拠点」。東西と南北方向に交通軸を形成し、土地利用を進めてきた(出典:「藤沢市市政運営の総合指針2024」)

村岡地区は、1941年に藤沢市に合併されるまで村岡村として鎌倉郡の一部だった。歴史的にも鎌倉と深い関係がある。1956年には、藤沢総合都市計画によって工場を誘致しており、1961年に神戸製鋼藤沢工場、その2年後に武田薬品工業湘南工場が開業した。そして1985年に国鉄湘南貨物駅が廃止され、1986年に増加した地域住民の人口や工業地就業者の利便性向上のため、村岡地区自治町内会連合会は市議会に対して新駅設置の請願を提出し、全会一致で採択された。

その後、紆余曲折があったものの、現在も村岡新駅周辺地区は、藤沢市都市マスタープランによって「6つの都市拠点」の1つとなっており、鎌倉深沢地区と連携して、先進的な研究開発拠点の形成などを目指す、と位置付けられている。「6つの都市拠点」とは、藤沢駅周辺、辻堂駅周辺、湘南台駅周辺、健康と文化の森、片瀬・江の島、村岡新駅周辺のことだ。藤沢市では、これらの地域を鉄道と道路によって連結し、「海」「河川」「谷戸(谷状の地形)」「斜面緑地」「農地」などの自然環境を活用しながら土地利用を進めてきた。

そして2021年2月、JR東日本、神奈川県、藤沢市、鎌倉市の4者が事業費などに関する覚書を取り交わし、新駅の設置が正式に決まった。費用負担の割合は、神奈川県30%、藤沢市・鎌倉市27.5%、JR東日本15%だ。

藤沢市では、「村岡新駅周辺地区まちづくり方針」を公表し、次のような将来地区像を描いている。

「村岡新駅を中心に、知的人材の集積を活かし世界に誇る「尖る創造」と地域や市民と共に創り出す「広がる創造」が相互に作用することで好循環を生み出す、新たな研究開発拠点を形成する」

要するに、優れた研究者やクリエイティブ人材などが住みやすく、働きやすい研究開発拠点をつくり出す、ということだ。その背景には、新駅予定地付近にすでに武田薬品、神戸製鋼の研究施設、湘南鎌倉総合病院といった先端分野の開発拠点が集積していることがある。また藤沢市は、さがみロボット産業特区の対象地域でもある。

藤沢市が掲げる将来地区像を実現するための4つのテーマ

雨水浸透施設のイメージ(出典:「村岡新駅周辺地区まちづくり方針」)

そのうえで藤沢市では、将来地区像を実現するための4つのテーマを掲げている。

①創造的な場づくり


創造的な場とは、「知的好奇心を触発し、思考が深まる環境」としている。たとえば、「街に対して開かれたオープンスペースやカフェ」「市民が先進的研究を学べるラボや多様な講座の開催」などだ。

②新しい交通結節点づくり


新しい交通結節点づくりとは、「人が主役となり、交通機能だけでなく活動や創造をつなぐ環境」としている。たとえば、「駅前広場が曜日や時間帯、季節、災害などの緊急時等に応じて柔軟に利用できる」「自家用車に依拠しない、ITを活用した公共交通環境」などだ。

③緑や文化豊かなまちづくり


緑や文化豊かなまちづくりとは、「緑資源や地域文化を通じ、創造性や地域性が深まる環境」としている。たとえば、「御霊神社や兜松等の文化・歴史資料などと連携した緑の保全」「SDGsや脱酸素社会の推進を背景とした省エネ・創エネ技術の積極的活用」などだ。

④安心・安全なまちづくり


安心・安全なまちづくりとは、「誰もが安心して創造活動が出来る地域の暮らしが守られる環境」としている。たとえば、「公共施設・民間施設における雨水貯留浸透施設の整備」「災害に容易に移動や転用できる移動手段の推進」などだ。

具体的な計画はこれから

村岡地区と深沢地区をつなぐ「シンボル道路」の建設は確定している(出典:鎌倉市「村岡・深沢まちづくり」)

一方で鎌倉市は、深沢地区に市役所本庁や消防本部、消防署を移転させるほか、スポーツ施設などを建設する計画だ。

このような地区開発によって、藤沢市は年間540億円の経済波及効果を試算している。また、鎌倉市は、深沢の街開きの10年後以降は毎年最低でも約16億円の税収増を見込んでいる。

だが、「いつ」「どこに」「なにを」といった計画は、今のところほとんど具体的になっていない。藤沢市に問い合わせたところ、村岡地区と深沢地区をつなぐ「シンボル道路」の工事は正式に決定したそうだ。

村岡新駅の完成イメージ図(南側)(出典:神奈川県HP)

このように夢が膨らむ村岡新駅周辺の開発計画だが、不安視する声も少なくない。そもそも藤沢市では「広大な土地を開発し、大きな経済効果が見込まれる鎌倉市と同額の資金を拠出するのは不公平」、鎌倉市では「藤沢市内の新駅計画に、なぜ鎌倉市の資金を拠出するのか」といった意見が根強い。また、開発予算の見積もり自体が甘いという声もある。実際に2023年12月5日にJR東日本が公表した駅の整備事業費は、2020年度発表の150億円から9億円増の159億円になった。物価高騰が原因だという。これによって両市とも約3億円の負担増になる。

村岡新駅は、2024年度中に着工予定だ。だが、開発計画自体が、まだまだあいまいな部分が多い。見切り発車とならないよう、これからも注視していきたい。

【関連リンク】
・【広報ふじさわ】2025年1月25日号 村岡新駅の誕生に合わせ新しいまちづくりを進めています
・【健美家】藤沢駅と大船駅の間にJR東海道線で100年ぶりとなる新駅。村岡新駅(仮称)の工事が本格的にスタート。2032年頃の開業か

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