the GazettE 「22年間止まらずにやってきたこのバンドを、なおさら守る理由ができました」REITAさん追悼ライブで示したバンドの決意
HERESY LIMITED 「SIX GUN’S」
2024.05.27 豊洲PIT
「どんなライブをしたって、区切りなんかつかないから。俺らは、あいつが望んだthe GazettEを、これからもやっていくことに決めたんだから、今日はお別れ会でもなんでもないんだよ。だからもう、あえて区切りなんて言葉を使わずに、このまま、走っていくことを選びました」
ライブ終盤、一つひとつの言葉を噛み締めるようにそう告げたRUKI(Vo)に、満場の拍手が湧いた。バンド史上最大の、恐らくはメンバー一人ひとりの人生にとっても最大級の悲しみの真っただ中にあるこんな時でさえ、いや、こんな時だからこそ、彼らはファンであり6人目のメンバーであるSIX GUN'Sにとことんまで寄り添ってみせた。the GazettEを愛するすべての人々の感情を受け止め、懐に抱えたままで走っていく――。追悼公演の場でREITA(Ba)へのあふれんばかりの愛と感謝を表すと同時に、そんな覚悟を表明してみせた彼らは、やはり、どこまでもthe GazettEだった。
2024年4月16日、the GazettEのベーシスト・REITAが前日の4月15日に永眠したという信じられない、信じたくもないニュースがバンドから届けられた。翌17日にはメンバーがコメントを発表して赤裸々な想いを明かし、約1週間後の25日には葬儀が執り行われたことと、今回の追悼公演をREITAの誕生日である5月27日にファンクラブ限定で開催することを発表。葬儀などすべてが終了した後に逝去自体が発表される事例も多い中で、あまりにも迅速な一連の流れは、誰一人ファンを置いていかないというthe GazettEとして変わることのない誠実さが源にあったのだろう。どんなに辛くても、すべての感情をリアルタイムで共有し、分かち合おうという彼らの姿勢は、癒すことのできない悲しみの中でもファンにとって一つの救いになったに違いない。
REITAが何よりも愛した音楽とLIVEで送り出してあげたい、そして彼が遺した「the GazettEは永遠であってほしいと願う」という言葉に応えたい――そんなメンバーの願いは、the GazettEが何度もステージに立ち、また都内最大級のキャパシティを誇るライブハウス、豊洲PITをわずか1ヶ月前に押さえるという奇跡を生み出した。とはいえ、REITAを愛する人々のすべてを受け入れるだけのキャパシティには足りず、チケットを入手できなかったファンが当日会場前に詰めかけていたのも当然のことだろう。そこにはREITAを含めた5人全員分のプレゼントボックスがいつものように並べられ、フロアに入場してステージに目を向けると、定位置にはREITAのマイクスタンドとピックにベースキャビネットが。いつものthe GazettEライブとまったく何も変わらないシチュエーションで、普段と同じ開演前アナウンスが流れるものの、客席の扉が閉まらないほどすし詰めのフロアの息を詰めたような空気感は、やはりいつもとは違っていた。
そして迎えた開演時刻。満場のクラップに迎えられたSEが一瞬途切れると、青、白、赤のレーザー光が客席フロアを舐め、黒地に白でバンドロゴが染め抜かれた巨大なバックドロップが荘厳な音と共にゆっくりとせり上がる。続いて戒(Dr)、麗(Gt)、葵(Gt)、RUKIの順でメンバーがステージにあがれば、オーディエンスからはREITAの名を呼ぶ声があふれ出し、麗の繊細なギターフレーズで幕開けたのは「LAST SONG」。懸命にクラップを鳴らすフロアに「Thank you for live!」とRUKIが叫んだように聞こえたのは、筆者の気のせいではないだろう。最新アルバム『MASS』を締めくくり、ツアーでも最後に演奏することを想定して仮タイトルから「LAST」と名付けられた本作だが、リリース前、その曲名から不安を覚えるファンもいるようだと取材の際に伝えると「そんな深読みはいらない」と笑っていたREITA。この曲が真に訴えるのは“最後”ではなく、むしろ“続く”という意味合いの“LAST”だ。コロナ禍の中で再会の日を、再び声を枯らして歌い合うこと待ち望み、どこまでも焼きつく未来を見出そうという楽曲に込められた想いは、今も1ミリたりとも変わっていないと、REITAのベース音源に寄り添うように魂を込めて弾き、叩き、歌うバンドの音から痛いほどに伝わってくる。
「今日は、来てくれて本当にありがとう。自分たちを愛してくれてるみんなに、精一杯の……精一杯の感謝を伝えたいと思います。最後までどうかついてきてください」
曲中、クライマックスでそう呼びかけたRUKIの声には、これまで聞いたことがないほどの切迫感があり、会場中の心をグッと一つに。さらに、透き通るような高音ボーカルから咆哮へと急転直下し、葵のギターが凶悪に唸る「UNDYING」では哀しみと憤りをつづれ織りにして《永遠を描く空》へと虚しく手を伸ばす。不死を表す名の通り苦しみは終わることなく、だからこそバンドの足を止めることもできない。そんな厳粛な決意すら感じさせる、咽喉が裂けんばかりのRUKIの慟哭には迸るような拍手と怒号にも似た歓声が延々と続き、抑えきれない感情が渦まくフロアに向かって彼は静かに口を開いた。
「改めて、今日ここに足を運んでくれて、みんなありがとうございます。いつものthe GazettEのライブの在り方っていうのは、日常でやり場のない気持ちだったり、苦しくて、苦しくてどうしようもない気持ちを吐き捨てて帰ってもらえる場所が、俺らのライブなんです。だから今日、お前らは泣いても、思いっきり暴れてもいいんです。それがね、ライブだから。いろんな感情のすべてをメンバー全員で受け止めて、背負って、全力で引っ張っていく。そういう覚悟で歌います。聴いてください」
そうして「TOMORROW NEVER DIES」がコールされるや、涙を振り切って“オイオイオイオイ!”と怒涛のように声を張り上げ、コブシを振り上げるオーディエンスの熱量を前に、ブレイクの後RUKIは天を仰いで「よぉ、聴こえてるかい!」と絶叫。その言葉が誰に向けられたものであるのか、今日ばかりは言うまでもないだろう。失った人への後悔をツインギターを軸に爽快かつメロディックに歌い切る「REGRET」で拍手を呼び、「ガンジスに紅い薔薇」のイントロが流れるとフロアにどよめきが。REITAのうねるランニングベースが場内をかき回して、間奏に入ると同時に彼の定位置にピンスポットが当たれば、聴き慣れたベースソロがしっかりと耳に届く。それを受けてギターソロを鳴らす麗は音に乗って体を揺らし、続く戒のドラムも爽快に空を切って大切な《Birth day》を鮮やかに飾り幕切れ。その姿は見えなくとも、REITAのプレイは確かにライブを構成する一要素になっているのだ。
REITAに喜んでもらうべく、彼の見せ場のある曲、そして彼自身が好んでいた曲もセットリストに。その筆頭とも言える「痴情」は、クリーンな音で不穏な旋律をたどる弦と低音ボーカルが底知れぬ世界観を感じさせる、ある種濃厚なラブソングで、彼の深い感受性をも窺わせてくれる。その後に続いたバラードは、REITAが大切に演奏していた曲であるのみならず、今、ステージに立つ4人の心情をそのまま表しているかのようでもあった。「その声は脆く」で《悲しみはいつ消える?》と歌うRUKIは大きくのけぞって感情をむき出しにし、ミラーボールの光を受けた麗のギターソロはその音に激情をにじませながら、それでも月日が過ぎて《思い出す頃 強く笑えていますように》と切なる願いを届ける。拍手を浴びるステージ上には青い光が美しく広がり、いつもベースを抱きしめていたREITAの姿を瞼の裏に浮かばせた。喪失を真正面から描く「白き優鬱」では、場内に響くREITAのベースラインを探すようにRUKIが手を伸ばしてステージ上を彷徨い《悪い夢なのと笑って》と発すれば、葵のギターソロが悲痛な想いに啼く。《初めて意識した「失い」》と低音で歌い終えたところで、さらにツインのアコギで奏でられたのは「MOMENT」。戒の重量感あるドラミングや《永遠を願って歌う程》と始まるリリックとも相まってドラマティックな空気を醸し、《飾る事の無い》日々を、瞬間を重ねることが《生きるための強さ》につながると教えてくれる。
こうして差し込んだ一筋の希望は「SHIVER」へとキャッチーに弾け、ようやく純粋な音の力でオーディエンスを揺らすことに。ギターソロからのベースソロではREITAの重心を下げたガッツあるプレイスタイルが目に浮かび、RUKIは彼のマイクスタンドに手をかけて、まるで寄り添うように歌ってみせた。また「やろうぜ!」と号令をかけた「Hyena」では、イントロで毎回放たれていたREITAのシャウトもしっかり轟いて、フロント陣はステージ上を右へ左へと駆け回る。拳をあげるフロアに《共鳴はHyena》の大合唱を巻き起こし、「頭ブン回せよ!」と「VORTEX」になだれ込めば、ようやく見慣れたヘッドバンギングの海が出現。SIX GUN'Sの名の通り、メンバーもろともその場にいる全員で声をあげ、手を叩き、容赦なく頭をブン回す光景を前に湧き上がってくるのは「やっぱりthe GazettEのライブって楽しい」という想いだ。ヘヴィネスが高速で爆発する「黒く澄んだ空と残骸と片翅」では、《青く濁る空に自由など無い》と吐き捨てるRUKIのデスボイスと禍々しいドラム&ギターがバチバチのレーザーとバトルして、めくるめく情景にオーディエンスも思う存分躍動。そして。
「どの曲も大切な曲なんだけど、これもまた一つ大切な曲なんで聴いてください。『未成年』!」(RUKI)
思春期の危うい心模様をストレートに描き、その純白の瑞々しさで20年にわたり愛され続けてきたナンバーがコールされると、ステージの照明が一気に明るくなり、オーディエンスは空へと手を伸ばす。だが、それだけがココで披露されるに至った理由ではない。この曲の最大の見せ場は、間奏でセンターのお立ち台に立ち、麗のソロと入れ替わるようにして放たれるREITAのベースソロ。ギターソロが終わってRUKIが「On BASS!」と叫ぶと、客席からREITAの名を呼ぶ声が怒涛のように湧き上がり、お立ち台には真っ白なスポットライトがまばゆいばかりに当てられて、REITAのベースソロが響きわたった。泣き叫ぶような大歓声のなかRUKIから飛び出した「聴かせてやれ!」の声は、おそらくREITAとオーディエンスの双方に向けられたものだったろう。10代の切実な願いを繰り返す英詞を、RUKIが空を見上げて指を突き立てながら歌えば、それに寄り添う葵のコーラスもエモーショナルに潤んで、聴くだけで胸が締めつけられる。空には無い自由を落下点に求めた主人公が、最後に告げる《生まれ変わったらまた逢おう》というフレーズを歌いあげるRUKIの声は究極まで真に迫り、全員でREITAの方を向いて演奏を締めくくると、場内には“REITA!”と呼ぶ声の嵐と万雷の拍手が。どれだけ彼が人々に愛されているのかを、その光景が饒舌に物語っていた。
ここで4人がステージに並んでのMCが。このMCパートだけはファンクラブで配信されていたが、これも会場に来ることが、もしくは入ることができないファンの要望に応えてのこと。あくまでも生にこだわり、コロナ禍にあっても一度も配信ライブを行わなかった彼らにとって、それが苦渋の決断だっただろうことは想像に難くないが、メンバーの言葉を待つファンに直接気持ちを届けたいという、おそらくは彼ら自身の意志による措置だったに違いない。まずは、配信で観ているファンも含めて「この時間を共有できることに感謝」とおなじみの文言を口にしたRUKIが、今日の追悼公演に対する想いと、バンドで決めた“これから”について、一つひとつの言葉を選ぶようにゆっくりと語り始めた。
「この公演はあいつの誕生日でもあって、今日、改めて生まれてきてくれたことを感謝する気持ちと、そんなREITAを追悼する場として設けさせてもらいました。今日をライブにした理由は、REITA本人が“ライブをやってる時が一番楽しい”って言い切っていたし、“ライブがないと寂しいわ”とか、そんなことばっかり言ってたんです。だから、ライブこそがメンバーとしてできる、あいつに贈る最高の愛情表現だと思って、ライブという形を選びました。
まずメンバーを代表して、全員の総意として決めたことを言わせてください。これから先も、このthe GazettEにREITA以外の新しいベースとしてのメンバーは入れません。理由は……うん、絶対あいつが一番寂しがることだからさ。だから、今までライブでやったテイクのあるものは、そのまま一生REITAの音を使うことをやめないし、新しい作品だって、これからもREITAのベースや機材をずっと使い続けて、最大にあいつの意志を尊重していきたいと思ってます。あとね、事実としてREITAはthe GazettEから脱退してないんで。あいつがいろんなものにハンコ押すまで、5人のままなんです。だから、これからも誰が何と言おうが、俺らは5人のままです。
だって“the GazettEは永遠であってほしい”って、あいつから言われたことだからさ。それなら、全力で守るしかないでしょって思ってます。何より、自分たちとこうやって同じ想いを感じているみんなのことを思うと、ただ、ひたすら“守らなきゃ”って。この気持ちが強くなったから。メンバー全員で、これからも止まらずに、全部乗り越えてやっていこうって決めました。これが、メンバー全員の総意です。22年間止まらずにやってきたこのバンドを、なおさら守る理由ができました」
REITAへの愛に満ち満ちた、そしてファンの心情に寄り添った彼らの決断に何度も嗚咽交じりの拍手を贈る客席とカメラの向こうに向かい、さらにRUKIは「これは自分の考えなんだけど……」と前置いて、SIXGUN'Sへの願いを続けた。
「追悼するっていうことの本当の意味は、愛したこととか大切に思う、この気持ちを一生かけて忘れずに生きていくことなんだって、思ってます。そしていつかは人間誰しも、迎えてしまう“最期”があったとしても、魂ってものは決して消えることはないって信じてるし、実際、今“心の中で生きてるってこういうことか”って実感してます。<中略>
今日(ライブに)来れなきゃ区切りがつかないとか、いろんな気持ちもあったと思います。悲しい、辛い気持ちは、きっと誰よりメンバー全員が味わってきたからいろんな気持ちの理解もできます。でも、正直ね……どんなライブをしたって、区切りなんかつかないから。さっきも言った通り、俺らは、あいつが望んだthe GazettEを、これからもやっていくことに決めたんだから、今日はお別れ会でもなんでもないんだよ。だからもう、あえて区切りなんて言葉を使わずに、このまま走っていくことを選びました。心の整理ができてないから今はまだ観れないとか、いろんな人がいて、そんなの当然だよなって思ってます。そこに強いとか弱いもないし、たった今生きている自分の心を、何よりも一番大切にしてほしいです。
でも、今日って日はあれから真剣に約1か月、ただ、ひたすらREITAを想って、できる限り誰も置いていかないように、みんなで最善を尽くした結果なんだってことと。まだまだ俺たちはみんなのそばにいたいし、そばにいてほしいです。……という気持ちを、この場を借りて、どうか伝えられたらって思ってます。<中略>メンバーだけじゃなく、今スタッフで残ってくれている人は、こういう苦しい状況から逃げないでいてくれました。守ってくれた人には本当に感謝しかないです。それは同じくファンのみんなにも、伝えたいです。本当に、本当に俺たちを見守ってくれて、心から感謝します。ありがとう。みんなにとって、また来たくなったらいつでも来れるような場所を、たくさんライブをしていくことで守っていくんで。だから、また会いに来てくれたら、その時は最高の景色をバンドと一緒に共有してくださいと伝えたいです。
長くなったけど、もう一つだけ。これから願うのは……あいつを好きだった記憶の全部をさ、悲しい思い出に変えないで、一生忘れずに愛していてあげてほしいです。それが一番あいつが喜ぶことだって、俺らは思ってます。何度も言うけど、REITAは永遠に俺たちとココにいます。あいつが愛したものは全部ココにあるから、そのことをみんな忘れないでください。これが、the GazettEです」
実に20分近くにわたり続いた告白には微塵の嘘も虚飾もなく、不器用なまでにまっすぐと想いを伝えてくる姿に、まさしく“これがthe GazettE”だったなと痛感させられる。その印象は他のメンバーが順に語り、REITAとファンへの言葉を重ねても、一切変わることはなかった。
「4月17日に、できるだけ早く自分たちの気持ちをみんなに伝えたくて、メンバー同士たくさん話し合ってコメントを出したんですけど……それに対するファンのみんなの言葉をいろんなところでたくさん目にして、本当に心が救われました。ありがとうございます。俺たちの中ではREITAは、変わらず、かけがえのない大きな存在で、俺は同じリズム隊として、今日のライブでもずっとあいつのことをそばで感じることができたし、こうやって自分たちがステージに立ち続ける限り、あいつのことを感じられるんだなって、今日はそう確信しました。だから、あいつの想いと、あいつの言葉を、この先の未来に繋げていくために、このライブというかけがえのない場所とthe GazettEを、これからも変わらずみんなと一緒に守っていきたいと、そう思ってます。
でもね、全ての人がそうやってすぐに前を向けるわけではないのもわかっているし、そこは急がなくていいから。自分の気持ちと思いを、どうか優先してください。これだけたくさんの仲間がいて、当然、俺たちもいるから。この配信を今、観て、聴いてくれているみんなも……ここに帰ってくる場所があるんだということだけは、どうか忘れないでいてください。俺たちはこの先も変わらず5人分の想いでthe GazettEを続けていくんで、どうかこれからもよろしくお願いします」
リズム隊の相方として、the GazettEのリーダーとして、そう言い切った戒に続き、REITAとは小学生の頃からの幼馴染みであり、とりわけ長い時間を共に過ごしてきた麗は、改めて彼への想いを振り絞る。
「俺はREITAとは人生の大半を共に過ごしてきた仲なんで、俺にとってはずっといるのが当たり前の存在でした。あいつと共に過ごした日々は俺にとってかけがえのないもので、今の自分があるのもあいつと支え合ってこれたからだと思ってます。俺にとってREITAは本当に言い表すのが難しい存在で……もちろん友人なんですけど、兄のようでもあり、弟のような一面もあったり、時にはいいライバルだったり、何よりこうやってステージに一緒に立ってきた仲間でした。そして何より、あいつの男気にあふれるパフォーマンスと激しくベースを弾く姿は、 俺にとっても憧れの存在でした。なので、ここにいるみんなや、ここに気持ちを届けてくれているみんなと、REITAの存在をしっかり感じられるように、こうやってライブという形を取ることができて、今日は本当に良かったと思っています。このライブを通じて、REITAも今このステージに一緒に立っているんだなということを、改めて実感することができました。なので、バンドとしてみんなに安心してもらえる場所を、これからも作り続けていけたらと思っています。いままで俺たちはみんなにたくさん支えてもらってきたと思っています。だからこそ、心の中ではちゃんと5人のthe GazettEなんだよってことを、これからもみんなには感じてもらいたいと思ってます。その想いがある限り、ステージに立ち続けていけるんだと思っています。
これから先、みんなへの感謝の気持ちは、俺たちが変わらず突き進んでいくということで返していきたいと思っているので、これからも安心してついてきてほしいです。みんなが支えてくれたぶん、俺らも全力で返していくんで、これからもどうか、よろしくお願いします」
メンバーが話す間もずっと左横にREITAの分のスペースを空けていた葵は、自分の番になると「ちょっと待ってね、マイクスタンドの使い方わかんない」と客席を笑わせたりと、聞く者の心を解きほぐすかのような彼らしい物言いで、REITAへの愛情を示した。
「まずは、ここに集まってくれたみんなと、配信をご覧になっているみんなに、今日the GazettE……REITAのために集まってくれて、心からお礼申し上げます。本当にありがとう。気がつけば親や兄弟よりも長い時間を共にしてさ。それこそ“もうしばらくはお前らの顔とかはいいわ”とか“お腹いっぱいだよ”って思うぐらい、お互いの存在を当たり前に感じて生きてきたんだけど……不思議なもんでさ。今日、この公演をやってて、確かに俺はREITAの存在を感じながらプレイしたよね。ああ、あいつ今こんなプレイしてるなぁとか、背中を預ける安心感、俺のギターやRUKIの歌、麗のプレイを、戒と一緒に熱く支える、そのフレーズや息遣いを確かに感じた。実際にみんなの前で演奏してさ、俺にはRUKIや麗、戒、そして、もちろんREITAもいる。そこにはこうやってライブに足を運んでくれるみんながいて“やっぱthe GazettE最高だわ”って、REITAがthe GazettEのこれからを望むわけだよって。俺もthe GazettEが永遠であってほしいって願うから、そのためにも今まで以上にthe GazettEを磨き続けて、いつまでもみんなが安心して来れる場所として守り続けるよ。the GazettEが大好きなREITAのことだから、きっと俺たちを見守ってくれてると思う。
もちろん、心ない言葉や行動があることも知っています。みんながそれに声を上げてくれていることも知っています。言いたいことを思うがままに発信できる世の中だからこそ、俺はみんなを心配に思う瞬間ってのはあるんだけど、1人で立ち向かうのではなく、俺らメンバー、オフィシャルに投げかけてほしい。必ずそれ相応の対処はするから。ため込まないで言ってね。REITAを愛してくれてありがとうね。今日は本当にありがとうございました」
割れんばかりの拍手が場内を満たす中、そしてRUKIが「最後に、もう一つだけ。俺らから次の約束をさせてください」と口を開く。
「今年9月12日、またここ豊洲PITで会いましょう。約束があると前を向けると思うから、その時にはみんなの笑った顔がまた見たいです。俺らも笑顔にできるステージを作って待ってます。必ず帰ってくるんで、みんな、何卒、これからも……the GazettEを、5人をよろしくお願いします。配信を観てくれてるみんなも、ここに集まってくれたみんなも、本当にありがとう。心の底から愛してます」
the GazettEの永遠を叶えるための次の一歩を確約して「聴いててください。『春雪の頃』」と、これまた初期から数えきれないほどプレイされ続け、節目の度にフィナーレを飾ってきた大事な曲がコールされるやフロアにはざわめきが。別れの切なさを歌う“卒業”ソングであり、もともとは“見送る”心情から生まれたナンバーで歌われる《せめて君よ 忘れないで》という詞が胸に刺さる。ベースの見せ場になるとオーディエンスは高く腕を掲げ、ギターソロを挟むとRUKI、麗、葵はセンターのお立ち台へ。いつものように肩を寄せ合う場面で葵はRUKIとの間隔を空け、REITAが変わらずそこに居ることを表していた。喜びと悲しみ、絶望と希望がないまぜになって涙腺を決壊させるようなシーンを経て、「全員で行こうか! ラスト‼」というRUKIの叫びから、戒のドラムを先導に全力で踏み込んでいったのは「UNFINISHED」。フロアから凄まじい勢いで“オイ! オイ!”と拳があがるなか、5人で一つの音塊となって夢を越えてみせる決意を歌うと、RUKIは《掛け替えのない君の手を引いて》とお立ち台の上から手を引く仕草を見せる。最後は《辿り着くまで永遠に》とREITAの望んだ永遠への誓いを刻むこのアッパーチューンほど、今日のライブを締めくくるの相応しい曲はなかっただろう。何よりthe GazettEはUNFINISHED――未だ“終わっていない”のだから。
「Thank you Tokyo!」と拍手を贈ってオーディエンスと互いを称え合ったRUKIは、永遠への誓約を立てるように後ろを向き、大きく掲げられた“the GazettE”のロゴに咆哮を捧げて残響のなかで告げる。
「みんなの顔を見れて本当に良かった。また必ず帰ってくるので、その時は笑ってまた会おう。そして今日来れなかった俺たちの仲間がいっぱいいるよ。だから、そいつらにも伝えてあげてほしい。絶対また幸せになれるようなライブを、俺らが届けるから。俺らが届けに行くから、絶対待っててって伝えてください」
そして「9月12日、またヤバいライブをやろうと決めてあるので、ぜひ楽しみにしててください。この先も一緒に生きていきましょう。ありがとうございました。どうか気をつけて帰ってください。愛してるよ」と言い残し、ベースキャビネットを愛おしそうに撫でてステージを去った。
REITAの好きな曲、彼の見せ場、メンバーの心情とシンクロするメッセージナンバーだけで構成された全16曲2時間超。それはREITAの誕生日を祝うと同時に、四十九日を前にして愛と感謝を捧げる最大限の餞の場となった。ゆえに曲中で歌われる“君”がすべてREITAと重なり、胸を詰まらせたオーディエンスも多かっただろう。the GazettEの作品には“死”をテーマにしたものも、REITAのアグレッシブなプレイスタイルからベースが目立つ曲も多い。あらゆる意味で今のメンバーにとっては演奏するのが辛いのではないかと思われる曲も、今後もしかしたら封印されるのではと疑ってしまう曲も、しかし、この日は惜しみなく披露されていた。それは今後メンバー自らの中に生まれる、そしてファンや外部からぶつけられるであろう、すべての感情を受け止める覚悟の表れにほかならない。今回のライブ開催にあたって「傷つくような、感情的な言葉をたくさん浴びてきました」とRUKIはMCで語り、その中には「いっそ解散してしまった方がよかった」という声もあったそうだが、そんな感情はファンの中であってもゼロにはならないだろう。それでも誰になんと言われようとも「the GazettEは、これからも5人」と明言し、誰一人置いていかずに走っていくことを彼らが決めたのは、筆者の個人的な考えを述べさせてもらうならば、それが“the GazettE”だからだ。どのライブにおいても「絶対に変わらない存在、居場所で在り続ける」と宣言していた彼らにとって、歩みを止めることは恐らく選択肢になかったに違いない。約20年前から彼らを見てきた筆者にとっても、the GazettEは“いつでも帰ってこられる居場所を変わらず守ってくれている存在”であり、同じように感じている人々は今や世界中に存在している。そして彼らは飛び続けることを決めた。たとえ片翅でも、完全な自由は望めない空でも、REITAの望んだ“永遠”を叶えるために。
彼と一緒に紡いできた大切な作品たちを、どんなに苦しくても歌い続け、永遠へと繋いでいくという覚悟は、ファンのためであるのはもちろん、そんなファンを愛し続けていたREITAの想いに応えるためのものでもある。誰よりまっすぐで、純粋で、誰からも愛されていたREITA。彼が遺した曲、音、姿、言葉、思い出を“生きるための強さ”に変えて、ファンもメンバーもこれから生きていくのだろう。もし歩けなくなってしまったら、そのときは互いに支え合えばいい。“SIX GUN'S”というワードが生まれた18年前のツアー最終日、初の日本武道館公演でRUKIが「いつでも助け合っていくのがうちらの求めるスタイル」と告げたように、私たちは6人で一つの“SIX GUN'S”なのだから。
取材・文=清水素子
撮影=KEIKO TANABE、KYOKA UEMIZO