なぜ銅メダリストが2人?意外に知らない理由を解説【オリンピックの豆知識】
永山竜樹が敗れたガルリゴスとともに銅メダル
パリオリンピック開幕早々、柔道で男子、女子ともに“誤審”や不可解な判定が続き、物議をかもしている。準々決勝で不可解な判定を受け敗れた男子60キロ級の永山竜樹、女子48キロ級のタラ・バブルファス(スウェーデン)の2人が3位決定戦を制し、銅メダルを獲得したのがせめてもの救いだ。
その結果に胸をなでおろしながら、メダル授与式を眺めて、首を傾げた読者もいるのではないだろうか。特に男子60キロ級では疑問に感じた方もいるだろう。なぜなら、永山が不可解な判定で敗れたフランシスコ・ガルリゴス(スペイン)と並んで同じ銅メダルを掲げているのだから。
この不思議な光景は、オリンピックのいくつかの競技では、銅メダリストが2人表彰されるシステムによって生まれる。柔道、テコンドー、ボクシング、レスリングなどの競技では2つの銅メダルが授与されるのだ。
この仕組みの歴史は古く、ボクシングでは1952年のヘルシンキオリンピックから導入された。それ以前は、1948年のロンドンオリンピックまで、ボクサーたちは3位決定戦を行っていた。しかし、準決勝と3位決定戦の間の回復時間が短すぎるという判断から、準決勝で敗れた両選手に銅メダルを与える現在の制度が採用されたのである。
2つの銅メダルを目指して敗者復活戦
一方、柔道、テコンドー、レスリングでは「敗者復活戦」方式を採用している。この方式では、準決勝で敗退した選手だけでなく、それ以前のラウンドで敗退した選手にもメダル獲得のチャンスが与えられる。
テコンドーとレスリングの敗者復活戦では、準決勝で敗退した選手と、決勝進出者に負けたベスト16と準々決勝で敗退した選手が出場する。これらの選手たちが対戦を重ね、最終的に2つの銅メダルを争う。
柔道の敗者復活戦は、他の競技とは少し異なる独特の方式を採用している。この方式では、準決勝で敗れた選手と準々決勝で敗れた選手が、別々の道筋でメダル獲得を目指す。
まず、準々決勝で敗退した選手同士で対戦が行われる。これは、いわば「敗者同士の再挑戦」の機会だ。この対戦の勝者が、準決勝で敗退した選手と対戦する権利を得る。そして、この最後の対戦の勝者が銅メダルを獲得する。
この過程は、トーナメントの両サイドで同時に進行する。つまり、2組の「準々決勝敗退者同士の対戦」があり、その勝者がそれぞれ別の「準決勝敗退者」と対戦する。結果として、2つの銅メダルが決定するのだ。
この方式により、準々決勝で強豪選手に敗れた選手にも、メダル獲得のチャンスが与えられる。同時に、準決勝まで勝ち進んだ選手の実力も適切に評価されるのである。
選手への負担と公平性を考慮
2020年東京大会で初めて正式種目となった空手では、「組手」と「型」の2つの競技があり、それぞれで異なる方式が採用されている。組手では、ボクシングと同様に準決勝で敗退した2人に銅メダルが与えられる。一方、型では6人による順位決定ラウンドが行われ、最終的に4人の選手が2つの銅メダルを争う。
これらの方式が採用されている理由は、競技の特性や選手の安全、そして公平性を考慮してのことだ。高強度の格闘技で3位決定戦を行うことは選手に大きな負担をかける可能性がある。
また、トーナメント方式の特性上、準決勝で敗れた2人の選手が互いに直接対戦していない場合が多いため、両者に銅メダルを授与するのが公平だと考えられているのだ。
このように、オリンピックの銅メダル授与方式は競技によって異なり、それぞれの競技の特性や歴史を反映している。オリンピックを観戦する際は、これらの違いにも注目してみると、より深くスポーツを楽しむことができるだろう。
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記事:SPAIA編集部