戦禍を生き抜いた築134年の琉球古民家「茶処 真壁(まかべ)ちなー」で味わう定番の沖縄そばセット(糸満市)
「茶処 真壁ちなー(以下、真壁ちなー)」は、明治24年(1891年)頃に建てられた伝統的な沖縄の古民家を利用した沖縄そば屋です。 第二次世界大戦では糸満市真壁地区一帯が激しい地上戦に巻き込まれ、多くの住民が犠牲となりました。奇跡的に焼け残った民家には、いまも柱や石垣に銃弾の跡が刻まれています。 「真壁ちなー」は戦後の補修を経て、1998年11月に飲食店として再生、2005年には国の登録有形文化財に指定されました。以降、歴史を刻む空間でクラシカルな沖縄そばを味わえる店として親しまれています。 今回は、「真壁ちなー」の人気メニュー「三枚肉そばセット」をご紹介します。
「茶処 真壁ちなー」人気No.1のクラシックな三枚肉そばセット
まず、メインの三枚肉そばの見た目!私が幼い頃に食べた沖縄そば、そのままの姿です。 鰹ダシにほんのり豚ダシを加えた素朴なスープ。三枚肉とかまぼこが一切れずつ、仕上げにネギをひとつまみ。 沖縄で生まれ育った私にとって懐かしいだけでなく、地元の人々が「真壁ちなー」に足しげく通う理由も自然と伝わってきます。
そば粉を使わずに小麦粉で作られた沖縄そばの麺の特徴は、なんといってもコシのある歯ごたえにあります! 「真壁ちなー」では、モチモチ感が特長の、西崎製麺所の麺を使用しています。縮れがかった波打つ形状は、ダシ汁をしっかりとまとい、ひと口ごとに麺のモチモチ感と歯ごたえ、そしてダシの旨みを同時に楽しめます。
こちらは「真壁ちなー」のじゅーしぃ。白米に人参、しいたけ、ごぼう、豚肉を加え、ダシでじっくり煮込んだ沖縄風炊き込みごはんで、沖縄そばのおともに欠かせない存在です。 「真壁ちなー」ならではの秘訣は、香りづけに使うバジル。ボリュームたっぷりのじゅーしぃも、ふわっと広がる爽やかな香りで、最後まで軽やかにいただけました♪
セットには小鉢が3つ。もずく、人参シリシリー、そして豆腐とからし菜の白和えです。 もずくはツルッとした喉ごしと酸味で、まるでお口直しのような役割。人参シリシリーは沖縄の家庭で日常的に食べられてきた郷土料理のひとつで、人参と卵だけのシンプルさが魅力。人参の甘みと卵の柔らかさに、ついつい箸が進んでしまいます。 そして私の一押しは「豆腐とからし菜の白和え」。昭和60年創業・糸満市の老舗「宇那志(うなし)豆腐店」の豆腐は、糖度8%の自然な甘みと独特の製法から生まれるクリーミーさが特長。 からし菜のシャキシャキ感が合わさり、絶妙なハーモニーに心つかまれました!
沖縄の歩み、傷を負った証、栄誉が刻まれる「茶処 真壁ちなー」の内観と外観
「真壁ちなー」を語るうえで欠かせない人物が、金城増太郎(きんじょう ますたろう)です。 金城増太郎さんは、現在「真壁ちなー」を切り盛りしている田中さんの曾祖父。店内の通路には、賞状や年季の入った写真がならび、金城増太郎さんの存在感を伝えています。 金城増太郎さんはもともと教員であり、戦時中・戦後を通じて元三和村の村長を長く務め、村の発展に大きく貢献しました。さらに1957年から3年間は琉球政府立博物館(現・沖縄県立博物館)の館長も務め、沖縄史に精通していた人物です。 「真壁ちなー」は、かつて金城さんが居住していた場所。亡くなられたあとはしばらく空き家となっていましたが、家族はこの古民家に関心を持つ人がいると考え、当時のままの状態を保ち、軽食を提供する茶処として営業をはじめ、いまに至ります。
築134年という歳月は、時代の流れをそのまま映し出しています。 戦時中には銃弾が飛び交い、多くの市民が巻き込まれて亡くなる激しい戦禍があり、それは民家のあちこちに残る弾痕が悲惨な事実を物語っています。 それでも「真壁ちなー」には、戦争の悲しさよりも、ゆったりと流れる沖縄らしい時間の流れを強く感じます。歴史を刻んだ古民家だからこそ、訪れる人に穏やかな空気と静かな安らぎを伝えてくれるのでしょう。
2005年にはめでたく、「真壁ちなー」の主屋を含む4つの建造物が国登録有形文化財として登録されました。
「茶処 真壁ちなー」の豊富なメニュー
今回私がいただいたのは「三枚肉そばセット・小」(税込1220円)。そばに小鉢3品、漬もの、そしてじゅーしぃ(黒米にも変更可)がついた、大満足のランチタイムでした。 昔ながらの沖縄の味を支えるのは、地元・糸満の誇る老舗の品々。創業100年を超える「西南門小(ニシヘージョーグヮー)かまぼこ屋」のかまぼこや、昭和60年創業の「宇那志(うなし)豆腐店」の豆腐など、名店の味がぎゅっと詰まっています。 一度に沖縄の“いいもの”を味わえる贅沢なセットです!
過去を残し、今を生きる。「茶処 真壁ちなー」の届ける沖縄のおだやかな空間と時間
糸満市は、のどかな田園風景と青い海が広がる一方で、沖縄戦における激戦地でもありました。アメリカ軍の攻撃で周囲は焼け野原となりましたが、のちの「真壁ちなー」となる古民家だけは奇跡的に残りました。 沖縄のために務めた曾祖父の過ごした場所がいまも存在するのは、忙しい現代を生きる人々に、おだやかな時間のなかでおいしい食事を楽しむ場として、誰かの活力になってほしいという想いが込められているのかもしれません。 仕事の合間や旅行の合間、みなさんのタイミングで「真壁ちなー」の食事時間を過ごしてみてください。店を出る頃には、気持ちがおちついて「よし、頑張ろう!」と自然に元気が湧いてくるはずです。
茶処 真壁ちなー住所
〒901-0336 沖縄県糸満市真壁223
電話番号
098-997-3207
営業時間
11時~16時(L.O.16時) *売り切れ次第終了
定休日
日曜日・月曜日
駐車場
あり
クレジットカード・電子マネーの利用
可
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