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子どもが口から出血 【口のケガ】タイプ別「緊急度と受診の目安」 〔小児歯科専門医指導医〕がわかりやすく解説

コクリコ

「子どもの口のケガ」のポイントについて小児歯科専門医指導医・宮新美智世先生がわかりやすく解説。(全3回の1回目)

【画像で見る】子どもの口のケガ 緊急度と受診の目安

子どもが転倒! 顔を見ると口から出血……! こんなとき「救急車」か「歯科」? それとも自宅で様子見? どうすればよいのでしょうか。親が迷う「その瞬間」の判断と受診のポイントを日本外傷歯学会副理事長・宮新美智世先生にお聞きしました。

命に関わる場合は迷わず救急要請

──子どもの口のケガは、どのようなケースが多いのでしょうか?

宮新美智世先生(以下、宮新先生):一番多いのは、転倒による打撲、次いで転落による衝撃です。歯をぶつけて折れたり、ぐらついたり、ひどいときは歯が抜け落ちたりすることもあります。

また、唇や口の粘膜、舌などが切れる、すりむく、ものが刺さる、裂ける、火傷・凍傷など。

さらに、赤ちゃんがコンセントをしゃぶって感電してケガをする。こうした事故もゼロではありません。

──口のケガで、すぐに病院を受診したほうがよいケースを教えてください。

宮新先生:まず、命に関わる場合は救急車を呼んでください。具体的には次の3つです。

●意識がない/ぐったりしている●目の周りの青あざや、耳たぶの後ろに内出血がある

●噴水のように血が噴き上がる

歯ブラシや串など長いものが口内に刺さったときは、絶対に抜かずにそのまま救急車を呼んでください。もし抜いてしまったら、抜いたものも必ず病院に持参しましょう。

その他の目安は次の表を参考にしてください。

永久歯が抜け落ちたら水道水で洗わず1時間以内に受診

宮新先生:「永久歯が抜け落ちた」場合も、すぐに歯を探しだして、歯を持って歯科医院を受診してもらうのがよいですね。

──それは、抜けた歯を戻すために急いだほうがいいということですね。

宮新先生:そうです。詳しくは次回2回目で説明しますが、特に永久歯は、1時間以内に受診することで、歯を元に戻せる可能性が高くなります。

その際、抜け落ちた歯は、水道水で洗うと塩素と低浸透圧により細胞が死んでしまうため、血がついたままラップにくるんで乾燥を防いでから歯科を受診してください。

どうしても受診まで1時間以上かかる場合は、歯を牛乳にひたして冷蔵保存すること。ただし、牛乳アレルギーがないお子さんの場合に限ります。

折れ・揺れ・ズレは当日受診で痛み最小化

──命に関わらず、歯も抜けていない場合は、どのタイミングで受診すべきですか?

宮新先生:「歯が折れた」「ヒビが見える」「揺れる」「ずれた」「歯と歯肉の境目から血がにじむ」「食品を嚙んで痛い」などの場合はできるだけ早めに、なるべく当日中に小児歯科を受診しましょう。

ケガをした直後は痛みを感じにくいことがありますが、半日~1日で痛みがピークになります。その時点で食事が取れていないと、子どもの体調とメンタルに悪影響も。早めに受診することで痛みが少なく、回復も早く、好きなものが食べられる状態になります。

また、唇のケガで砂や汚れがついている場合、放置すると傷跡が残るリスクがあります。粉状の汚れは当日中に病院で除去してもらうことをおすすめします。

すぐに受診できない場合は定期検診で申告

──逆に、「自宅で様子を見てもよい」ケースはありますか?

宮新先生:頰の粘膜や唇の裏側のケガ、舌をかじった程度のケガは、自宅で様子を見ていても構いません。また、歯をぶつけた場合でも1時間以内に食事をして痛みがない場合は、問題ないことが多いです。

ただし、口のケガは安易に「様子見で大丈夫」とは言えないのです。ケガ直後はどのような外力が加わったのかわからないため、見た目で判断が難しいからです。

例えば、「歯」の外傷といっても同時に下記の部位が損傷されるケースがあります。

●歯……歯冠、歯根、歯髄、乳歯の外傷は跡継ぎの永久歯

●歯の周り……歯肉、歯根膜、歯の周りの骨

ケガを放置してしまい「やっぱり早めに病院に行っておけばよかった」と後悔するケースも少なくありません。

脳外科のケースですが、子どもが頭を打った直後は何もなくても、その後2週間以内は異常が出ることがあると言われています。歯のケガも同様で、初めは軽傷に見えても、実はその時点で隠れた損傷が存在していることがあります。

例えば、地震で壁の内部に目に見えないヒビが入っていても、あとから亀裂が大きく現れるように、歯も食事や会話など日常の刺激を受けるうちに、当初は検出できなかったダメージが顕在化してくることがあるのです。

──どうしても当日中に病院に行けない場合はどうすればよいでしょうか?

宮新先生:可能であれば1週間以内に受診を。それも難しい場合は、ケガした日付、状況、症状をメモしておき、次の定期検診などで受診するときにかかりつけ医に相談してください。

歯のケガの跡は、時間が経っても消えない部分が多いです。歯科医も「これはケガの影響かな」と確認しながら診察できるため、ケガをしたときの記録や情報があると、的確な治療を行いやすくなります。

乳歯外傷の約半数が後継ぎの永久歯に影響 定期検診がカギ

──乳歯をぶつけて抜けてしまった場合、「どうせ生え替わるから大丈夫かな」と思ってしまうケースもあるかと思います。

宮新先生:実は、乳歯の外傷の50%以上が次に生えてくる永久歯に影響を与えると言われており、適切な治療やケアを受けないと、さらに深刻な影響につながることもあります。

永久歯への影響として多いのは、白や黄色の斑点がつく程度ですが、歯がへこんだり、歯根が曲がったり、歯の成長や発育が妨げられるケースがあります。稀に、永久歯が生えてこなかったり、歯並びに影響を及ぼすこともあるのです。

前歯の永久歯は5~8歳ごろに生えますが、3歳で乳歯にケガをした場合、定期的に年に2回ほどX線検査を行うことで、永久歯への影響を早期に確認できます。

「永久歯が欠けている・曲がっている」といった異常を事前に把握できるため、永久歯が口の中に生えてきたら、速やかに対応できるというわけです。

さらに言えば、乳歯がまだ生えていない赤ちゃんが口の中をケガした場合も、将来生えてくる永久歯に影響が及ぶことがあります。つまり、年齢が低いほど、永久歯のもととなる部分に、広範囲なダメージが及ぶリスクが高くなるということですね。

──すぐに症状が出ないからこそ、小児歯科との連携が大事になってくるわけですね。

宮新先生:そうですね。だからこそ、かかりつけの歯科医を持つことが大切です。

口元のケガは歯科で診てもらえますが、特に子どものケガに慣れている小児歯科や口腔外科が安心です。定期的に診てもらうことで、虫歯予防にもつながります。

また、日本小児歯科学会や、日本外傷歯学会、日本口腔外科学会のホームページを確認すれば、専門医や認定医のリストを確認できます。近くの信頼できる先生を事前に探しておくと安心ですね。

───◆─────◆───

子どもの口のケガは、唾液が多い中でおきるので大量出血に見えやすく、歯が抜けたりすると親は慌ててしまいがちです。

しかし、「命に関わるケースは救急車を」「永久歯が抜け落ちた場合は1時間以内に小児歯科へ」といった判断基準を知っておくだけで、受診が必要なケースを冷静に見極めることができます。

次回2回目では、歯が抜けた、折れた、飲み込んだ、唇を切った場合の具体的な対処法を、引き続き宮新先生に伺います。

取材・文/山田優子

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