4年分の思いが詰まった重みあるメダル…実は金メッキ【オリンピックの豆知識】
柔道女子48キロ級の角田夏実が金メダル
パリオリンピックが開幕し、世界中の注目がフランスの首都に集まっている。アスリートたちが夢見る金、銀、銅のメダル。人生の大半をかけて目標を追い求めてきた選手たちにとって、これらのメダルの価値は計り知れない。
柔道女子48キロ級では角田夏実が優勝し、日本のメダル1号に輝くと同時に夏季オリンピックで日本勢通算500個目の記念すべきメダルとなった。
今回は、そのオリンピックメダルにまつわる3つの豆知識を紹介する。
豆知識① 金メダルは「金」ではない
多くの人は、金メダルが純金でできていると思っているかもしれない。しかし、実際はそうではない。現在の金メダルは複数の金属で構成されている。
パリオリンピックの金メダルの重量は529グラムで、その95.4%以上(505グラム)は銀でできている。純金は約6グラムで、これはメダルの表面をメッキで覆うために使用される。残りの18グラムは鉄で構成されている。
かつては純金の金メダルが授与されていたが、経済的な理由から現在の構成に取って代わられている。もし今大会の金メダルが純金でできていたら、1個当たりの価値はなんと約580万円(約4万1162ドル)にもなる。
今大会では329種目で金メダルが渡される予定だ。もしも、そのすべてを純金で作ってしまうと、材料費だけでおよそ19億円かかる計算になる。
最後に純金のメダルが授与されたのは1912年ストックホルム大会で、今のメダルよりもはるかに小さくて軽い約24グラムだったと言われている。このサイズでも現在の金相場で計算すると、約23万5000円(約1680ドル)もの材料費が必要になる。
ちなみに、現在の純金ではない金メダルが安価かと言うと決してそうではない。2024年パリオリンピックの金メダルの素材価値は、約12万円(約950ドル)と推定されている。フォーブス紙によると、これは、2012年ロンドンオリンピックの708ドルという記録を大きく上回り、近代オリンピック史上最も高価な金メダルとなる可能性がある。
豆知識② メダルが急激に重くなっている
オリンピックのメダルは、大会ごとにデザインや素材構成も変わっているが、直近20年で急激に重くなっていることはご存じだろうか。
2004年アテネ大会と2008年北京大会では約150グラムだったものが、2012年ロンドン大会では375~400グラム、2016年リオデジャネイロ大会のメダルは約500グラムとわずか2大会で3倍以上の重さになった。
さらに、2021年東京大会のメダルは、金メダルが約556グラム、銀メダルが約550グラム、銅メダルが約450グラムにまで増加。これは夏季オリンピック史上、最も重いメダルとなった。
556グラムと言うと女子バスケットボールで使用される6号ボールとほぼ同じ重量。当時、メダルを持ち上げた選手からも「メダルが重い」というコメントが相次いだ。
パリ五輪のメダルは、東京大会よりも軽くなったとはいえ、依然としてかなりの重量がある。選手たちは首に掛けた瞬間、その重みとともに自身の偉業の重みを感じることだろう。
豆知識③ 1位は「金メダル」ではなく「銀メダル」だった
オリンピックのメダルシステムには、意外な歴史がある。現在の金・銀・銅の順位付けは、実は最初からそうだったわけではない。
1896年の第1回アテネ大会では、1位の選手に銀メダル、オリーブの枝と賞状が授与された。2位には銅メダル、月桂樹の枝と賞状が贈られた。金メダルが1位に与えられなかった理由の一つとして、当時のギリシャの財政状況が良くなく、金メダルを作る余裕がなかったという説がある。
この形式は長くは続かず、1904年の第3回セントルイス大会で純金のメダルが製作され、現在と同じ金・銀・銅のメダルが導入された。1位に金メダル、2位に銀メダル、そして初めて3位に銅メダルが授与されるようになったのだ。
メダルは単なる金属の塊ではなく、アスリートたちの努力と夢、そしてオリンピズムの精神が込められた特別なもの。その形式や意味は時代とともに進化し続けており、オリンピックの歴史そのものを体現しているとも言えるだろう。
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記事:SPAIA編集部