思い出の残し方が変わる ~新しい卒業アルバムの形~
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もうすぐ卒業式。「卒業アルバム」と聞くと分厚いハードカバーの本を想像しますが、最近その形が大きく変わってきているようです。
写真を「ネットからダウンロード」
株式会社日の出の浅沼 英雄さんに伺いました。
株式会社日の出 浅沼 英雄さん
「Webum(ウェーバム)」、ウェブとアルバムをドッキングさせた言い回しなんですね。それぞれサイトへアクセスしていただき、写真を選んで、ダウンロードしていただくシステムです。
「紙」から「電子化」へということですが、でも何も手に取るものがないと、またこれも寂しいでしょうということで、クラスの仲間、部活動、そこは1冊の小冊子にまとめて、卒業式に個々にお渡し致しますよと。それで行事ページに関しては、クラウド上から自由にダウンロードしてくださいねと、という形のものです。
<Webumで、一部写真をデジタル化したことで、紙の卒業アルバムが半分以下の薄さになりました>
これまでの卒業アルバムといえば、前半にクラス写真や個人写真が掲載され、後半には運動会や文化祭などの行事ページが並ぶ形式が一般的でした。
しかし、「自分が写っている写真が2~3枚しかない」という声も多く、限られたスペースの中で思い出を十分に残せないという課題がありました。
そこで、新しいサービスでは、学校行事のう写真を自由に選べる仕組みを導入。自分が好きな写真を選び、「自分だけのオリジナルアルバム」をオンライン上で作成できます。さらに、選んだ写真は自動でレイアウトされるため、特別なスキルがなくても簡単に作成が可能です。
また、一部のアルバムは従来どおり「紙」で残ります。クラス全体や先生の写真などは、冊子として制作され、卒業式で手元に届きます。このハイブリッド型の仕組みにより、アルバムの厚みが薄くなり、制作コストの削減にもつながるというメリットもあります。
「正の字チェック」からの解放
このハイブリッド型の卒業アルバム、現在都内のおよそ10校で導入されていて広がってるんですが、その中のひとつ、文京区立 第九中学校の山本康太さんに、使ってみてどうか?感想を伺いました。
文京区立 第九中学校・教員 山本康太さん
誰が何回映ってるかとか、写ってない子はいないかとかは逐一チェックして、複数の目でやったりします。それをまた業者さんに渡して直してもらって、っていう繰り返し。でもやんなきゃいけないから。「うちの子が高い金払って買ったのに一回も映ってなかった」とか、「写って欲しくないような構図で写ってた」とか、一般的にはありますよ。
でもこのシステム入れると、生徒が自分で選ぶので、教員がチェックする必要性はゼロになったのと、子供が気に入らない写真は選ぶことはないので、そういうクレームはなくなります。元々勤務時間外でやらないといけないこともたくさんありますので、その辺が減ったっていう感じですかね。
卒業アルバムの制作では、「誰が何回写っているか」を確認するために、先生たちが正の字をつけてチェックし、バランスを調整する作業が続いていました。修正が必要になれば、写真業者とのやりとりを何度も繰り返すことに。
ただでさえ卒業式の準備で忙しい時期に、こうした細かいチェック作業が加わることで、先生の負担は非常に大きなものでした。
しかし、新しいシステムでは、生徒自身が写真を選ぶため、先生がチェックする必要がなくなり、こうした作業から解放されることになります。
写真選びもレイアウトも児童が担当
先生の負担を軽減する取り組みは、デジタル技術だけではありません。新潟市の女池(めいけ)小学校では、今年の6年生を対象に、これまでとは異なる方法で卒業アルバムを制作しました。どのような方法なのか、新潟市立 女池小学校の校長、土田 亮さんに話を伺いました。
新潟市立 女池小学校・校長 土田 亮さん
「卒業アルバムの制作過程に、6年生児童たちが関わる」そういったアルバム制作を取り組んでます。子供たちがアルバムに掲載する写真選びですとか、レイアウトですとか、そういったものを写真館の方からアドバイスをいただきながら、自分たちで作り上げていく。
多分、大人が選ぶとなると「こんな、ちょっとふざけた写真はどうかな」と、ボツにしてしまうような写真でもですね、「この子らしさが出てる」ということで、そういった視点はやはり子供ならではかなと思いました。
今までですと、ゲラ刷りされた印刷物を皆で回し読みしながらやっていたものが、一気に子供たちも参加しながら写真が選べるという形で、これは非常に良かったですね。
この取り組みは、新潟市内の小学校を中心に広がっています。「総合的な学習」の授業の一環として、全5回ほど実施され、児童たちは地域の写真店の店主からアドバイスを受けながら、写真選びやレイアウトを自ら考えます。
自分で写真を選ぶことで納得感が生まれ、「写っている写真が少ない」といった保護者からの不満の声も減少。
さらに、これまで先生が放課後に行っていた作業を授業の中で完結できるため、先生の負担軽減にもつながっています。
先生たちの負担を減らしながら、どうやって思い出を残していくか。学校ごとに工夫を重ねながら、模索しているようです。
(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)