人類の進化のカギ「ゲノム編集」で何ができる?【眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話】
人類の進化のカギ「ゲノム編集」で何ができる?
ゲノム編集とは、遺伝子を正確に書き換える技術のこと
書き換えで品種改良や難病治療ができる
まず、生命科学の進歩の代表、ゲノム編集のことからお話ししましょう。ゲノム編集とは、遺伝子情報のすべてであるゲノムの特定の場所を切って、ねらった遺伝子の働きを止めたり破壊したり、切った部分に異なる遺伝子配列を入れたりして、遺伝子を書き換えることです。
たとえば、味がよくて栄養価の高いトマトをつくりたい場合、ふつうのトマトの遺伝子の一部を切り取って突然変異を起こさせたり、切り取った部分に味がよくて栄養価の高い遺伝子配列を入れることによって、望むトマトをつくることができます。このようにして、病虫害に強く収穫量の多いイネや、芽に毒をもたないジャガイモ、肉厚なマダイ、成長が早いトラフグなど、これまでの欠点をカバーしたゲノム編集食品が、次々に開発されています。
とくに注目されるのは、医療分野への応用です。がんをはじめ、遺伝子の変異によって起こる病気は数多く、決定的な治療法が見つかっていない病気もたくさんあります。これらについても、ゲノム編集技術によっていろいろな治療法が研究され、実際に成功した例も報告されています。
また、ゲノム編集技術によって、これまでよりもずっと短期間で副作用の少ない薬をつくることができるようになり、新薬の開発においてもめざましい貢献をしています。
ゲノム編集で食品の品種改良ができる
栄養価の高いトマトをつくることもできる
改良したいトマトの DNA の配列を正確に切断すると、DNA が本来もっている修復機能が働いて、遺伝子に変化が起こる。GABA をつくる酵素が活性化され、アミノ酸を豊富に含む高 GABA トマトができあがる。
よりおいしくしたり、欠点をカバーしたりできるゲノム編集食品
・肉厚マダイ・梅雨に強い穂発芽耐性小麦・芽に毒をもたないジャガイモ
【出典】『眠れなくなるほど面白い 図解 生命科学の話』著:高橋祥子