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「絆会」「池田組」大物トップ逮捕で判明…1億円供与の意外な使途とヤクザの懐事情

日刊ゲンダイDIGITAL

左から、「絆会」の織田絆誠会長と「池田組」の池田孝志組長(C)日刊ゲンダイ

「6代目山口組」と激しい分裂抗争を続けている「ツートップ」がそろって逮捕され、ヤクザ業界に激震が走った。

 所有する不動産を巡り、虚偽の登記をして金の貸し借りをしていたとして、大阪府警捜査4課は9日、特定抗争指定暴力団「絆会」(大阪市中央区)会長の織田絆誠(57=本名・金禎紀)と、特定抗争指定暴力団「池田組」(岡山市北区)組長の池田孝志(79=本名・金孝志)の両容疑者を電磁的公正証書原本不実記録・同供用の疑いで逮捕した。

 2020年2月、2人は絆会が所有する大阪、神戸の土地と建物を担保にして、織田会長が池田組長の「親族の女性」から1億円を借りたことにして虚偽の根抵当権を登記。実際は親族ではなく、池田組長が織田会長に直接貸していたとみられている。

 絆会は17年4月、「神戸山口組」を離脱した勢力により、「任侠団体山口組」として結成。一方、池田組は当時、神戸山口組を豊富な資金力で支える中心的存在。つまり、絆会と池田組は表向き“敵対”する関係だった。虚偽登記したのは、両者の「深いつながり」を隠すためだったようだ。

 池田組長は織田会長に1億円を貸した5カ月後の20年7月、神戸山口組から離脱し、絆会と池田組は同盟関係になり、6代目山口組だけでなく神戸山口組とも対立した。

 虚偽登記発覚のきっかけは、組事務所の移転だった。絆会本部は昨年7月、兵庫県尼崎市から大阪市中央区に事務所を移していた。

「付近の住民から不安の声が上がり、府警は事務所の使用制限の仮処分命令を進めとった。その過程で登記を確認したら不自然な根抵当が設定され、しばらくしてその女性名義が外されとった。おかしいなと思ってその名義調べたら、池田の親族やった。その時期、絆はすでに神戸山口組から脱退し、池田はまだ傘下におった。敵対しているもん同士が金の貸し借りをしていることが、神戸山口組の井上邦雄組長にバレたらマズイいうことで親族女性の名前を使ったんやろ。その頃から池田は織田と組む腹づもりやったんやろな」(捜査事情通)

 織田会長が池田組長から1億円を借りたのは、借金返済のためだとみられている。

 織田会長は山口組分裂以前から井上組長の弟分で、井上組長に約8000万円の借金があった。2人が袂を分かった後、織田会長は井上組長の親族から訴訟を起こされ、返還命令が出ていた。その返済のため、織田会長が池田組長に頼み込み、金を工面したとみられている。

 暴力団に詳しいノンフィクション作家の溝口敦氏は、大物組長2人の逮捕をこう見る。

「池田組は金持ちヤクザとして知られ、絆会は金に詰まり、両組は永久的な友好同盟関係を結んでいる。これまでも金銭的な結びつきがあるのは想像に難くなかった。それが不動産を抵当に事務的な体裁を整え、取引が行われていることが分かり、案外、水くさい関係だったんだなぁという印象です。織田は井上には愛想を尽かしたが、池田とは相通ずるというか、肝胆相照らす仲だった。ひと昔前のヤクザだったら、1億円なんて鼻紙みたいなもんだった。その感覚からいうと、たかが1億円で担保までとるのかっていう感じ。そこまで彼らは厳しい状況に追い込まれているのでしょう」

 虚偽登記とはいえ、根抵当権を設定するなど正式な手続きを踏もうとしたばっかりに、アシがついた。

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