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【まわれ虎】夏にはカフェもオープン予定!穏やかな時が流れる別府市の個人書店

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今回は、2023年9月に別府市にオープンした個人書店『まわれ虎』をご紹介したいと思います。

アクセス

別府駅からは、徒歩およそ10分。
別府駅前にのびる県道32号を歩き、やよい天狗通り交差点を左折して県道645号に入ります。
海門寺温泉を通り過ぎ100mほどのところにあるピンクの壁面を持つ建物が『まわれ虎』です。専用駐車場はありませんのでご注意ください。

『まわれ虎』について

『まわれ虎』を営むのは、穏やかで柔和な雰囲気を醸す東京都出身の和貴さんと萌夏(もな)さん。
二人は同じ大学の出身で、会計学と美術史を専攻していたのだそう。
学生の頃から、和貴さんは「旅に出たい」という気持ちと「体を使ってできる仕事を生業にしたい」という考えを抱いていたそうで、萌夏さんは「ゆくゆくは自分で何かのお店を営んでみたい」と思っていたのだといいます。

大学を卒業し、先に大分県国東市への移住を決めた和貴さん。
移住先に大分県を選んだ理由は、寒いところが苦手だったことと、地図を見て国東半島の形に惹かれたからなのだとか。
その後合流した萌夏さんと二人、今の状態でできるものを考えたところ"本"と"飲食"が候補に挙がり、店を出すのに良い場所を探し別府に辿り着いたのだといいます。

元々ピンクだったという外壁に合わせ壁の色を変えるなど、自分たちで内装も手掛け、2023年9月10日に『まわれ虎』をオープンすることになりました。

萌夏さんのお気に入りは自分で作ったというカーテン。日田市を巡っていた際に安く手に入った布を縫い合わせたのだそうです。

まだまだ改装を続けているというお二人。
「近所の猫が、ふらっと入ってくるような場所にしたい」といいます。

店名の由来

「よく聞かれるのですが、言葉にするのが難しくて」という萌夏さん。
なんでも店名を覚えてもらいやすいよう、呪文のような響きにしたかったのだとか。

そこで出た「まわれ」という単語と、そこから連想された「虎」という言葉を合わせ今の店名が完成したのだそう。
確かに『まわれ虎』という言葉、千夜一夜物語の1篇「アリババと40人の盗賊」に登場する呪文"開けゴマ"と同じくらい中毒性があって、一度耳にしたら忘れられませんよね。
カウンターにある萌夏さんがデザインした栞にも、虎が描かれています。

店内

ブルーグリーンの壁が可愛い店内には、古書を中心に所狭しと本が並びます。

本のジャンルは幅広く、哲学書から美術書、建築、小説、エッセイ、詩などなど様々です。

『まわれ虎』は、種類やジャンルにはこだわりすぎず自然に本が集まる場所にしたいのだといいます。

2人のおすすめの本

今回はお二人にそれぞれ「おすすめの一冊」を伺ってきました。

まず和貴さんおすすめの一冊は、三島由紀夫生涯最後の長編大作「天人五衰(てんにんごすい)―豊饒の海・第四巻―」
「天人五衰」は三島由紀夫が憲法改正のため自衛隊にクーデターを呼びかけたあと割腹自殺をした事件から3か月後に出版された小説で、「豊饒の海」四部作の最後の作品です。
四部を通じて輪廻転生により主人公が夭折し生まれ変わるという構成がなされており、第四巻の「天人五衰」では4人目の生まれ変わりの少年が本物ではないことが発覚します。
和貴さんは「長い時間、その世界に留まることができるので長編小説が好き。特にこの作品は、著者の自決に至る最後の作品であり、著者の心情や経験を時を超えて追体験できる分、物語が最後に近づくほど本を捲るスピードが遅くなった。」と話します。

萌夏さんには"二冊"おすすめの本を紹介してもらいました。
一冊目は立原道造著「盛岡ノート」
立原道造は昭和初期に活躍し、24歳の若さで急逝した建築家であり詩人です。
昭和13年(1938年)の9月から10月にかけ盛岡市内に滞在し、その時の風景や心情を恋人へ語りかける形の手記として一冊のノートに残しました。
その手記が「盛岡ノート」というタイトルで昭和53年(1978年)刊行されたのですが、すぐに完売。その後、平成19年(2007年)再刊されるのですがそれも1年で売り切れるほどの人気を博しました。
それから長らく絶版となっていた本書ですが、現在盛岡市内を中心に増刷されているということ。そんな貴重な本も『まわれ虎』に並びます。
『まわれ虎』で定期的に行っている朗読会にてこの「盛岡ノート」を取り上げたという萌夏さんは「これはたった一人に伝えるために書かれた、盛岡旅行の紀行文であり詩。声に出して読むことで、盛岡の街並みや美しい自然や恋人への想いがより深く心に沁みました。」と話します。

もう一冊は写真絵本「二ひきのこぐま」
これは、モノクロ写真をストーリー仕立てに構成した絵本で、冬眠から覚めた子ぐまたちの冒険物語です。
作者は動物写真の第一人者、イーラことカミーラ・コフラー(Camila Koffler)。優しい目線で撮られた野生の子ぐまの姿は、写真を眺めているだけでも楽しめるといいます。

これは萌夏さんが小さい頃にお母さんが探してきてくれた大切な本だそうで、『まわれ虎』を始めるにあたりもう一度読んでみたのだといいます。
大人になって読むと、また子どもの頃感じていたこととは違う感情を味わえたそうで、店に絵本を置くきっかけにもなった一冊なのだそうです。

『まわれ虎』で、どの本にするか迷った際には、和貴さんや萌夏さんのおすすめの一冊を手に取ってみてはいかがでしょうか?

2024年夏にはカフェもオープン予定

現在、古書や新書を取り扱う『まわれ虎』ですが、今年の夏頃には店内2階にカフェのオープンも考えているということ。
現在は2階の改装やメニュー、カフェで使用する野菜などを探している最中だということで、時折その中で出会った農家のお手伝いにも行っています。
「ここに来て食べ物が近くなった」と話す萌夏さん。
これからも衣・食・住という人間の生活に関わる根源的なものを大切にしながらお店を営んで行きたいのだといいます。

最後に二人に別府市での暮らしについて伺ってみると、「別府は不思議な街。東京にいた頃と、国東市にいた頃、更に別府市に来た今では、振り返ると全て時間の流れ方が違うように感じる。これからもこの時間の流れを楽しみながら生活を続けていきたい。」と話してくれました。

自然の摂理に逆らわず、時の流れに揺られる心地よい空間が魅力的な『まわれ虎』。
みなさんも穏やかな時間の流れに身を任せて、面白い一冊に出会に行ってみてはいかがでしょうか。

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