パリ五輪選手村はエアコン無し 地下水利用の床下冷房ほか、環境配慮の取り組み
100%再生可能エネルギーで運営 冷房いらずの気候変動対策も
競技施設の95%が既存か仮設でまかなわれるパリ五輪。選手村もそのうちのひとつだが、53ヘクタールの広大な土地は以前、工業団地と廃屋が混在する「産業荒地」と呼ばれた場所だった。
しかしオリンピック施設建設公社の「SOLIDEO(ソリデオ Société de Livraison des Ouvrages Olympiques)」は、これを持続可能でインクルーシブな選手村へと変換。再建には75%のリサイクル資材が用いられ、低炭素コンクリートや木材が積極的に導入された。
こうして完成した選手村は、建物の屋根には太陽光発電パネルが設置され、100%再生可能エネルギーで運営される。屋内にエアコンはないが、地下水を利用した床下冷房を設置しているという。
開催期間中の暮らしもサステナブルに
選手村は期間中、世界中から約15000人のオリンピック選手と、約9000人のパラリンピック選手を迎え入れる。それだけ巨大な宿泊施設となる選手村だが、アスリートが寝泊りする部屋には素材の再利用をテーマに、東京五輪で採用された段ボールベッドが使われる。ベッドのマットレスは漁網を加工したもので、いずれも大会後に再びリサイクルされるということだ。
しかしそれだけではない。選手村で予定されている取り組みには、以下の3つに挙げられるように環境とジェンダーに配慮したものがある。
移動は電動自転車と電動シャトルバスで
選手村には宿泊施設以外にも、美容院や郵便局を含むショッピングモールや緑地がつくられる。そんな敷地内を移動する手段は、電動自転車か電動シャトルバスだ。また競技会場の80%は、選手村から約30分以内で移動できる。アスリートの移動を最小限に抑えるだけでなく、ゼロエミッション車を使うことでクリーンな現地環境を保つ。
食堂は映画スタジオを改装、使い捨ての食器は廃止に
アスリートたちが利用する食堂は、以前は「シテ デュ シネマ」と呼ばれる映画撮影スタジオだった場所で、3500席が設置される。選手村内で使われるすべての食材は、持続可能の認証を受けた供給源から調達し、毎日4万食以上の食事が提供される。また、使い捨ての食器やカトラリーは五輪の歴史で初めて廃止された。
五輪初の育児室を開設
パリ五輪の選手村では、初めて育児室が開設される。ジェンダーの不平等を解消し、乳幼児をもつアスリートを支えることが目的だ。育児室は宿泊施設とは別の場所に設けられるが、選手村の同じ敷地内にあることで親子が触れ合う時間を増やす。
大会終了後は地域社会に還元
約4週間にわたるオリンピック・パラリンピックが終わったあと、選手村は地域社会にそのまま還元、新しい街へと生まれ変わる。再建は必要最低限で行われ、約6000人が暮らし、約6000人が働く街になるという。住民のための学校や医療機関も新たに加わる。
オリンピックの選手村は、短期間に何万人もの人が滞在する巨大なコミューンだ。これからのメガスポーツイベントでは、環境への配慮はもちろんのこと、パリ五輪のように未来を見据えたプロジェクトが当たり前になるのかもしれない。
※参考
https://www.forbes.com/sites/alexledsom/2024/05/23/paris-olympic-village-2024/
https://olympics.com/en/news/paris-2024-athlete-village-behind-the-scenes