新丸子小野さん 地元の歴史、写真と語る 昭和知るため来訪者多数
「みんな、店に昔のことを聞きに来るんだよ」。そう話すのは、昭和10年から新丸子のイダイモールに店を構えるバーバーショップ小野の小野基一さんだ。
小野さんの店には、創業当時や戦前の商店街、戦中、戦後の街中の写真などが多数保存されている。どれも先代である父親が趣味で撮ったもの。「店に暗室があってね。よくそこで父が現像していました」。紙焼きのモノクロ写真の数々を見ながら「これは店ができたばかりの頃。これはその当時の航空写真。周りに何もないでしょう。日医大があるのはわかるよね」と一枚一枚丁寧に解説してくれる。
小野さんは昭和20年4月1日生まれ。同15日には親に連れられて実家に帰ってきたと思った矢先、川崎大空襲に見舞われた。多摩川河川敷に避難し、翌朝帰ってきたら何も残ってなかったという。焼け野原になった新丸子周辺、戦後の丸子多摩川花火大会など、写真を振り返りながら「子どものころ、多摩川でよく遊んでいて、それが楽しかった」と懐かしむ。
小杉周辺で進む再開発。高層マンションが建ち並ぶようになり、街を取り巻く状況も一変。昭和から続く店も減ってきている。「仲間も少なくなり寂しいけど、変わっていくのは仕方がない。だから皆さんが昔を知りたいと訪ねてくるので写真を置いているんです」と笑顔で話す。昭和と共に歩んできた商人は、時代の語り部でもある。