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松本零士が描く美女キャラベストテン!銀河鉄道999のメーテル? 宇宙戦艦ヤマトの森雪?

Re:minder

1981年08月01日 アニメーション映画「さよなら銀河鉄道999 アンドロメダ終着駅」が劇場公開された日

アニメブームの礎となった、映画「銀河鉄道999」


かつて、松本零士ブームがあった。

1976年―― 再放送から火が着いたテレビアニメ『宇宙戦艦ヤマト』(*本放送は1974~1975年)のブームを皮切りに、同劇場版(1977年)とその続編『さらば宇宙戦艦ヤマト』(1978年)の大ヒット、続く『銀河鉄道999』のTVアニメ化(1978~1981年)と2度の劇場版(1979年、1981年)の大ヒット、更に『宇宙海賊キャプテンハーロック』のTVアニメ化(1978~1979年)と、その前日譚『わが青春のアルカディア』の映画化(1982年)――。

そう、1970年代後半から1980年代初頭、アニメ界は松本零士無双状態だった。というか、それまで子供相手のニッチな市場だった “テレビまんが” を、中高生以上の大人も見る巨大マーケットの “アニメ" に変えたのが、当の松本零士が関わる作品たちだった。

そんなブームの軌跡は、ほぼ『黄金の6年間』―― エンタメ界を舞台に、様々なメディアがクロスオーバーして新しい才能が芽生えた時代(1978〜1983年)と重なる。松本作品は、出版・テレビ・映画・音楽と、メディアを横断して人気を博し、アニメブームの礎となった。1979年公開の映画『銀河鉄道999』は、邦画史上初めてアニメ作品が年間の興行成績でトップに立つ金字塔になった。

思うに、松本零士ブームがなければ、その後の『機動戦士ガンダム』のブームも、宮崎駿らスタジオジブリのブームも、『新世紀エヴァンゲリオン』を起点とする庵野秀明ブームも、今日の世界に冠たるジャパニメーションのブームも―― 訪れなかったかもしれない。

あれから40余年―― 松本零士先生は今から2年前の今日、2023年2月13日、85年の生涯を閉じた。漫画家としては比較的長寿の部類だったろう。奇しくも、生年月日が全く同じ石ノ森章太郎は60歳、漫画の神様・手塚治虫も60歳、藤子・F・不二雄は62歳で旅立たれたことを思えば、85歳は大往生である。

メーテルに代表される松本作品の女性キャラクターたち


松本作品の魅力とは何か。

宇宙や未来を舞台にした壮大な世界観、通称 “松本メーター” に代表されるメカの機能美、そして、物語を盛り上げる魅力的なキャラクターたち―― まぁ、そんなところだろう。中でも、顔立ちがよく似ていると指摘される(!)一連の美しい女性たちは、松本作品を語る際に絶対に外せない重要なファクターである。

実は、あの類型的女性キャラクターには、モデルとなった人物が3人いる。1人目は、松本先生が中学時代に憧れた宝塚歌劇団(当時)の女優・八千草薫、2人目は、1955年のフランス映画『わが青春のマリアンヌ』に主演したドイツ人女優のマリアンヌ・ホルト、そして3人目は、幕末に来日したドイツの医師シーボルトの孫娘の楠本高子である。3人に共通するのは、美人であるのはもちろん、一見柔らかな物腰ながら内に強さを秘めていること、そして松本先生から見て年上―― 要するにメーテルである。

そこで、本コラムでは、そんなメーテルに代表される松本作品の女性キャラクターたちに焦点を当て、彼女たちを通して松本作品の魅力に迫りたいと思う。題して「指南役撰・松本零士が描く美女キャラベストテン」である。

第10位:浅野さん / 男おいどん


『男おいどん』は松本先生初のヒット作品である。1971年から『週刊少年マガジン』(講談社)に連載され、後に大ヒットする一連のSF作品群とは全く異なる作風―― 四畳半の下宿を舞台に、風采の上がらない青年のリアリティを描いて人気を博した。若き日の松本先生自身がモデルといわれる。

この作品の肝は、冴えない主人公・大山昇太の周りに、なぜか次々と美女たちが現れる点。恋仲には至らないが、彼女たちは大山に勘違いさせるような言動を繰り返す(この辺に、既にメーテルのキャラの片鱗が見える)。中でも、同じ下宿に越してくる “浅野さん" は、腰まであるブロンドのロングヘアーに、切れ長の瞳、スラリとした長身と、後のメーテルに連なる松本作品のヒロインのビジュアルそのもの。あの系譜の元祖と言っていいだろう。

第9位:クイーン・エメラルダス / クイーン・エメラルダス


“松本零士スター・システム” を構成するひとり。宇宙海賊で、自身と同じ名の宇宙船 “クイーン・エメラルダス号” を操る。そう書くと、『宇宙海賊キャプテンハーロック』のスピンオフ作品のように見られがちだが、初出はハーロックの連載開始より2年早い1975年。その時は『月刊プリンセス』(秋田書店)の読み切りだったが、1978年に『週刊少年マガジン』(講談社)で本格的に連載がスタート。とはいえ、アニメ化されるのはずっと後(1998年)で、僕らが彼女を見るのは、もっぱら劇場版『銀河鉄道999』(1979年)や、映画『わが青春のアルカディア』(1982年)など他作品へのゲスト出演だった。

その風貌はメーテルとよく似ているが、髪色が栗毛で、左の頬にある大きな傷が特徴。当初、メーテルとは姉妹的な友人関係だったが、1990年代以降、2人は本当の姉妹設定に改変される。この辺りの物語やキャラクターの設定がどんどん変わるのも松本作品の特徴である。最終的に、先生は自身の作品たちをひとつの時間軸と世界観で統一するのが夢だったという。

第8位:スターシャ / 宇宙戦艦ヤマト


地球から14万8,000光年離れたイスカンダル星の最後の住人。ガミラス帝国の遊星爆弾で人類滅亡まであと1年と迫った地球に “放射能除去装置を受け取りに来るように” というメッセージと、ワープを可能とする波動エンジンの設計図を納めた通信カプセルを妹のサーシャに託すが、彼女を乗せた宇宙船は地球到着前にガミラスの攻撃に遭い、火星に不時着。サーシャは亡くなる。そのカプセルを訓練生時代の古代進と島大介が回収して、ヤマトの物語は動き出す。

とはいえ、後にスターシャは航行するヤマトに直接イスカンダルから語り掛けるようになり、初めからそうすれば妹が死なずに済んだのに… とも思うが、それはそれ。その風貌は、姉妹とも松本作品の類型的ヒロイン(腰まであるブロンドのロングヘアー、切れ長の瞳、スラリとした長身)そのもの。ヤマトがイスカンダルに到着した際、出迎えるスターシャを見た真田志郎に「(森)雪に似てるなぁ」とつぶやかせたのが、何とも罪深い。

第7位:リューズ / 劇場版 銀河鉄道999


劇場版『銀河鉄道999』に登場する名脇役のひとり。彼女が登場するのは、999の停車駅のひとつ、トレーダー分岐点(惑星ヘビーメルダー)。同星で、主人公・星野鉄郎が訪れた町はずれの酒場で、ギターの弾き語りをしていたのがリューズだった。歌うは、同映画の挿入歌「やさしくしないで」(歌:かおりくみこ)。酒場の客たちは皆泣いており、鉄郎の「どうしてみんな泣いてるんです?」の問いに、店の主人はこう答える。“もう2度と帰らない若いころを思い出すんじゃ” ――。

そんなリューズの正体は、鉄郎の亡き母の敵である機械伯爵の愛人だった。しかし、彼女は伯爵を裏切り、おかげで鉄郎は積年の恨みを晴らす。そして崩れゆく時間城の中で伯爵の亡骸に寄り添い、ギターを奏でるリューズ。その時、「やさしくしないで」の旋律が流れ、彼女の機械の体もみるみるサビに蝕まれていく。同映画きっての切ないシーンである。

第6位:テレサ / さらば宇宙戦艦ヤマト


反物質世界の女性。母星が白色彗星帝国により滅ぼされ、ただひとり生き延びるも、テレザート星に幽閉される。そこから地球へ向けて、宇宙の危機を知らせるメッセージを発信し続け、偶然これを護衛艦艦長として任務中の古代進が受信する。そして物語が動き出す。

まぁ、前作でいうスターシャと同じ役回りで、風貌もいつもの松本作品の類型的ヒロインそのものだが、スターシャと異なる点がひとつだけあった。それは―― 裸身であること。なぜかテレサは常に裸身なのだ。それゆえ、ランクをスターシャより上位に置かせてもらった。それともうひとつ、テレサは同映画のラストで決定的な役割を果たす。前作でスターシャは地球を救ったが、テレサは宇宙を救う。それも命を懸けて――。ランクをスターシャの2つ上に置いたのは、そういう意味合いもある。

まぁ、あのラストについては色々な意見があるが、ひとつだけ確かなのは、『さらば宇宙戦艦ヤマト』はアニメ史上において類稀なる傑作であること。それは、舛田利雄監督のおかげである。個人的にはフィクションを思想で評論するのは、愚の骨頂だと思う。

第5位:ミーメ / 宇宙海賊キャプテンハーロック


いわゆる3大松本作品ながら、『ヤマト』や『999』と比べて、テレビ視聴率や映画の興行収入面で後塵を拝している感の『宇宙海賊キャプテンハーロック』。しかし、フランスやイタリアでは1980年代に国民的人気を博し、特にフランスでは最高視聴率70%を記録したこともあるという。2013年に公開された映画『キャプテンハーロック -SPACE PIRATE CAPTAIN HARLOCK-』がフランスとイタリアで、日本を上回る観客動員を記録したのはそういうことである。

そんなハーロックの魅力は、元々、青年誌の『プレイコミック』(秋田書店)で連載された経緯から、主人公がダークヒーローだったり、飲酒のシーンがよく描かれたりと、ほどよい大人の味付け。それを最も象徴するのが、ハーロックの良き相談相手のミーメである。乗組員の中で唯一の異星人。常に冷静沈着で、判断能力もピカイチ。それでいて主食がお酒で、アンニュイな喋り方で癒される。容姿は、腰までのロングヘアーにスラリとした長身は他の女性キャラと同じだが、瞳と口は描かれない。松本零士類型的女性キャラクターBタイプ(異星人キャラ)である。

第4位:有紀螢 / 宇宙海賊キャプテンハーロック


松本先生が描く女性キャラは総じて異常に髪が長いが、例外的にセミロングのヒロインが2人いる。ひとりは『ヤマト』の森雪、もうひとりが『ハーロック』の有紀螢(ゆうき けい)である。アルカディア号では主にレーダー手を務めるが、時に艦載機の操縦もこなす。可憐な容姿ながら、勇敢さも併せ持つ点では、『機動戦士ガンダム』のセイラ・マスと通じる面も。

テレビシリーズの第16話では、そんな有紀螢がメインとなるエピソードが描かれた。ハーロックとの出会いや、かつての恋人との思い出が明かされ、過去と決別する彼女の姿が印象的だった。同回のラストシーンは母の形見の津軽三味線を弾く螢と、それを見守るハーロック。この演出は鳥肌もの。ちなみに、同シリーズのチーフ演出は、りんたろう。第1話の試写を見た東映動画(現:東映アニメーション)の社長が感動して涙を流し、劇場版『銀河鉄道999』の監督に彼を指名したのは有名な話である。

第3位:森雪 / 宇宙戦艦ヤマト


ここから先は、みんなもよく知っているキャラなので、シンプルに行こう。第3位は――『ヤマト』のヒロイン森雪である。多分、リアルに恋人にしたいキャラで選べば、彼女が1位になるだろう。個人的には、あのピチピチの艦内服(あれでは、長い航海の男性クルーたちの精神状態にもよくないだろう!)より、たまに見せる看護服や、『さらば宇宙戦艦ヤマト』の冒頭で見せた普段着の彼女のほうが数段可愛い。これは、彼女の声優を務めた麻上洋子サン(当時)の影響も大きく、麻上サンの声って、リアルな “彼女声” なんですよね。すごく魅力的。

ちなみに、森雪絡みで個人的に最も興奮したエピソードは、テレビシリーズの第25話で、藪機関士ら11人が森雪を連れ出してイスカンダルに残ると宣言したシーン。ヤマトの地球への帰還が間に合わないケースを想定して、人類の種を絶やさないため―― が、彼らの言い分だったが、当時、子供心にザワザワしたのを覚えている。

第2位:メーテル / 銀河鉄道999


2位はメーテルである。えっ、1位じゃないの? と思われるかもしれない。多分、これは皆さん共通の認識だと思うけど、メーテルは理想の女性というより、どちらかと言えば理想の母親(あるいは姉)なんですよね。劇中、鉄郎目線で描かれることが多いだけに、特にそう感じる。

これは、松本零士先生がメーテルのモデルにしたとも言われる八千草薫サンを例にとっても分かるけど、八千草サンは母親か姉なんですね。恋人とはどこか違う、もっと肉親的な愛情を想像する。メーテルも同様である。

第1位:クレア / 劇場版 銀河鉄道999


さて、「指南役撰・松本零士が描く美女キャラベストテン」栄えある1位は―― クレアである。そう、劇場版『銀河鉄道999』で、999の食堂車で働くウエイトレス。母親の見栄で、美しいクリスタルガラスの体にされるも、冥王星の地下に眠る自分の体を買い戻すために働いている。

そんな彼女は鉄郎に秘かに思いを寄せ、また鉄郎も彼女に恋心を抱く。クレアの体はガラスでできているが、不思議と彼女が画面に登場すると、シーン自体が温かく感じる。クレアは物語の終盤、命を賭して鉄郎を守る。砕け散ったクレアの破片を宇宙に葬る車掌―― その物悲しく、なんと美しいことよ。

そうそう、大事なことを忘れていた。

クレアの体も裸身であった。そして―― 彼女の声を演じたのは、他ならぬ麻上洋子サンだったのである。

Original Issue:2023/03/12 掲載記事をアップデート



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