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「大工不足」解決の鍵は職人学校?

TBSラジオ

全国で「空き家」が増えていて問題になっていますが、「コストをかけずに、自分の手で直して住んでみたい」というニーズも増えていて、初心者向けの講座が人気のようです。

「半人前大工」の育成講座が人気

詳しいお話を、神戸市にある合同会社廃屋の丸山 僚介さんに聞きました。

合同会社廃屋 丸山 僚介さん

「半人前大工育成講座」っていうのを開催していまして、例えば大工さんに電動工具の使い方を学びましょうというので、「丸ノコ」っていう電動工具を初めて触ってみましょうとか。「インパクトドライバー」といってネジを打つための道具ですね、これを実際に使ってみましょうとか。あとは「左官」ですかね、壁に対して土を塗って平らな壁を作ると。そういった作業をするワークショップもやってますね。

もう完全に素人でウェルカムしています。医療関係ですとか、編集者でパソコンとか本読むの好きなだけなんですけどっていう方ですとか、本当に多岐にわたる。

「一人前」ではなく「半人前」を目指す講座。アパートや一軒家を一から建てるのは、専門的な技術が必要ですが、「壁を塗り替えたり、簡単な床の補修をする程度の技術を身につけたい」という人のための講座が人気で、実際に神戸市内にある古民家を使って、木材を切ったりビスを打ったりしながら実践形式で学んでいきます。

1回あたり、およそ3000円。去年は全10回開催し、これまでおよそ150人が参加していて女性の参加者も多いようで、次回は9月14日に「床を作るワークショップ」が予定されています。

「見て覚えろ」は限界。マルチな職人育成学校

自宅だけでなく、経営している喫茶店などを自分で改装したいという声も少なくないようですが、一方で、半人前でなく、一人前の職人さんの育成の仕方にも、新しい動きがありました。千葉県の工務店「ハウジング重兵衛」の、菅谷 重貴さんのお話です。

ハウジング重兵衛 菅谷 重貴さん

「ジャパン・マルチクラフター・アカデミー」という学校を開きました。大工の仕事もできるし、設備の仕事もできるし、電気の仕事もできると。そういう色んな仕事ができる人を育てる。小学校の「廃校」を利活用してやってます。

例えば、木を切るのこぎりとかを持ったことない人とかもいますし、クギ一つたことない人もいるので、そういう基礎トレーニングをするんですけど。

実際のマンションの一部屋とか、戸建の一階部分を模したブースがあるんですよね。「住宅ブース」っていうのがあって、そこで「ピンポーン」ってインターホン押して入ってくんですけど、「今日、何々工事をさせていただきますハウジング重兵衛の〇〇です。今日はトイレの脱着工事をさせていただくために来ました」みたいな感じで、ロールプレイングも全部含めて、テストを行う。それで、100点満点中90点以上じゃないと卒業できない。

学校で泊まり込みです。

今年3月にできたばかりの、職人の育成学校。特別な資格が得られるわけではないが、千葉県・香取市の「元小学校」に、男子寮、女子寮を作って、寝泊まりしながら、1ヶ月間学んでいきます。

現状、「水回りベーシックコース」があって、「古いトイレを壊して新しいものにつけかえるトイレの脱着工事」と、「接客」のノウハウを体系的に学ぶことができます(10月から第4期がスタート)。

やはり、これまで職人の世界では当たり前とされてきた「見て覚えろ」というやり方では時間がかかってしまい、若手が一人前になる前に離職して問題だったそうですが、こちらの学校では教え方が均一なので、卒業後、工務店や建設会社で即戦力として活躍できます。

職人不足なのに、空き家などの中古物件のリフォーム需要が増えている

ただ、こうした新しい「講座」や「学校」が増えている背景には、業界全体が抱える深刻な課題があるようです。

ハウジング重兵衛 菅谷 重貴さん

今、新築を建てる人っていうのが本当に減っていて。うちも新築もやってるんですけど。

だいたい一棟単価で、300万~400万くらい上がってる、コロナ前と後で。2000万の物件が2300万、同じ家を建てようと思ったらかかる。

キッチンとかトイレとかいったって、この4年間で何回値上げしてくれたんだ。多分年1回以上、下手したら値上げしてますんで、メーカーも。

なので、建てられる人が減ってきてるんですよ。そうすると、「中古で、ある程度まだリフォームしたら住める」、というような需要はこれから増えてくると思ってます。

なおかつ、生活してれば、今までもトイレ詰まった経験あるんじゃないかなと思うんですけど。

台風や震災が起きたりすると必ず、住まいの問題は、大きな課題。

「新築を建てる人が少なくなったから、職人いらないよね」ってことにはならないと思います。

物価高もあって、新築の購入はなかなか手が出せなくなってきていますが、反対に、空き家などをリフォームして住み続けたい人は増加傾向にあるようです。

ただし、建築業界は「大工不足」も深刻で、かつて40年前はおよそ90万人いた大工さんが、現在は30万人を下回っているようです。職人の高齢化も進んでいく中で、業界全体で育成方法が見直される時期に差し掛かっているのかもしれません。

(TBSラジオ『森本毅郎・スタンバイ!』取材:田中ひとみ)

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