鰹節はヨーロッパに輸出してはダメ 燻製の際に付着する物質がEUのルール上アウト?
日本食に欠かせない大事な「出汁の素」鰹節。しかし長らく、これを輸出することができないでいる地域があります。
欧州が鰹節を受け入れなかったワケとは
和食の三大うまみといえば「グルタミン酸」「イノシン酸」「グアニル酸」。それぞれの原料となる食材の代表が「昆布」「鰹節」「椎茸」です。
世界で和食の人気が高まるにつれ、これらの食材の海外における需要も増え、輸出量が増えているといいます。しかしこのなかで、国外の輸出に大きなハードルがあるものがあります。それが鰹節です。
鰹節は長い間、EU諸国に対して輸出することができませんでした。その理由は、鰹節の製法にあります。鰹節は加熱したカツオを風乾、燻製、微生物の作用を用いてカチカチに乾燥させるのですが、燻製の際に燻煙由来で付着する物質が、EUのルール上食品に含まれていてはいけないものだったのです。
なぜ可能になったのか
しかしこの「輸出禁止」、まもなく解消されるかもしれません。というのも現在、国内で「EUの規定をクリアした鰹節」が開発されているからです。
鹿児島県水産技術センターで開発されたこの鰹節は、製造過程で乾燥機を用いることで、燻製乾燥の時間を短くしています。そうすることで件の物質が付着する量をほぼゼロにすることができます。
気になるのは味ですが、一般的なものと比べやや風味・味に弱さはあるものの、鰹節として利用するには十二分な品質であるといいます。
インド洋の鰹節「モルディブフィッシュ」
そういうわけで無事に世界を席巻する途が開けつつある鰹節ですが、実は海外にも鰹節的なものは存在します。
最も有名なのはモルディブで作られている「モルディブフィッシュ」でしょう。インド洋に浮かぶ島国モルディブでは、古くから沖合を回遊するカツオの水揚げが多く、これを煮てから燻製し、乾燥させて保存食に加工しました。日本の鰹節とも極めてよく似ていますが、互いに関係して生まれたものかどうかははっきりしないそうです。
このモルディブフィッシュは、近隣のスリランカやインド南部に輸出され、これらの国で欠かせない食材となっています。スリランカのカレーはモルディブフィッシュのダシが効いているため「日本人が食べるとホッとする味」と言われています。
<脇本 哲朗/サカナ研究所>