卒乳の時期とスムーズなやり方とは? ~赤ちゃんが生まれたらやるべきこと(20)~
卒乳とは、赤ちゃんがおっぱい(ミルク)を欲しがらなくなり、ママやパパが授乳を“卒業”すること。特に母乳育児をしてきたママにとっては、身体的にも感情的にも大きな変化を伴うこともあり、子育てにとっても重要な節目なることを意味します。
本記事では、卒乳の適切な時期、卒乳を始めるためのサイン、スムーズに卒乳する方法についてまとめています。卒乳を控えたママ、そしてパートナーさんにぜひ、読んでいただきたい内容です。
目次卒乳のタイミングは赤ちゃんによって違います卒乳のサインとスムーズな進め方ママの心とからだのタイミングも大切です
卒乳のタイミングは赤ちゃんによって違います
生まれて数か月は、成長に必要なすべての栄養をおっぱいやミルクからとっていた赤ちゃん。離乳食が進んでも、授乳はスキンシップとして大きな意味をもっており、赤ちゃんは栄養を摂取すると同時に安心感や満足感を得ています。
だからこそ授乳をやめることは、簡単なことではありません。
かつては、離乳食が進んだら大人が時期を決めておっぱいやミルクを与えるのをやめる「断乳」が一般的でした。しかし最近は、赤ちゃんがおっぱいや哺乳瓶から離れていくのを待つ「卒乳」というやり方をとるご家庭が多いようです。
卒乳を開始する適切な時期は、母乳かミルクかによって大きく異なります。
世界保健機関(WHO)の母乳育児のガイドラインによると「適切な食事を補いながら2才以上まで母乳を続けること」を推奨しています。もちろん、保育園に通うなどの家庭の状況、ママが授乳をし続けることがつらい、赤ちゃん自身が母乳を欲しなくなる等々、事情はさまざまなので、各ご家庭の事情に合わせて卒乳時期を決めるのがいいでしょう。
一方ミルクの場合は、おおよそ1才が卒乳の目安となります。ですので、1才を迎える頃から徐々に卒乳に向けた「練習」をしておくといいでしょう。
母乳にせよ、ミルクにせよ卒乳時期はまちまち。1歳になる前に卒乳できる子もいれば、大人と同じような食事を取るようになった3歳前後でもまだ飲み続ける子もいます。もちろん早いからいい、長く飲んだほうが望ましい、というものでもありませんので、赤ちゃんの様子やママの体調を見ながら、最適な時期をご自身で決めてください。
卒乳のサインとスムーズな進め方
赤ちゃんの卒乳の準備ができているかは、次の3つのポイントで判断します。
赤ちゃんが母乳やミルクを欲しがる回数が自然と減少し、授乳に対する興味が薄れてきている場合、卒乳の準備ができている可能性もあります。またおっぱいやミルクより、固形食への興味が強くあらわれはじめたら、卒乳を考えてもいい兆候といえます。自らで食べ物を手に取ったり、さまざまな固形食に興味を示したりすることは、赤ちゃんが“新しい食事”に適応している証でもあります。
また赤ちゃんが牛乳やフォローアップミルクなど水分を、哺乳瓶を使わないでも摂れるようになっていること、体調がいいことも重要なポイントです。加えてママにも乳腺炎などの、おっぱいのトラブルがないことも、卒乳をしていいサインとなります。
授乳の時間は、心を満たし、ママやパパからの愛情を得られる大切なひととき。ですから、卒乳のタイミングは、周りがやめはじめているからとか、赤ちゃんが離乳食を食べていて栄養も足りているから、という理由だけでなく、赤ちゃんとママの気持ちの準備が整っているかどうかも大切です。
卒乳はゆっくり焦らず進めましょう
一般的にミルクよりも難しいとされる母乳での卒乳。スムーズに進めるためには、赤ちゃんにもママにも無理がないように、事前準備から徐々に始めましょう。そして1か月ぐらいかけてあせらずゆっくり進めていきます。
まずは卒乳の初期段階に注意すべきポイントから紹介します。
1.言葉で伝える
突然授乳をやめるのではなく「大きくなったら、みんなおっぱいとバイバイするんだよ。○○ちゃんもできるかな」などと卒乳することを言い聞かせてみましょう。「あと○回寝たらバイバイね」と親子で目標を立てるのもいいですね。
2.徐々に授乳回数・量を減らす
様子を見ながら、徐々に授乳回数を減らしていきましょう。まず離乳食の後の授乳の時間を短くしていきましょう。それまで10分あげていたら、8分で切り上げる。それで大丈夫なら次の日は7分、その次の日は6分という具合に。授乳量が減ると母乳の分泌量が減ってくるママもいます。食後の授乳時間を短くしても赤ちゃんが気にせず、おっぱいをすんなり離すようなら、その他の授乳時間も同じように減らしていきます。
3.水分不足にも気を付ける
卒乳をスムーズに進めるためには、水分不足にも注意が必要。それまで飲んでいた母乳や粉ミルクの代わりに、牛乳やフォローアップミルク、麦茶などをコップやストローマグで与えるようにしましょう。
4.授乳に頼らない睡眠を習慣化
卒乳のためにはおっぱいに頼らないで眠る練習も必要です。就寝時間の30分ぐらい前からママ、パパとお布団に入ってスキンシップを楽しみ、絵本や子守歌で穏やかな時間をすごす習慣をつけましょう。またいい睡眠ができるよう、昼間にたっぷり体を動かして遊ぶこと、生活リズムを整えておくことも大事です。
5.スキンシップをしっかりと
卒乳のときにはスキンシップ不足にならないように、抱っこしたり、一緒に遊んだりすることを心がけて「ママ(パパ)は〇ちゃんが大好きよ」と愛情をいっぱい伝えてあげましょう。
6.ママのサポートをする
授乳は、ママにとっても至福の時間。どんなママでも、おっぱいをあげられなくなって寂しくなる気持ちは同じです。子どもの成長と思って納得し、ママが前向きな気持ちで卒乳できるよう、パートナーや家族は、ママの寂しさや喪失感に寄り添いつつサポートしてあげてください。
以下、卒乳までの流れを5つのステップでまとめました。これはあくまで「理想」であり、誰もがこのようにいくわけではありません。このようにいかなくても、ママのせいでも、赤ちゃんのせいでもないので、「うちは違ったな」くらいに受け止めておいてください。
Step4まではいったけど、夜の授乳はなかなかやめられない…というご家庭も多いようです。睡眠前の新しいルーティンを取り入れたり、落ち着いた寝室環境を作ることで、赤ちゃんが早く眠りやすい状況を整えることも重要です。また寝かしつけの際には、抱っこや背中をさすってあげるなど、スキンシップで安心させてあげてください。それでもおっぱいがあきらめられずに泣くようなら、まだ赤ちゃんの準備ができていないということ。無理をせず、2~3か月開けて再チャレンジするのがおすすめです。
ママの心とからだのタイミングも大切です
卒乳のプロセスは常にスムーズに進むわけではありません。思っていたとおりに卒乳ができないケースには、どんなことが考えられるでしょうか。
苦い経験のあるママに話を聞きました。
「夜中に目を覚ましておっぱいを欲しがって泣くわが子を見ていたら、かわいそうになって授乳してしまいました。すると次の夜も泣かれてしまい、夜中の授乳だけはやめられませんでした。結局2歳半まで授乳を続けました」(30代ママ)
「わが子におっぱいをあげている時間が大好きだったので、きっぱりやめることができず、幼稚園に入園するまで授乳しました。3歳になると子どもなりに恥ずかしかったようで、お友だちの前では絶対に欲しがりませんでした。今思うと、卒乳が遅くなってかわいそうなことをしたかもしれません」(40代ママ)
この2人に共通しているのは、ママの心の準備ができていなかった点。「卒乳が遅くなってかわいそうなことをした」と語るママですが、それは気にする必要はないですよ。卒乳は急ぐ必要はないので、ママが授乳をやめてもいいな、というタイミングまで待つことが大切です。
母乳のママは乳腺炎にも気をつけて
母乳のママの場合、おっぱいが張って我慢できなかったということもあるようです。つまりやめたくても、やめられないというケース。
授乳の量を減らすと母乳の分泌も少なくなることが多いのですが、おっぱいがパンパンになってしまう場合は、お風呂の時間に搾乳しましょう。一日に何度も搾乳するとそれが刺激になってまた母乳が作られてしまうので、搾乳しすぎないように気をつけることも大切です。
卒乳後、おっぱいにしこりができて痛いようであれば、乳腺炎のおそれがあります。病院で母乳マッサージをしてもらうなど治療を受けましょう。乳腺が詰まりやすくなる乳製品や糖分、油分の多い食品を控えることも忘れないで。
卒乳は赤ちゃんにとって大きな変化になるだけでなく、授乳をやめたママの体はホルモンバランスが大きく崩れるため、疲れやすくなるなど不調をきたすこともあります。そのため、パパの協力も欠かせません。あせらずよいタイミングを見計らってはじめてみましょう。
生活環境の変化の時期には避けた方がいいかも
引っ越しや保育園などへの入園で環境が変わる時期はママも赤ちゃんもストレスが大きいので、卒乳を避けたほうがいいでしょう。仕事復帰のためなどママの事情で卒乳しなくてはいけない赤ちゃんもいます。そんな場合でも、いきなり授乳をやめるのではなく、少しずつ進めていくと楽にできるでしょう。
卒乳する時期、卒乳までにかかる時間は赤ちゃんによって違います。無理のないときに、無理のない方法で進め、一回で卒乳が完了しなくても、またトライすればいいと思って、その子のペースを大切にし、気長に取り組みましょう。
卒乳はママ・パパと赤ちゃんにとって、ひとつの大きな節目。授乳という、かけがえのない時間が終わる寂しさはありますが、ママとパパの愛情をいっぱい感じて、日々すくすくと成長している赤ちゃんの背中をそっと押してあげられるといいですね。