【幼児期から始める性教育】子どもに伝えたいこと＆親たちのギモンに専門家が答えます
必要なこととは分かっていても、何をどう伝えたらいいの分からない…。そのモヤモヤ、専門家に解きほぐしてもらいましょう。
宮原由紀さん
性教育の専門サイト「命育」の代表。メディア・エンタメ企業を約15年経験した後、独立。クリエイター仲間と「命育」を2019年に開設し、サイト運営の他、講師としても活躍。3児の母。性教育の専門サイト「命育」ホームページ／https://meiiku.com/
幼児期からの「性教育」どう伝える？どう答える？
1.子どもの興味関心に寄り添い誠実に答える
性教育というと「性的な話を子どもに話すのはちょっと…」とためらう方もいらっしゃるかと思いますが、そんなに身構えなくても大丈夫です。まずは、日常の中で自然に始められることからトライしてみましょう。
例えばお風呂の中。「ここはおっぱいだね。胸とも言うよ」「おちんちんはペニスという名前もあるんだよ」など、体の部位の名前を教えることも性教育。
また、体の事について書かれている絵本を一緒に読んだり、テレビや動画に出てきたキーワードをもとに話をしたりするのもよいでしょう。幼児期の子どもは好奇心が旺盛で、自分にとって身近な体について「なんで？どうして？」と聞くのが大好きです。
大事なのは、どんな質問にも誠実に答えること。ドキッとするようなことを言われても、はぐらかしたり、怒ったりしないことが大切です。
2.調べてから答えても遅くはない
とはいえ、答えにくい質問をされることがあるのも事実。
「私ってどこから生まれてきたの？」と聞かれた時に、性教育というキーワードが立ちはだかり「卵子や精子、セックスのことまで話さなきゃダメなのかしら？」などと考えてしまいがちですが、一問一答スタイルでOK。どこから生まれてきたのかを聞かれたら、「お母さんの腟（赤ちゃんの通り道）だよ」だけでも十分。さらに子どもから質問が続き、少し説明が難しいなと思ったら、「いったん考えさせてね」と間を置くのも一つの手です。
残念ながら、私たち大人世代の多くがしっかりとした性教育を受けてきていないわけですから、うまく説明できないことがあっても当然です。自分なりに調べてから対応しても遅くはありません。親御さん自身が、性に対する知識を改めて深めていくことで「自分を大切にできるようになった」と思うことも少なくありません。
3.「話す」だけでなく日常の行動も性教育の一つ
「話をする」ことだけが性教育ではありません。
例えば、子どものオムツを替える時。「今からオムツを替えようね」と一声掛けてからオムツを脱がす。子どもがかわいい行動をした時に、思わず頬にキスしたくなっても「ほっぺにチュッてしてもいい？」と聞いてからキスをする。こういった親の行動によって「自分の体は自分のもの、人の体は人のもの」という境界意識が育まれ、「プライベートゾーン（胸、お尻、性器、口）」の理解も自然と深まります。
そしてそれが、性的な行為を行うことへの同意「性的同意」の意味を理解するための土台にもなっていくでしょう。
4.家庭内で性の話題をタブーにしない
インターネットを介せば、子どもも簡単に性的コンテンツに触れられる時代。
また、多様な性、生き方を認め合うことが当たり前の今、子育てをしていれば必ず性教育の必要性に迫られる時が来ます。月経が始まった時、精通が起こった時。また、子どもが性トラブルに直面することもあるかもしれません。
そんな時、家庭内で性の話題がタブーになっていると、子どもが誰にも相談できずに抱え込んでしまったり、ネットでゆがんだ情報を得てしまう、SNS
性の話は恥ずかしいことではなく、命についての語らい。ぜひ、ポジティブなメッセージを子どもに伝えていってあげてほしいと思います。
（取材・文／高橋顕子）
ママ読者が知りたい「子どもの性のギモン」こんな時どうしたら？
Q.勃起や自慰行為…男の子の性器に関するケアはどうしたら？
A.まず勃起についてですが、男の子ってママのおなかの中にいる時から勃起するらしく、それは性欲とは全く関係がありません。なので、もしお子さんに「どうしてこうなるの？」と聞かれたら、体の仕組みとして伝えればいいと思います。後は、絵本を見ながら性器の仕組みを話すのもいいですね。
それから自慰行為ですが、保護者が理解しておくべき点は、幼児期の自慰行為は性欲を伴わないということ。癖のようなものだったり、触ると気持ちが落ち着くから触っているだけだったり。その行為自体は全く恥ずかしいものでもないですし、悪いことでもないのですが、すごくプライベートな行為なので、人前ではやらない、それから性器自体とてもデリケートなのできれいな手で優しく触る、など約束事だけを伝えて、特にやめさせる必要はないと思います。
こういった話はパパの方が…と思われる方もいらっしゃるかもしれませんが、幼少期に性の話を伝えるのに性別は関係なく、それよりも信頼できる大人が教えているかどうかが大事なので、パパママ関わらず教えていただければと思います。
Q.お友達にキスしちゃう…
A.キスしたいと思っても、相手がどう思っているかが重要なので、相手の気持ちを確認する「同意」が大事。口へのキスは衛生的な問題もあるので、そこの判断はご家庭によって変わってくるとは思いますが、大好きなお友達同士であってもいきなりするのはダメ。
まずは、ご自身のお子さんにキスをする前に「キスしてもいい？」と聞いて、「いいよ」と言われたらする、「今はイヤ」と言われたら、しないを徹底しましょう。そうすることで、相手に同意を得てからすること、自分の体のことは自分で決めていいということが意識的に備わっていくからです。
Q.ペニスやヴァギナといった言葉を教えると公共の場で言いそうで心配…
A.子どもってダメって言っても言っちゃうんですよね(笑)。ただ、その言葉自体は悪い言葉ではないので、タブー視するのではなく、「人前でふざけて言ってもいい言葉なんだっけ？」「それを聞いて嫌な気持ちになる人もいるから、人前で堂々と話してもいいのかな？」など、言うたびに繰り返し伝えていくことが大切です。
Q.「男同士でもキスしてもいいの？結婚できるの？」と聞かれたら？
A.好きになる性は異性だけとは決まっていないので、男女のカップルだけではない、ということを伝えましょう。制度の話として「日本では結婚はできないけど、世界には同性カップルが結婚できる国があるんだよ」と、話してみるのもいいかと思います。
今は、同性カップルの動画チャンネルなどもあるので、そういった動画をお子さんと一緒に見たり、多様な家族やカップルが描かれた絵本を読んだりして、性の多様性を伝えていってみてください。
幼児期におすすめの性教育絵本！宮原さんに聞きました
『だいじ だいじ ど～こだ？』発行／大泉書店
プライベートゾーンについて書かれており、性教育の初めの一歩にぴったりの一冊。登場する子どもの性別が分からないようになっているので、男女問わず読んでいただけます。
『だいじ だいじ ど～こだ？』
著者／遠見才希子
絵／川原瑞丸（絵）
発行／大泉書店
『ようこそ！あかちゃん』発行／大月書店
多様性を伝えるならこの一冊。体のこと、性行為や妊娠出産など、あらゆる命の始まりの多様性が書かれています。イラストもアート的でいやらしさを感じないのも良いところ。
『ようこそ！あかちゃん』
著者／レイチェル グリーナー
絵／クレア オーウェン
発行／大月書店
『あ！そうなんだ！性と生』発行／エイデル研究所
性教育絵本の先駆けともいえる一冊。性交渉はイラストを用いてしっかりと描いているので、詳しく伝えたい人にとてもおすすめです。他にも性器や月経なども書かれており、幼児期だけでなく小学生にも使えます。
『あ！そうなんだ！性と生』
著者／浅井春夫、安達倭雅子、北山ひと美、中野久恵、星野恵
絵／勝部真規子
発行／エイデル研究所
性の会話をうながすグッズ「お風呂ポスター」
小児科専門医の工藤 紀子さん監修のお風呂ポスターは、クイズ感覚で遊びながら子どもが自分の「からだ」や「プライベートゾーン」を知ることができます。お風呂の時間に体を洗いながら、また湯船に浸かりながら、このポスターを使って体のことを話してみませんか？
お風呂ポスター「からだ」「プライベートゾーン」2枚セット
税込1540円
オンラインサイト／https://meiiku.com/goods/meiikugoods02/
