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3季ぶりJ1に挑む清水エスパルスのDF吉田豊(静岡学園高出身)プロ18年目「まだまだ日々成長したい」

アットエス

清水のDF吉田が34歳になって思うこと


【スポーツライター・望月文夫】
3季ぶりにJ1復帰した清水が、年明け6日に今季を始動。2日後には新加入した選手とスタッフが新体制発表に臨み、2月16日の東京ヴェルディ戦で幕開けする新シーズンに向け本格的に動き出した。

J1昇格で期待が高まる中、より厳しさを増す戦いに不可欠な要素の一つが、経験値の高いベテラン選手の存在だろう。その一人が今年プロ18年目を迎えた34歳DF吉田豊だ。

ベテランは始動初日の走り込みから、集団の先頭を競う若手たちに食らいつくように淡々と追い込み、見守るサポーターから「ユタカ頼むぞ!」の声に軽い会釈と手を挙げて応え、いざ出陣へ気合を入れた。


吉田にとってもJ1は3季ぶりだ。「またチャレンジできることが楽しみ。毎年少しずつ成長してきたところを見せたい」と自身を奮い立たせると、始動から10日目の初の対外試合、岳南Fモスペリオ(東海社会人リーグ)戦に出場。左サイドバックで30分ピッチに立ち、堅実な守備に加え攻撃でも深い位置から絶妙クロスを供給するなど健在ぶりをアピールした。

「必要な時は言葉でも伝える」

静岡学園高出身の吉田は、2009年に甲府でプロ生活をスタートさせ、2012年に清水入り。2015年からは鳥栖と名古屋でプレーし、清水が2度目のJ2降格となった一昨年再加入した。「1年でのJ1復帰に貢献したい」と臨んだが、あの国立の悪夢で1年目は昇格を逃した。

そして33歳で迎えた昨年、序盤から白星先行で突き進むオレンジ軍団を支え、熾烈なポジション争いの中でも29試合に出場。それまでの「経験を背中(プレー)で伝える」というスタンスから一歩踏み出し、「必要な時は言葉でも伝える」と背中と口で若手をけん引し昇格に貢献した。

J1通算350試合出場まであと12

ここまでJ1出場338試合、J2との通算出場459試合。ともに現チーム最多を積み上げたが、「20代の頃は30歳ちょっとくらいで引退か」と思っていたという。「若い頃より疲労回復やスピードなど体力面で徐々に衰えを感じ始めていた」からだ。

だが、「そこをキャリアでカバーしようと、30歳を過ぎてから年ごとにプレーを変化させることで成長もできた」という。適応力で第一線を維持しながら、体力面については「1日1日の練習を100%で取り組み、(ケガと)ギリギリのところを攻めた」。毎日が戦いだった。

さらに他の選手なら離脱するレベルのケガでも「試合で出番があるなら休まない。一度離脱して完治させてから出場すればいいなんて思っても、プロはそんなに甘くない」と強行出場を続けてきた。昨年も2度の肉離れを経験したが、一度も休まなかったという。

J1通算350試合出場まであと12。今季の目標になりそうだが、34歳のベテランは「そう簡単じゃないと思う。まずは1日1日の練習、1試合1試合を全力でやること。それがまた次の試合につながって、数字はその結果」とこれまでのスタンスの継続を強調。「まだまだ日々成長したいから、そこが目標になる。現役を続けている以上は、そういう気持ちをもたないともったいないから」と締めくくった。

秋葉監督「損得勘定なく、チームのことを考えてくれる」

今季も左右のサイドバックが主戦場となるが、左サイドでは山原怜音、右では北爪健吾や高木践らとのポジション争いが待つ。ライバルたちにとっては「守備のポジショニングや危機察知が素晴らしい」と手本になる存在で、吉田は「もちろん試合には出たいけど、チームとして少しでも上(の順位)を狙う以上は互いに切磋琢磨してレベルアップできればいい」とまずは協力して最低目標のJ1残留を狙う。

後輩選手だけでなく、秋葉忠宏監督からも信頼の厚い言葉が続く。「自分の損得勘定ではなく、チームがどうしたら良くなるかを考えて、チーム全体にいろいろと意見を言ってくれる。指導者としてありがたい存在だし、強いチームになるためには大事なことだ」と。

2月に35歳を迎えるスキンヘッドにひげを蓄えた強面のベテランが、周囲の厚い信頼と期待を後押しにJ1に挑む。チームも自身をもさらに高みへと導くことができるか、新しいシーズンに期待が高まる。【スポーツライター・望月文夫】
1958年静岡市生まれ。出版社時代に編集記者としてサッカー誌『ストライカー』を創刊。その後フリーとなり、サッカー誌『サッカーグランプリ』、スポーツ誌『ナンバー』、スポーツ新聞などにも長く執筆。テレビ局のスポーツイベント、IT企業のスポーツサイトにも参加し、サッカー、陸上を中心に取材歴は43年目に突入。

 

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