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連載【UNDERCURRENT / 海と街と山】#2 steam ——大自然で整う

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連載【UNDERCURRENT / 海と街と山】#2 steam ——大自然で整う

連載【UNDERCURRENT / 海と街と山】は、富山県の山奥に移住した夫婦の暮らしをベースに、海や川での釣り、森に囲まれたテントサウナのようなアウトドアでの遊び、富山の調子のいい名店などを紹介しながら、表には出ない深層的な田舎暮らしのリアルや想いを掘り下げる不定期コラムです。

#2 steam ——大自然で整う

自然の中で遊ぶ事はカルチャーだ。

地方に住む最大の魅力のひとつは、なんといっても自然の中に身を置いて遊べるということだろう。

私も例に漏れず、自然の中で遊ぶことが好きだ。

自然の中で遊ぶことができる環境に感謝し、今日も私は仲間と“テントサウナ”でアーシング(※1)していく。

 

今年の冬は、まるで雪が少ない(最強・最長寒波が幾度となく到来することは、この時はまだ知らない)。

私達夫婦が山に移り住んでからというもの、めっきり暖冬らしい。

ほっとするような、少しどこか寂しいような、なんとも言えない感情だ。

 

真っ白な雪の中でのテントサウナは、まるでサウナ発祥の地フィンランドのようで(もちろん想像だ)最高だが、この日は富山県としては珍しく冬晴れで雲一つなく、雪も少ない。

雪が少ないと冬場でも川辺までエントリーしやすく、これもまた最高なので良しとしよう。

数年前に仲間をそそのかし、このグッドツールをゲットしてもらってからというもの、お世話になりっぱなしである。

そんな今日もいつもの決まった面々で設営していく。

方角を参考に太陽の動き方を見極め、足場を均し、テントを設営する。さすがの手際の良さ。手慣れたものだ。

 

エントリーする川からほど近くの安定した場所に某アウトドアメーカーのインフィニティチェアを配置する。

インフィニティ。いい響きだ。

このアウトドアツールを開発した方とテントサウナの購入をそそのかしてしまった彼には、足を向けては整えない。

 

そうこうしていると、煙突からは熱気ゆらめいており、急いでテント内に入ると温度計は100℃を指していた。

湿度が低く乾燥していたので、川の水で煮出したほうじ茶をストーブの上で熱々に熱されたストーンに優しくかける。

ほうじ茶ロウリュウ。

熱い蒸気が上から降りてくるのと同時に、ほうじ茶の芳しい香りがテント内に広がって私達の体を纏い、エンドルフィンの分泌を促してくる。

 

限界を迎えてテントから出ると、待ち構えるは天然の水風呂。

水温は間違いなくシングル(※2)、サウナの中で追い込んでいないとなかなか厳しい温度感だ。

キンキンに冷えた天然の水風呂で、熱のこもった身体を冷ますのに時間はかからなかった。

 

このあとは時間との勝負。

ゴールデンタイムを逃してはならないと、アスリートさながら身体を素早く拭き上げ、インフィニティチェアへ急ぐ。

 

チェアの座面を倒すと、山と山の間の雲一つない空がなんとも幸福感を高めた。

そして、俗に言う“トランス状態”なるもののせいなのか、上を通った飛行機がいささかまっすぐに飛んでいないようにさえ見える。

ほうじ茶の蒸気で蒸され、天然の水風呂で引き締められて無事アーシングを完遂した今日は、地元猟師の方から頂いた猪のバラ肉を『ジビエルーロー飯』と昇華させて妻と一杯やろうと心に決めた。

※1 アーシング:人間が自然と直接触れ合うことで、体内の電気バランスを整え、本来の機能を取り戻す健康法のこと。

※2 シングル:水温が10℃未満、1桁台(1~9℃)であること。

 

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