厚労省がスポットワークの労務管理に注意喚起 タイミーは求人応募時点での契約成立に対応
単発・短時間で働ける「スポットワーク」の利用が広がる中、厚生労働省は7月4日、業界団体である一般社団法人スポットワーク協会(東京都中央区)に対して、企業による適切な労務管理を求める通知を行った。
これを受け、スポットワーク仲介アプリを運営する各社では、契約成立のタイミングやキャンセル規定の見直しが進められている。すでに業界大手のタイミー(東京都港区)は、9月からサービス運営方針の変更を公表しており、スポットワーカーを雇用する企業にとっても対応が求められそうだ。
労働条件のトラブル防止へ 厚労省がスポットワーク利用企業に通知
厚生労働省は7月4日、スポットワーク協会に対し、「スポットワークにおける適切な労務管理等について」と題した通知を行った。
背景には、全国の労働局などに寄せられている、賃金の不払い、求人内容と実際の労働条件の相違といった労働者からの相談がある。通知では、スポットワークが直接雇用の形式で行われるものであることを前提に、企業(使用者)が労働関係法令を遵守する必要性を改めて強調した。
同省はこの通知とともに、使用者向けと労働者向けの2種類のリーフレットも公表。労働契約の成立時点の理解、キャンセル時の取り扱い、労働条件通知の交付義務、休業手当の支払い要件などを具体的に示し、スポットワークにかかわる全ての関係者に適正な運用を求めている。
タイミー、応募時点での契約成立を採用 9月から運用開始
この通知を受けて、スポットワーク仲介アプリを運営するタイミーは、サービス方針の見直しを発表した。9月1日からは、これまでの「勤務当日のチェックイン時に契約が成立する」との運用を改め、「求人への応募完了時点で労働契約が成立する」という考え方に基づいたサービス提供に移行する。
この契約は、あらかじめ使用者と労働者の双方が契約解除の条件(解約権)を持つ「解約権留保付労働契約」とされ、応募が完了した時点で契約が有効になる。これにより、通勤中の災害なども「通勤災害」として労災補償の対象になり得るなど、労働者保護の強化にもつながるとされている。
使用者側のキャンセル制限や休業手当対応など、実務への影響も
新たな運用により、使用者側からのキャンセル(いわゆるマッチングの取り消し)は、原則として行えなくなる。契約成立後に就労を中止する場合、天災などの不可抗力や、労働者が必要な資格を欠いている場合など、事前に定められた「解約可能事由」に該当するケースを除き、休業手当の支払いが必要となる。これらの条件は、あらかじめ労働条件通知書などに明示する方針が示されている。
一方で、労働者側からのキャンセルに関するペナルティ制度も見直され、ペナルティの発生基準が就労48時間前から24時間前に短縮される。こうしたルール整備により、企業と働き手の双方にとって、より明確な契約管理が求められるようになる。
スポットワークは、繁忙期や急な欠員対応として多くの企業で導入が進んでいる一方で、契約の成り立ちや賃金支払い、労災対応など、従来の雇用形態とは異なる管理が必要とされる。今後は、厚労省の通知内容や業界のガイドラインを踏まえ、使用者側でも制度変更に応じた運用の見直しが求められる場面が増えると想定される。
厚生労働省が作成した「『スポットワーク』の労務管理」は、同省ウェブサイトで確認できる。また、タイミーのサービス運営方針変更のお知らせは、同社公式サイトで確認できる。