歌舞伎町のぼったくり居酒屋、泣き寝入りするしかない理由
先月末、新宿の歌舞伎町で、悪質な客引きが逮捕されたというニュースがありました。そもそも客引き行為自体、条例違反なんですが、今回は焼き鳥チェーンの大手「鳥貴族」の系列店だとウソをついて、お客さんを騙していたということです。
鳥貴族のフリをして「いっぱいなので系列店に案内する」
調べていくと、実際に被害に遭った方にお話を伺うことができました。
ぼったくり被害者：私含めて４人とかでしたかね。歌舞伎町でチェーン店の「鳥貴族」に入ろうと思ったのですが、１人の男性から声をかけられまして、「鳥貴族は満席ですよと。僕、鳥貴族の系列店で働いてるので、そこならすぐご案内できますよ」っていう形で、話をされました。たしかその時は「２時間で飲み放題が、２千円ぐらい」という話をしていて、いいな、ということで、入ることにしました。なんですけど、よくわからない「席料」ですとか、金曜日だから「週末料金」みたいなものが勝手に発生していて、４人で行って８千円ですというところが、２万４千円ぐらいかかっちゃったかなっていう…。まぁ、払わないと店出られませんし、結局は払いました。最悪だったな、の一言ですね。
新宿歌舞伎町にある、「客引きは条例違反です」の看板。商店街に流れる音声アナウンスでも、客引きに対する注意喚起が流れていました。
４人で「８千円」のつもりだったのが、「２万４千円」、とられてしまったケース。この方は数年前、４人で焼き鳥チェーンの「鳥貴族」に向かっていたら、「どこ行くんですか？」と呼び止められたそうです。そしてその場で電話で店に確認するフリをして、「鳥貴族は満席なので、系列店なら案内できます」と言われました。
行った先で感じた違和感が、３つ。
・席に着くと、一人２皿、食事も注文するように強制された。話が違う。
・その一皿一皿が、少しずつ割高で、しかも不味い。例えば、本物の鳥貴族だと、「全品３６０円」とリーズナブルだが、唐揚げや枝豆が、１０００円近く。さらに、一部がまだ凍っているような、冷凍食品らしきものも出てきた。
・会計金額がおかしい。「席料」や「週末料金」が上乗せされて、２万円を超える額を要求された。高圧的な態度に身の危険を感じ、結果、支払ってしまった。
店の目の前で、お客さんを根こそぎ持って行かれた
いまの被害者の方は、鳥貴族の系列店だと思って騙された方なんですが、歌舞伎町には、同じ「鶏」がつく「鶏ヤロー」というお店もあって、こちらも根こそぎお客さんを連れていかれる被害にあっていました。居酒屋「それゆけ！鶏ヤロー」歌舞伎町店の、店長のお話。
「それゆけ！鶏ヤロー」歌舞伎町店・店長：お店の前、入口を塞いでるようにキャッチがたくさんいて、入ろうとするお客さんが通れない状態だったりとか。もうお店の中から見えるので、見えたときには注意しに行ったりとかはあるんですけど、「お前に関係ねだろ」みたい、どっか行きましたねその時は。僕が店長になったのが１年半ほど前、その頃には当たり前のようにいた。「鶏ヤローは一切、外で声掛けしていません」って、お店の窓に貼っていたりとか、警察に何度も通報したりとかしてたんですけど、「やっとか」って感じです正直。売り上げが下がってしまって困るというよりは、鶏ヤローの来ようとしてくださってたお客さんが、被害に遭ってたっていう方への苛立ちの方が強いですね。
「それゆけ！鶏ヤロー！」歌舞伎町店
客引き対策のため、店の窓に「鶏ヤローは一切外で声掛けしてません！」の文字
こちらの店では２年以上、迷惑していたようです。ただ、先日逮捕されてからは、「客引きは多少、減った」と話していたので、平日の夜、行ってみたんですが…、一人、客引きらしき人物を見かけました（前掛けをした男性）。怪しまれて逃げられて、話は聞けなかったのですが、やはりゼロにはなっていないようです。
客引きは、強い意志で「無視」してOK
店長も、「これ以上続くようなら、警備員を雇って監視するしかない」と話していましたが、私たちお客さんの側は、勝ち目はあるのか？自己防衛しかできないのか？歌舞伎町のぼったくり被害に詳しい、弁護士の青島 克行さんに伺いました。
弁護士・青島 克行さん：結局、「都会の繁華街」なので、人は毎日入れ替わってるって形で。で、警察は警察で、「必ずこの店を検挙しよう」と監視してるわけではないので、言葉は悪いですけど、本当に悪い人たちが悪いことしようと思えば、「一定期間は、やり放題」。しかも、こちらの事務所に被害報告で多く挙がるのは、「数千とか数万円のつもりだったのに、２０万とか３０万円とかの請求をされたっていうケース」が大半で、おそらくそれぐらいの金額だと弁護士にも相談したい！とかそういうモチベーションになってくるんだと思うんですけど、「数千円のつもりが、２万円でした」というレベルの規模間だと、わざわざ人に相談しようとか、そういう話に行きにくい。「じゃあ、泣き寝入りします」っていう、そういう決断になる人が大半ですね。だから、被害自体はゼロにならないし、こういうことをやる人自体も本当にゼロにならないんですけど、我々が賢くなるしかなくて。もうとにかく客引きについて行きさえしなければ被害は受けないっていうのは、これは本当、真実なんですよね。なのでとにかく「キャッチに声かけられても無視してもいいんだ！」っていう、それぐらい強い気持ちを持っていた方が、いいですね。
まずは、とにかくついていかないこと！もし、ついていってしまっても、納得できない金額であれは、「絶対に払わない」。その上で、お店側が私に払ってほしいのであれば、裁判を起こしてくださいなり、請求書をこちらに送ってくださいなり、伝えて帰るというのが、切り抜け方だそうです。
でも、弁護士費用をかけてまで、数万円を取り戻そうという人もいないので、現状は、多くの人が泣き寝入りしてしまっています。しかも、警察も「ウソをつかれた証拠」が、音声や動画で残っていたりしないと、動きようがないそうで、やはり「自衛すること」が現実的です。
客引きに声をかけられても、心を強く、「無視」！ぜったいに、ついていかないことが大切です。