《市民病院医療事故多発》双方控訴しない意向 科長は執刀医を反訴 来月4日尋問予定
赤穂市民病院での医療過誤をめぐる民事訴訟で、神戸地裁姫路支部が執刀医と赤穂市に対して賠償を命じた判決を受け、原告と被告双方が控訴しない意向を固めたことが23日までにわかった。執刀医と市に連帯して慰謝料など約8888万円の支払いを命じた判決が確定する見通しになった。
判決をめぐっては、牟礼正稔市長が20日の定例会見で「判決に従う」と控訴しない考えを表明したのに続き、執刀医は21日に控訴せず判決を受け入れる意向を代理人弁護士を通じて示した。原告側の代理人弁護士も控訴しない意向を23日までに明らかにした。
このまま期限までに控訴がなければ、判決が確定。市民病院は全国自治体病院協議会の「病院賠償責任保険」に加入しており、一つの医療事故につき1億円(年間上限3億円)まで保険適用できるという。
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一方、専門医試験の受験を妨害されたなどとして、執刀医が上司だった科長と当時の院長、赤穂市を相手取って損害賠償を求めている民事訴訟をめぐり、「虚偽」の訴えにより精神的苦痛を受けたとして、科長が医師に対して慰謝料など330万円の損害賠償を求めて反訴したことがわかった。6月4日に神戸地裁姫路支部で医師と科長、元院長の尋問が予定されている。
執刀医(2021年8月に赤穂市民病院を依願退職)が23年10月に提出した訴状によると、科長によって▽妨害されて血管内治療専門医試験の受験資格を喪失した▽胸ぐらをつかむ、手で頭を殴るなどの暴行が常態化▽階段から突き落とされた―などとし、今月14日に同地裁支部が医師と赤穂市に賠償命令を下した女性患者への医療過誤については「科長の命令に従ったことが原因」と主張。科長に1000万円の賠償を請求している。
これに対し、科長は先月24日付けで反訴。▽受験資格を喪失したのは願書の症例内容に疑義があったから▽医師が科長に対して人格を否定する言葉を出したため胸ぐらをつかんだことが一度だけあったが、殴打したことは一度もない▽階段から落ちたのは医師自らの過失―とし、医療過誤についても命令を否定。「医師の主張自体がすべて虚偽であり、訴えの提起そのものが不法行為に該当する」などと主張している。
医師をめぐっては、神戸地検姫路支部が女性患者への医療過誤における業務上過失傷害罪で昨年12月に在宅起訴。また、同医師をモデルにウェブ漫画『脳外科医 竹田くん』を描いた女性患者の親族が今年3月、漫画が名誉毀損にあたらないことを確認するための裁判を起こしている。