最強のKOキング・山下敬吾九段の素顔――下島陽平のおしえて!先生たち~!【NHK囲碁講座】
NHK『囲碁講座』テキストで好評連載中の「下島陽平のおしえて!先生たち~!」。毎月、下島陽平八段が囲碁界の名だたる先生方にインタビュー。普段は見られない、先生方の素顔に迫ります。
今回は、8月号より山下敬吾九段へのインタビューをご紹介します。
最強のKOキング・山下敬吾─1
史上最強の棋士は誰か。
時代背景や環境も違い、持ち時間からコミまで違うので単純な比較は難しいが、この議論はとても好きである。そんな中、この人も必ず名前が挙がるはず。今回は超大物の登場だ。
山下敬吾九段。
今さら言うまでもないが、幼い頃からずっと注目を浴び、すさまじい実績を残し続けている大棋士である。そんな山下敬吾九段に、恐る恐る質問をさせていただいた。
…が!
手探り感満載の僕の気持ちと対照的に、めちゃくちゃ丁寧な、興味深い答えをたくさんいただいたのである。まず、最初にこんなことを聞いてみた。
―― 小さな頃はどんな子どもでしたか? 囲碁のほかに好きだったことがあれば教えてください!
小さい頃は天才でした(笑)。
碁を覚えたのは5歳のとき、小3ぐらいまでは碁以外に学習塾に通っていました。国語、数学、英語と当時の塾の最終教材だった高校生までの教材を終わらせたようです。今は何も覚えてなく、当時のプリントを見せられてもチンプンカンプンです。好きではありませんでしたが、課題を進めていく快感はあったような気がします
天才なのは囲碁だけじゃなかった…!!
9歳くらいで高校生の教材ってことでしょ!?
次にこんな質問を。
―― これまでにやってきた勉強で、これはやっておいてよかった!というものがあれば教えてください。
詰碁は若いうちにしっかりやっておいてよかったと思います。年々読めなくなってきて、今は昔の貯金だけでなんとかやっています。ただアマチュアの方は嫌いな勉強をするよりも、好きなことを楽しんでやることをお勧めしています。勝つためには詰碁が一番効果的だとは思いますが、趣味で嫌いなことをわざわざやる必要はないと考えています
詰碁…。聞きたくない言葉だが、やはりトップになる人は必ずやっている気がする。続いて…。
―― 院生、またはプロになって、これまでに衝撃を受けた人をベスト3で挙げてください。
3位は緑星学園の先輩、青木紳一さんにします。青木さんとは院生になる前は早碁で、四~五子ぐらいで、よく負かされていたと思います。小2のとき少年少女囲碁大会で優勝したあと、加藤正夫先生、小林光一先生と四子で打たせていただく機会がありましたが、それなりには碁になっていました。それから多少は成長したつもりはあったのに、置石を増やしてもトップ棋士ではない若手棋士に負かされてビックリした記憶があります。
2位は井山裕太さんにします。井山さんが小学2年生で優勝したあとに、同じ2年生優勝同士ということで、何かの企画で打つ機会がありました。自分が小2のときよりも明らかに強く、すごい子がいるなと衝撃を受けした。
1位は梶原武雄先生です。先生の前で並べると、二、三手目で止まりおかしいと言われることがしょっちゅう
山下少年、梶原先生にあることを聞かれて困った!
続きは、9月号で……。
◆『囲碁講座』2024年8月号「下島陽平のおしえて!先生たち~!」より抜粋
◆文:下島陽平八段
◆イラスト:丸山誠司