北海道東部・人口2万人の“町”でどうしてホテルラッシュ?専門家が関心の時代変化
北海道東部の中標津町。
建設中のものも含めると、町内では2024年から2025年にかけて、ホテルやウィークリーマンションが4か所、合わせて145部屋分増える見通しです。
人口わずか2万人ほどの中標津町で、いまなぜホテルやウィークリーマンションが増えているのか?そのワケを深掘りします。
北海道全域でビジネスホテルなどを運営する、帯広市の「アルムシステム」が6月の開業を目指すホテルとウィークリーマンション。
建設のきっかけは、いま町内で進む大手乳業メーカー『明治』の新工場建設工事です。
アルムシステムの清信祐司社長が「工事を請け負ったゼネコンから、50室くらいの宿舎を建てないか?という話がきたのが、最初のきっかけです」と話します。
「当然、工場が集約されるワケですから、合理化されて、こっちに来る単身で来る方の宿泊施設なり、住居なりとして使用していただこうというのが狙いで建てました」
『明治』の新工場は、いまある北海道東部の2つの工場を集約し、2027年3月から稼働する予定です。
この建設に携わる作業員の宿泊施設として、すでに2025年6月の完成から2年間、全客室の利用契約を建設会社と結びました。
当初は、簡易的な宿舎の建設も検討しましたが、工場の完成後も『需要』があると見込んで、本格的な施設を建てることにしました。
その1つが『出張』の需要です。## 今までは日帰りだったけど
「機械や農機具のメンテナンス、不随した運輸業者などの関連産業も一緒に移ってきますよね。2024年問題での労働時間の制約もあって、今までだったら日帰りだったところが宿泊しないといけない」
実はこうした『出張』需要が、北海道だけではなく、全国の地方都市などで高まっていると話すのは、国士舘大学の加藤幸治教授です。
「ビジネス環境の変化、交通体系の変化、ネット環境の進歩などで営業所などの役割が少し下がって、常駐者が減った。でも、仕事としてはあるので、出張対応っていうような形で、人が動くようになってくると、ビジネスホテルの数がぐっと増えるというのはある」
地方の町に常駐する人が減ったことで、都市部からの出張に対する需要が増えているというのです。
中でも、人口が2万人ほどで『市』ではなく、知名度の高い観光施設も少ない中標津町でホテル需要が高まっている背景には、北海道の釧路市や網走市、根室市といった地方都市の中心に位置する”中標津ならではの特徴”があると言います。
中標津モデルとは
国士舘大学の加藤幸治教授が話す中標津ならではの特徴を「珍しいパターン」だと話します。
「ベッドタウン的な機能を中心地に同時に持っている地域としてはなかなか珍しい。夜間人口も昼間人口もそれなりにいて、その両方の側面を持っている。観光客がワッと押し寄せるわけじゃない。それでもホテルが建つということは、やはりビジネス需要の一定の底堅さにホテル業界の方が注目しているのだと思います」
「中標津町ならでは」のホテル建設ラッシュ。
今回、取材した「アルムシステム」のホテルなどは、2年間すでに契約済みですが、以降の出張需要なども見込んだ背景にはこんな地方の『宿』事情もあるようです…
後継者不足で地方の町村で宿泊施設が減少。
大手ビジネスホテルチェーンなどは、人口が少なく、全国的にも有名な観光地などがない町村には進出しないことが多く、宿泊施設が不足しがちです。
VTRでもお話を聞いた、国士舘大学の加藤教授はこうした中標津町の特徴を『中標津モデル』と提唱して以前から、注目しているんです。
中標津モデルとは、中心部の機能とベッドタウンの機能をあわせもちます。
利便性が高いため、中標津から周りの農村に働きに出る人も。
また、周辺の通勤通学と周辺からの通勤、買い物客による交流人口が多いです。
コンパクトな市街地に人が『集住』するこのような特徴が「中標津モデル」ということで、これから人口減少が全国で進む中、1つの地方都市のあり方と言えると加藤教授は話します。
中標津町のホテル建設は、常駐職員の引き上げによる出張の増加など、時代の変化が背景にありました。
これからのマチは、こうした変化をビジネスチャンスとして機敏にとらえていくことが一層求められそうです。
文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい
※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2025年5月14日)の情報に基づきます。