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「突然朝起きられなくなる」“起立性調節障害”を抱えた小6がかなえたお菓子屋さんの夢

Sitakke

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「朝起きられない」と聞くと怠けていると感じるかもしれません。
実は小学生で約5%、中学生で約10%が発症している『起立性調節障害』という病気があります。
そうした病気を抱えながら、小学校6年生の女の子が、お菓子屋さんをオープンするという夢を叶えました。

香ばしい香りが部屋中に立ち込めています。
作っているのは、北田怜奈(きただ・れな)さん。小学校6年生です。

この夏、念願のお菓子屋さんをオープンさせました。

怜奈さんのすぐそばには、椅子が置かれています。

「常にめまいみたいな感じがするから」

そう話す怜奈さんは、小学校3年生の秋、突然、朝ベッドから起きられなくなりました。
原因は『起立性調節障害』。
自律神経が乱れて血圧が下がり、全身の怠さや頭痛など、さまざまな不調を引き起こす病気です。

「地獄だった」

学校に行きたいのに行けない、辛い日々が続きました。

怜奈さんの母親・弥生さんは「朝元気なときは必ず6時前に起きてくる。元気がないと7時過ぎても起きてこなくてLINEで“頭痛い”っていうスタンプが何個も送られてくる」と話します。

そんな苦しい毎日の中で心の支えになったのが、お菓子作りでした。
お菓子屋さんのオープン当日の朝7時。この日は、札幌市内のレンタルキッチンを間借りします。

怜奈さんの夢の舞台を、母の弥生さん、妹の真央さん、祖母、伯母も手伝います。怜奈さんは料理教室に通い、3か月にわたり、試作を重ねてきました。

販売に必要な食品衛生責任者の資格は、母親の弥生さんが取得。
母と娘、二人三脚で準備して来ました。
お店の名前も一緒に決めました。『れなねこのお菓子やさん』。

6種類の焼き菓子のうち、4種類のスコーンを怜奈さんが1人で作ります。目標は、スコーン140個に、ドーナツ50個、合わせて190個です。

計って、混ぜて、成形する。単純に見えますが、集中力が必要です。

『起立性調節障害』の影響で、怜奈さんは一日中起きていることが難しいといいます。朝7時から作業を続けていて、辛そうな表情を見せる怜奈さん。

なぜ、そこまで頑張れるのでしょうか?

「人にあげるものは、丁寧に作りたいし、美味しく作りたい」
「作ってあげたいという気持ちの方が高いから、そこまで疲れない」

夢のお菓子屋さん、いよいよオープン

自分と同じように、体調不良で苦しんでいる人に“お菓子を食べて笑顔になってほしい―”
素材にも、怜奈さんの思いが込められています。

米粉は、小麦粉より消化がいいと言われていて、同じように不調を抱える人たちにも食べてほしいと選びました。

目標としていた190個のお菓子も、無事焼き上がり、あっという間にオープンの時間。

怜奈さんの活動を日ごろから見守っている人たちが、さっそく駆けつけました。
お客さんは、ほとんどが顔見知り。家庭教師の先生に、体操教室の先生も。
それでも緊張しながらも、笑顔で接客します。

「緊張した…もっと量を作れるようにしたい」

怜奈さんにはさらにもう一歩、チャレンジしたいことがありました。


いつ体調が悪くなるかわからないなかでも

およそ1か月ぶりに、レンタルキッチンにやってきた北田怜奈さん。
 
2度目の「お菓子屋さん」オープン日は、3日後です。場所は地元で開かれる「マルシェ」に決まりました。

一度目とは違い、多くのお客さんが初対面の人です。
小学3年生のとき『起立性調節障害』を発症した怜奈さん。
コロナ禍もあり、人とコミュニケーションをとる機会はほとんどありませんでした。

次のマルシェでは、初めて会う人とも交流したいと話す、怜奈さん。

「本番には強い」と気持ちの面では自信がありますが、体調面では不安が…。

弥生さんがその体調を気遣います。

「途中で“できない”っていう身体の状態が、いつ来るかわからないところでのチャレンジなので…」

マルシェ当日は、あいにくの雨模様。たくさんの人がいる会場。初めて会うお客さん。怜奈さんの苦手なものばかりです。

そんな彼女の緊張をほぐしたのは買ってくれた人たちの「笑顔」でした。

残り1時間…、お菓子が順調に売れ、お客さんと交流するにつれて、怜奈さんの表情も柔らかくなっていきます。

「どうぞ!ありがとうございます!」明るい声が響きます。

最後のお客さんを見送り、この日の分は、完売です!

「作るの大変だったけれど、喜んでもらえるなら頑張りたいなと思います」
「初めての人が来て、緊張していたけど途中から楽しくなってきました」

不安の中、諦めずにやりぬいた北田怜奈さん。生きづらさを抱えながらも、彼女の挑戦は続きます。


原因はわかっていない

「起立性調節障害」と診断される子どもは近年増えています。
原因ははっきりしていません。
ただ、運動不足や夜更かしも背景にあるのではないか…と考えられています。

軽症の場合は数か月で改善しますが、登校など日常生活に支障のある場合は、症状が改善するまで2、3年かかる場合もあります

今回、私たちの取材に応じてくれた北田怜奈さんは、自律神経を整えるため、自宅で軽い運動をしたり、漢方薬などを飲んだりしながら、自分のペースで登校しているということです。

北田怜奈さんが、お母さんの弥生さんと二人三脚でオープンさせた、米粉のスコーンとドーナツのお店『れなねこのお菓子やさん』。

スコーンの品揃えは「プレーンスコーン」「アールグレイスコーン」「クランベリースコーン」「ごまスコーン」「チョコスコーン」と5種類で、価格はそれぞれ280円です。そして、ドーナツは「ココナッツチョコドーナツ」(1個280円)となっています。

今のところ、3回目の対面販売がいつになるかは未定ですが、今後もオンラインショップも併用して、月2回ほどのペースでお菓子を販売していくそうです。

詳しい情報は『れなねこのお菓子やさん』のインスタグラムやLINEで発信していくとのことです。

文:HBC報道部
編集:Sitakke編集部あい

※掲載の内容は「今日ドキッ!」放送時(2024年9月27日)の情報に基づきます。

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