乾いた大地、優しい国、野生になりかける食欲。地球三周の自転車旅で味わったもの
大竹まことがパーソナリティを務める「大竹まことゴールデンラジオ」(文化放送・月曜日~金曜日13時~15時30分)、10月30日の放送に旅作家の石田ゆうすけが出演。これまでに海外で味わった食べ物についてまとめたエッセイ『世界の果てまで行って喰う―地球三周の自転車旅―』(発売中)に関して語った。
石田ゆうすけ「(『世界の果てまで行って喰う―地球三周の自転車旅―』は)7年半かけて世界一周した旅と、帰ってきてからも海外にちょくちょく行っていて、それをまとめた本です」
大竹まこと「もう本は何冊も出しているんですね。会社員をしていたけど辞めて、世界一周の旅に出た。なぜ自転車で世界をまわろうと思ったんですか?」
石田「ずっと自転車旅行をやっていて、大学時代に日本一周したんです。次は世界一周、という。あとはよくある話ですけど、せっかく生まれてきたのなら目いっぱい生きたいな、と。いちばん感動が大きい手段だと思ったので」
大竹「感動もありましたが危険な目にも遭いました。下地は沢木耕太郎さんや開高健さんみたいなこと、あっち行って釣りしてみよう、というのも心を動かしたんですか?」
石田「両者とも好きですけど、旅の動機ではありませんでした。旅をして書きたいと思ったのは開高健さんの文章に触れたから、というのはありますね。自分の足で世界、地球を全部まわったらどんな手応えが得られるかな、という純粋な思いでした」
大竹「帰ってくると日本が違った景色に見えましたか?」
石田「『助かった』と思いました。本にも書いてありますが、地球を自分の足でまわっていると7割ぐらいが乾いた大地、という感じで。最も多いときで水を20リットルぐらい持ちました。乾きに対する恐怖心が7年間、積み上がって。日本に入った瞬間、街の裏には緑の豊かな山があって、大地が潤っている感じがしたんですね。それを見て『助かった』と心の声が聞こえて。よほど自分は砂漠に対する恐怖が意識下にあったんだ、と感じました」
大竹「優しい国、怖い国、いろいろありますが五感で触れて、どの国が自分に優しくしてくれた、という印象がありますか?」
石田「最近ですと、去年スリランカへ行きました。スリランカは一昨年、経済破綻して。暴動が起きて国内が大混乱して、その直後だった。危険じゃないか、と行くのも躊躇するぐらいでビビりまくったんですけど、行ってみたら本当に平和で、のどかで。治安は日本並みかな、と感じるぐらい。人々の親日感情がすごく強い感じがしました」
世界を自転車で旅し、腹を空かせて現地のものを食べてきた石田は「めちゃくちゃ腹が減る」「人間性を失ってくる、野生になりかける」と、当時を振り返る。
石田「アルゼンチンの肉なんかめちゃくちゃうまいんです。肉汁を口角から垂らして『もうこれ人間じゃないな』という食べ方をするときの快感。走ったあとで食欲の塊になるので、食べているときの恍惚、多幸感などがたまらないです。おいしかったら涙出ますからね」
大竹「マラソンで42キロぐらい走りきるとランナーズハイになるというか、多幸感があるというか」
石田「本当にあの感覚です! 今回の本も食べるということにテーマを置いて、腹減って食べたときの涙や笑いを集めたものですね」