アユのトモ釣りを始めよう!【鮎の生態・釣りの原理・道具・釣り方を解説】
トモ釣りの魅力は、何といっても生きたアユをオトリに使うことだと思う。釣りは一般的にエサ、ルアーなどを使い魚の口を使わせるが、アユのトモ釣りは生きたオトリのアユにハリを付けて野アユのナワバリに入れ、野アユが怒って体当たりしたときに掛かる釣りだ。今回はアユのトモ釣りをこれから始めたい入門者の参考になればと思い解説していきたい。
アユの生態
アユはキュウリウオ科アユ属。北は北海道から南は沖縄県にまで生息している。稚魚のころは海で育ち、春先に河川の水温上昇や増水などにより河川に遡上する。夏の間は川で過ごし、秋になると下流へ下り産卵する。まれに越年するアユもいるが、ほとんどのアユが1年で一生を終える。
またアユは独特の香りがする魚で、甘いスイカやキュウリの香りがすることから「香魚」とも呼ばれる。河川に遡上して大きくなったアユは、石に付着したコケと呼ばれる藻類を食べる。
遡上河川には天然アユが生息するが、ダムなどで遡上が困難な河川は漁協がアユを放流している。放流されるアユは下流部のアユを捕獲して放流するくみ上げ、琵琶湖で捕れたアユや人工的に作られたアユを放流するなどさまざまだ。
トモ釣りの原理
トモ釣りはアユのナワバリ行動を利用した釣りだ。ナワバリ行動とは、前述のようにアユは成長すると、石に付着したコケを食べる。そのコケが付着した石にナワバリを持つ。アユはコケを独占したいので、ナワバリに侵入した他のアユを追い払うために体当たりする。
トモ釣りは、オトリアユと呼ばれるハリが付いたアユを、このナワバリ持ちのアユがいる石の近くに侵入させ、体当たりされたときにハリに掛けるのだ。そのためトモ釣りは「石を釣れ」と、初心者のころ言われた。
トモ釣りの道具
トモ釣りは道具が多い。サオ、タモ、引き舟、タイツ、ウェーダー、タビ、ベスト、ベルト、帽子など。どれから用意したら良いのか迷うと思う。最初は友人からお古を譲ってもらうか、中古でそろえるのも良い。最初から新品でそろえなくても良いと思う。
近年ではライトスタイルも確立されつつある。ライトスタイルならベストやタイツ、ウェーダーは不要。しかしサオだけは良いものを購入することをお勧めする。
サオ
トモ釣りで最も重要な道具がサオだ。サオで釣果が変わるし、上達具合も変わる。高価なサオほど感度が良く軽い。感度が良いと、アユの動きが分かりやすくなる。
サオが軽ければ疲れにくいので、集中力が持続できる。感度がないサオで釣りをしても分からないことが多く、上達が遅くなる。入門者にお勧めなのが8~8.5の短ザオ。サオが短いだけで感度が上がり軽くなる。調子はオールラウンドで使えるサオが良い。各メーカーのカタログを見ると、必ずオールラウンド調子のサオがある。最初は安いサオで良いとの考えは逆効果だ。
仕掛け
最初は完成仕掛けで十分だ。天上イトからハナカンまでセットの仕掛けや各パーツごとに作った仕掛けもある。ハリも3本イカリ、4本イカリが巻いてあるものでOK。自作は経験を積んで徐々に始めていけば良い。
他にオモリ、背バリなどアユの泳ぎを助ける補助器具がある。これも用意しておく。最初から使うのでなく、まず練習で使ってみよう。釣りの最後にお試しで使う感覚で良い。何事も使って実感しないことには始まらない。トモ釣りは感覚的要素が多い釣りでもある。
まずは川へ行こう
最初はどの川のどのポイントへ行けば良いか分からないと思う。しかし行動に移さなくては上達しない。釣りは失敗の連続だ。どんな名手も最初から釣れた訳ではない。失敗を繰り返し、自分のスタイルを少しずつ確立していこう。
またトモ釣りは、アユだけではなく友(釣り仲間)も釣れる。同じ趣味を持つ人間なので、川やオトリ店などで意気投合することは多い。まさにトモ釣りである。
オトリアユを買う
トモ釣りは生きたアユを使うので、まずはアユをオトリ店で購入する。オトリアユは養殖、天然と2種類ある。一般的には養殖が扱いやすい。一度使っても休ませれば復活するし、天然アユよりも色変わりしにくい。天然は養殖より値段が高い。しかし天然でないと釣れにくい状況がシーズン中にはある。そんなときは天然が有利。
入門者は養殖を多めに(3~5匹)用意した方が気持ち的にも楽だ。養殖の選び方は、タライなどの底を泳いでいるアユが良い。元気のないアユは浮いている。また色が黒っぽいアユも元気な証拠だ。そして鼻が白くなっていないアユが良い。
オトリアユの運搬方法と現地での生かし方
オトリアユを買ったら川を目指す。川までの運搬方法はオトリ缶と呼ばれる缶に水とオトリを入れ、エアーポンプで酸素を補給する。近場なら水は少なくて良いが、遠くへ行くなら多めが良い。
川に着いたらオトリ缶は岸際に沈めるが、流れと平行に沈める。流れが直で入る置き方をすると、缶の中のアユが落ち着かない。そして缶の下側に石を置き、流されにくいようにする。また上に石を置いて重しをする。
ハナカンを通し逆バリを打つ
最初の難関は、アユにハナカンを通すことだ。最初はついつい強く握ってしまい、アユが暴れて弱らせてしまうと思う。まずはタモの中で作業を行うこと。ハナカンを親指と人差し指でしっかりつかむこと。
アユの握り方のコツは、親指と人差し指で包むようにして小指を添えるようなイメージ。強く握ればアユのヌメリで滑る。鼻への通し方は、ハリを刺すように鼻の横から真っすぐ押すように通す。逆バリはアユの尻ビレ付け根の上辺りに刺す。
オトリ操作
ハナカンを通したらいよいよオトリ操作だ。釣り方は、大きく分けて3つ。泳がせ釣り引き釣り、止め釣りだ。最初はオトリが泳ぐようなら、勝手に泳がせよう。それで釣れるようなら、余計な操作は無用。どんどん泳がせる。泳ぎが鈍くなり動かなくなったら、穂先を曲げて引いてみても良い。大事なのは前記でも述べたように「アユは石を釣れ」。ナワバリを持ったアユがいる石の近くに、オトリアユを誘導することを念頭に置こう。
オトリが弱ったら迷わず元気なアユに交換。初心者にありがちなスランプに、同じオトリで釣り続けることがある。トモ釣りは「循環の釣り」。オトリが循環しなければ、釣りは成立しない。
取り込み
掛かりアユの取り込み方法は2つ。引き抜きと引き寄せだ。慣れないうちは寄せて取り込もう。引き抜きはオトリ操作よりは慣れるのが早い。
両方で大事なのが、取り込む際に掛かりアユをよく見ること。水面に最初に姿を見せるのはオトリなのでどうしてもオトリから見てしまうが、掛かりアユをしっかり見ないと失敗することが多い。
上達の秘けつ
上達の秘けつは、ズバリたくさん釣ることだ。釣れば釣るほど、いろいろなことが分かってくる。こればかりは口では説明するのが難しいが、たくさん釣ることで体が釣り方を覚える。
ではどうすればたくさん釣れるか。その時その時で調子の良い河川に釣行することだ。追いの良いアユがたくさんいる川へ行けば、必然的に釣れる確率が上がる。では釣れる川とはどこなのか。まずは各河川の解禁日に釣行すること。解禁日のアユは誰にも釣られていないので、追いが強いアユが多く釣りやすい。
次に琵琶湖産アユが多く放流されている川。湖産はナワバリ意識が強く追いが強い。8月から日本海側の河川へ行く。天然アユが一般的に釣れだすのは8月から。初期の天然は育っておらず、いても釣れないが、8月ごろから本格的にナワバリを持ちだす。8月以降は天然アユが豊富な日本海側の河川へ行けば、好釣果が期待できる。
ワンポイントアドバイス
釣れない時間は、まず辺りを見渡す。釣り人が多い川なら、釣れている他の釣り人がいるはず。その人がどんな流れで釣っているか確認する。確認できたら、同じような流れでサオを出してみよう。またアタリが止まったら動いてみよう。
魚影の濃い川なら同じ流れで何匹も釣れるが、大半は何匹か釣れば釣れなくなる。同じ流れに固執せずどんどん動いて違う流れにオトリを入れよう。
<週刊つりニュース中部版 松森渉/TSURINEWS編>