【鎌倉 イベントレポ】これもさわれるのかな?―彫刻に触れる展覧会Ⅱ― - 手のひらで出会う彫刻の世界
近代美術館 鎌倉別館で2025年8月2日(土)~10月19日(日)に行われている、「これもさわれるのかな?―彫刻に触れる展覧会Ⅱ―」に行ってきました。
作品に触って楽しむ
入った瞬間からいつもの「見る展覧会」とは違う緊張とワクワクが混ざった空気が流れていました。
会場では来場者は美術館が用意する手袋を着用して作品に触れることができます。
展示タイトルの通り「触っていい展覧会」。
手で確かめることを許された彫刻の前に立つと、視覚だけでは得られない情報がどっと押し寄せてきて、身体ごと作品と対話するような感覚になりました。
触覚で受け取る情報はとても素直です。
冷たさ、ざらつき、滑らかさ、重さ、きしみ、微かな凹凸。
それらが指先から手のひらを通して伝わる、作品の「つくられ方」や「時間」。
例えば木の彫刻では木目の方向や切削跡がはっきり感じられ、作者の手がどのように動いたかを想像できます。
ブロンズの作品では金属のひんやりとした温度や鋳造の痕跡、磨きの違いがはっきり伝わってきて、「あ、ここは削られて仕上げられているんだな」と視覚だけでは気づけなかった細部に気づかされます。
印象に残ったのは、米林雄一さんの《Cubic Castle》。
ブロンズの立方体に触れると、つるんとした部分と鋭さのある部分の違いに驚きます。
浜田知明さんの《恐竜とそのひ孫たち》は思わず笑顔になるユーモラスさ。
さらに《悩ましい夜》では猫の表情がユーモラスで、ブロンズの質感と相まってじっと見てしまいました。
彫刻家 佐藤忠さんの特別出品
今回のみどころの一つは彫刻家 佐藤忠さんの特別出品です。
鉄板を丁寧に繋ぎ合わせた造形や、鉄の表面を錆の膜で覆った耐候性鋼板の独特な手触りが印象的でした。
耐候性鋼板に触れると表面のざらつきと厚み、錆が作るむらの感覚が伝わり、錆の膜が同時に金属を守る働きをしていることを、触覚を通じて実感できるのが面白かったです。
また今回は動物や丸・四角など多様なかたちの彫刻が並び、素材も木や金属、石などが使われた作品が幅広く紹介されていました。
形による触り心地の違いも学びどころ。
作品保護のため手袋着用というルールはありますが、そのおかげで安心して触れることができ、子どももお年寄りも自由に参加できるイベントだと思います。
視覚に頼らない鑑賞は、視覚障がいのある方にも開かれた美術体験であり、感性の幅を広げる学びの場でもあります。
触れてみることで作品の「つくり手の痕跡」に気づく。
工具の跡、削り残し、繋ぎ目のわずかな段差。それらは作者の手の動きや時間の流れを伝える証拠でもあります。
見るだけでは通り過ぎてしまうそれらの痕跡を、指先で感じる感覚はとても贅沢です。
触覚から入って、視覚がその意味を補完する。
その相互作用があるからこそ鑑賞体験が深まるのだと実感しました。
展示は2022年の「これってさわれるのかな?―彫刻に触れる展覧会―」に続く第2弾。
前回を知る人も、今回初めて触れる人も、それぞれ新しい発見があるはずです。
美術館が用意した手袋を付けて、ぜひゆっくりと「さわって」みてください。
関連イベント
普通に行くのも楽しかったのですが、イベントに合わせて行くとより楽しめるかと思います。
(詳細は美術館HPにて)
ギャラリートーク(担当学芸員)
9月23日(火・祝)、10月11日(土)
13:30~14:00
申込不要
こども鑑賞会
9月15日(月・祝)、10月12日(日)
13:30~14:30
対象:小~中学生(小4以下は保護者同伴) 要申込
ワークショップ「かくれんぼスケッチ」
8月13日(水)13:30~15:30
講師:佐藤忠(本展出品作家)
対象:小学生(小4以下は保護者同伴) 要申込
彫刻と距離がぐっと近づき、見慣れた素材や形がまったく違って見えてくる体験になります。
普段の美術鑑賞とは一味違った「からだごと楽しむ」美術館の時間をおすすめします。
これもさわれるのかな?—彫刻に触れる展覧会Ⅱ—
開催期間
2025年8月2日(土)~10月19日(日)
9:30~17:00(入館は16:30分まで)
休館日
月曜日(8月11日、9月15日、10月13日を除く)
開催場所
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
〒248-0005
神奈川県鎌倉市雪ノ下2丁目8-1
主催
神奈川県立近代美術館 鎌倉別館
入場料
一般250(150)円
20歳未満・学生150(100)円
65歳以上100円
高校生100円
*( )内は20名以上の団体料金です。
*中学生以下の方と障害者手帳等、ミライロIDをご提示の方(および介助者原則1名)は無料です。ミライロIDについて、通信環境等の影響によりタブレット端末等の画面で必要な情報が確認できな い場合は、原本のご提示をお願いすることがあります。