「効果ない」、「愚策と評判」 定額減税7割が否定的 政府は必死にアピール
■6月から定額減税 1人当たり4万円減税
6月から実施される「定額減税」は、所得税と住民税を合わせて1人当たり4万円が減税される。岸田文雄首相肝いりの物価高騰対策だが、恩恵を感じている国民の割合は低い。共同通信社や帝国データバンクの調査では、約7割が「効果がない」、「事務の負担が大きい」と否定的に捉えている。
定額減税は6月の給与や夏のボーナスから反映される。1人当たり4万円の減税となるため、4人家族であれば1世帯で16万円の減税となるが、政府が期待するほど国民は恩恵を感じていない。
共同通信の調査によると、定額減税が「物価高に直面する家計の支援に有効か」という質問に対して、69.6%が「有効だと思わない」と回答した。特に、40~50代が76.1%、60代以上が76.2%と割合が高かった。
■企業の負担増加「別の方法がなかったのか疑問」
事務的な負担の大きさも定額減税が不評の要因となっている。民間の調査会社・帝国データバンクが全国998社に実施したアンケートによると、事務の「負担感がある」と答えた企業は66.8%に上り、「負担感はない」の9.7%を大きく上回った。残りは「どちらとも言えない、分からない」となっている。
負担があると感じているのは企業の規模に大きな差はない。企業にとっては通常業務に新たな事務作業が加わり、さらに給与支給後に従業員から問い合わせを受ける事後処理も予想される。コストが膨らむ企業も少なくない。アンケートでは以下のようなコメントがある。
・事務社員の負担が増えた。給与ソフトが対応していると言っても、最終的に日は人の目でチェックしなければならない。
・社会保険料の算定基礎届提出や労働保険料の年度更新などとタイミングが重なっているため、担当者に大きな負担となっている。定額減税ではなく年末調整での一括対応や4万円の定額給付など別の方法がなかったのか疑問に思う。
・給与計算部署の勉強時間、事務負担、従業員への説明といった手間が発生している。国が想定している定額減税相当額分の所得税率を下げた方が民間企業の事務面では助かる。
■政府はSNSなどでアピールも…大半は否定的なコメント
定額減税の効果や恩恵を感じていない国民もいることから、政府はSNSを中心にアピールを続けている。首相官邸が作成したショート動画では、賃金・雇用担当の矢田稚子首相補佐官が「会社員は何もしなくても給与から天引きされている税金が減って手取りが増えます」、「定額減税は1人4万円なので扶養家族3人の4人世帯なら、なんと16万円減税されます」などと説明している。
動画のコメントには一部で「改めて良く分かりました。何もしなくて良いのが素晴らしいです」といった好意的な内容がある。しかし、大半は「天引き処理するのも、給与明細に減税額を明示するようにシステム改修など対応するのは、税理士だったり事務職だったり、そういう職業についている人たちです。職場では愚策だと評判です」、「増税も説明してください」など否定的な内容が占めている。
(SHIZUOKA Life編集部)