『神社の数はコンビニの5倍?』神社の数と分類、12の代表系統を解説
日本には、8万社を超える神社が存在する。
これは全国のコンビニ店舗数(約5万4000店 ※2024年データ)を大きく上回っている。さらに、摂社・末社、小祠、未登録の神社などを含めると、総数は20〜30万社に達するとも推定されており、神社は日本文化に深く根ざした存在であることがわかる。
神社には、国家的に定められた明確な分類基準は存在しない。しかし、その種類や多様性を考慮すれば、いくつかの視点から分類することは可能である。以下に代表的な分類方法を紹介しよう。
【祭神による分類】
神社は、祀っている神(祭神)によって性格づけられる。この方法は、最も一般的な分類法のひとつとされている。
たとえば、稲荷神社、八幡神社、天満宮などがあり、全国的に広がる主要なものだけでも20種類以上にのぼるとされている。
【名称や地位による分類】
神社の名称や、歴史的・制度的な地位に基づく分類である。
– 神宮(じんぐう)…皇室や国家と深く関わる神社(例:伊勢神宮、明治神宮)
– 大社(たいしゃ)…全国的または地域的に著名な神社(例:出雲大社)
– 神社(じんじゃ)…一般的な呼称で、全国に最も多く存在する
– 宮(ぐう)…皇族や歴史的人物を祀る場合に用いられる(例:香椎宮)
– 摂社・末社…本社に付属する小規模な神社で、主祭神や由緒に関係する
– 祠(ほこら)…道端や山中などにある非常に小さな神社
このような名称による分類だけでも、10~15種に及ぶとされる。
【建築様式による分類】
神社建築の様式によっても分類が可能である。代表的な様式は以下の通りである。
– 神明造…伊勢神宮に代表される、最古の様式のひとつで簡素な構造が特徴
– 大社造…出雲大社に見られる、太古の伝統を残す重厚な構え
– 春日造…春日大社に典型的な、小型で端正な造り
– 流造…全国に広く分布する一般的な様式で、屋根が前方に流れる形が特徴
これら主要な様式だけでも4~5種類に分類される。
今回は、これらの分類のうち「祭神による分類」に焦点をあてて解説していきたい。
1. 八幡宮
八幡宮は日本で最も多い神社の系統で、全国に約4万4000社あるとされている。
主祭神は八幡神(やはたのかみ)で、一般には第15代天皇・応神天皇を指す。
応神天皇は古くから武神として崇められ、戦勝祈願や国家守護の神として広く信仰されてきた。また、母である神功皇后や、比売神(ひめがみ)と総称される女性神がともに祀られる場合も多い。
総本社は福岡県宇佐市の宇佐神宮であり、ここが全国八幡信仰の中心地である。
ほかにも、京都の石清水八幡宮や、鎌倉の鶴岡八幡宮などが著名で、いずれも中世において武士階級から篤く信仰された。
八幡神はとくに弓矢・武芸の守護神としての性格が強く、源氏や平家をはじめとする多くの武将に尊崇された歴史をもつ。
2. 稲荷神社
稲荷神社は、商売繁盛や五穀豊穣を司る稲荷神、すなわち宇迦之御魂神(うかのみたまのかみ)を主祭神として祀る神社である。
全国に約3万社が存在するとされ、狐が神の使い(眷属)として信仰されている点が大きな特徴である。総本社は京都の伏見稲荷大社であり、朱塗りの千本鳥居は象徴的な景観として知られ、観光名所にもなっている。
本来は農業神として信仰されていたが、江戸時代以降は商工業の守護神としても崇敬を集め、商人層に広がっていった。現在では、農家や商人のみならず、企業経営者や投資家など、多様な人々に信仰されている。
赤い鳥居が連なる参道の風景は、稲荷神社を象徴するものであり、日本全国で共通するビジュアルイメージとして広く浸透している。
3. 天満宮
天満宮は、学問の神として知られる菅原道真(すがわらのみちざね)を祀る神社である。
全国に約1万2000社が存在し、その数は稲荷神社に次ぐ規模とされている。
菅原道真は、平安時代に活躍した学者・政治家であったが、政争により無実の罪で大宰府へ左遷され、失意のうちに亡くなった。
彼の死後、朝廷や京の都に次々と災厄が起こったことから、道真の霊が怨霊となって祟っていると恐れられた。
その後、道真を学問の神として手厚く祀ることでその霊を鎮めようとし、これが天神信仰の始まりとなった。
こうして天満宮は全国に広がり、特に受験生や学問成就を願う者たちから篤く信仰されている。
代表的な天満宮としては、京都の北野天満宮と福岡県の大宰府天満宮があり、いずれも総本社とされる。
道真がこよなく愛したとされる梅の花は、天神信仰における象徴となっており、両社の境内には梅の木が数多く植えられ、毎年梅の季節には多くの参拝者が訪れる。
4. 伊勢神宮
伊勢神宮は、日本神道の中心に位置する特別な神社であり、内宮(ないくう)と外宮(げくう)を主軸とし、摂社・末社・所管社などを含めて伊勢市周辺に125社が点在している。
内宮には、太陽神であり皇室の祖先神でもある天照大御神(あまてらすおおみかみ)が祀られており、外宮には、食物と産業の神である豊受大御神(とようけのおおみかみ)が祀られている。
三重県伊勢市に鎮座するこの神社は、神道における「本宗」とも称され、日本全国の神社の根本を成す存在である。
いわば総本社的な役割を担い、古代より国家の祭祀において重要な位置を占めてきた。
また、20年に一度行われる式年遷宮は、社殿を新たに建て替え、ご神体を遷す神事であり、1300年以上にわたって継承されている。
この遷宮は単なる建築行為ではなく、日本古来の精神文化と技術の継承の象徴ともなっている。
伊勢神宮は、現代においても国家的な祭祀の場として特別な地位を保っている。
5. 出雲大社
出雲大社は、島根県出雲市に鎮座し、大国主大神(おおくにぬしのおおかみ)を主祭神として祀る神社である。
大国主大神は国造りの神として知られ、特に縁結びの神として広く信仰されている。
全国におよそ200社の分社が存在するとされるが、総本社は出雲大社そのものである。
旧暦10月には「神無月」と呼ばれるが、出雲地方ではむしろ「神在月(かみありづき)」とされ、この期間に全国の神々が出雲に集まるという伝承が古くから伝えられている。
拝殿前に掛けられた巨大なしめ縄は出雲大社の象徴的存在であり、その壮観な姿は多くの参拝者を惹きつけてやまない。
参拝者の多くは、恋愛や人間関係などの良縁を願って訪れる。
社数としては他の大系神社に比べて少ないが、出雲大社は『古事記』や『日本書紀』に登場する重要な神話の舞台でもあり、文化的・宗教的に極めて高い地位を占めている。
6. 熊野神社
熊野神社は、和歌山県の熊野三山—すなわち熊野本宮大社、熊野速玉大社、熊野那智大社—を中心とする神社であり、全国に約3000社が存在するとされている。
祭神は一社に限らず、家都美御子大神(けつみみこのおおかみ)や熊野速玉大神、熊野夫須美大神など複数の神を祀っており、その信仰は古くから自然崇拝や修験道の影響を受けて発展してきた。
総本社は熊野三山そのものであり、とりわけ中世以降は「浄化」や「再生」を願う信仰の対象として、上皇や貴族、武士、庶民に至るまで幅広い層の巡礼者を集めた。
熊野詣の参詣路である熊野古道は、熊野信仰と一体の文化遺産として世界遺産に登録されており、各地に分布する熊野神社の多くは、その信仰の広がりと深さを今に伝えている。
7. 春日神社
春日神社は、奈良県にある春日大社を総本社とする神社であり、全国に約1000社が存在するとされている。
主祭神は、武甕槌命(たけみかづちのみこと)、経津主命(ふつぬしのみこと)、天児屋根命(あめのこやねのみこと)、比売神(ひめがみ)らで、いずれも藤原氏の氏神として崇敬された神々である。
これらの神々は、武神や国家守護の神として信仰され、とりわけ平安時代に藤原氏の権勢とともに春日信仰も広がりを見せた。
春日大社の境内では鹿が神の使い(神使)とされ、現在も多数の鹿が神聖な存在として保護されている。
春日大社はその荘厳な社殿と、数千基におよぶ献灯による灯籠で知られ、建築的にも美しく、日本の神社建築史においても重要な位置を占めている。
8. 諏訪神社
諏訪神社は、長野県に鎮座する諏訪大社を総本社とし、全国に約5000社が存在する。
主祭神は建御名方神(たけみなかたのかみ)であり、風、水、狩猟、軍事などを司る神とされる。
とくに狩猟や武勇に関わる神として、古来より多くの武士や山間部の人々から信仰を集めてきた。
諏訪大社は、上社(本宮・前宮)と下社(春宮・秋宮)という二社四宮制をとる独特の構成をもち、7年に一度開催される御柱祭(おんばしらさい)は、その壮大さと迫力で全国的に知られている。
古くから自然と密接に結びついており、社殿を持たずに神体山を拝む古形の信仰形態や、自然現象との関連を重視した祭祀が特徴である。
地域ごとに伝承や祭祀形態にも違いが見られ、地域色の濃い神社系統である。
9. 厳島神社
厳島神社は、広島県廿日市市の宮島に鎮座し、全国に約500社が存在する神社系統である。
祀られているのは市杵島姫命(いちきしまひめのみこと)をはじめとする宗像三女神で、いずれも海の守護神として知られている。市杵島姫命は弁才天と習合し、水の神・芸能神としての信仰も広がった。
総本社は宮島の厳島神社であり、潮の満ち引きによって浮かび上がるように見える大鳥居と社殿は、海と建築が融合した神聖な景観を形成している。
これらの建造物群はユネスコの世界文化遺産にも登録されており、日本を代表する神社のひとつである。
厳島神社は古来より海上交通や航海の安全、さらには交通運輸全般の守護神として信仰されてきた。
今日でも、船舶関係者や旅行・輸送業に携わる者などから厚く崇敬されている。
10. 住吉神社
住吉神社は、大阪市住吉区に鎮座する住吉大社を総本社とし、全国に約2300社が存在する神社系統である。
主祭神は、底筒男命(そこつつのおのみこと)、中筒男命(なかつつのおのみこと)、表筒男命(うわつつのおのみこと)からなる住吉三神であり、これに神功皇后を加えた四柱を祀る神社も多い。住吉三神は古くから海上安全の守護神として信仰され、あわせて和歌や文芸の神としても崇敬を集めてきた。
とりわけ古代から航海・漁業の神として海人族や船乗りに厚く信仰されており、住吉大社は伊勢神宮・鹿島神宮・香取神宮と並ぶ「四大本宮」の一つとして高い神威を誇っている。
境内には独特の建築様式である「住吉造」の本殿が現存し、国宝にも指定されている。
11. 金毘羅神社(こんぴらじんじゃ)
金毘羅神社は、香川県琴平町に鎮座する金刀比羅宮(ことひらぐう)を総本宮とする神社系統である。
金刀比羅宮は通称「こんぴらさん」として親しまれ、古来より海上の安全、商売繁盛、五穀豊穣などを祈願する人々に広く信仰されてきた。
主祭神は大物主神(おおものぬしのかみ)とされ、神道系の神社として位置づけられている。
ただし、金刀比羅宮はかつて神仏習合の時代においては仏教的色彩も強く、明治の神仏分離を経て現在の形に至っている。
全国には、この金刀比羅宮から分霊を受けて創建された金毘羅神社が約600社存在するとされており、「金刀比羅神社」「琴平神社」「金比羅神社」など、地域によって異なる名称で呼ばれている。
これらの神社は、とくに港町や漁村、商業地に多く分布しており、今なお地域の守護神として信仰を集めている。
12. えびす神社
兵庫県西宮市に鎮座する西宮神社は、えびす信仰の総本社であり、「えびす宮総本社」とも称されている。
主に商売繁盛や漁業の守護神として広く信仰を集めており、とくに毎年1月10日に行われる「開門神事福男選び」は全国的に知られる恒例行事である。
全国には約3500社のえびす神社が存在するとされ、地域によって「えびす神社」「戎神社」「恵比寿神社」など名称はさまざまである。
これらの神社はいずれも、えびす神を祀り、地域の商業や水産業の守護を願う人々に篤く信仰されている。
また、兵庫の西宮神社、大阪の今宮戎神社、京都のゑびす神社は、特に由緒ある「三大えびす神社」として位置づけられており、各地からの参拝者でにぎわう。
おわりに
日本には、登録されている神社だけでも約8万8000社が存在し、摂社・末社や小祠を含めれば、その数はさらに増加する。
なかでも八幡宮(約4万4000社)、稲荷神社(約3万社)、天満宮(約1万2000社)は、社数の多さにおいて際立っている。
これらの神社はそれぞれ、武神、学問神、豊穣神といった異なる性格を持ち、地域社会の中で果たしてきた役割も多様である。その背景には、各地の歴史や風土に根ざした信仰の広がりがある。
現代においても神社は参拝や観光の場としても親しまれ、日本の文化を体現していると言えるだろう。
参考 : 『神社本庁公式サイト』他
文 / 草の実堂編集部