介護職から異業種へ転職するなら? 経験を活かせる職種や業種、成功のコツを解説!
介護職から異業種への転職!介護職の経験はどのように活かせる?
執筆者
ささえるラボ編集部
https://mynavi-kaigo.jp/media/users/3
介護職のなかには、身体介護や夜勤による体調の悪化、職場の人間関係の悩みなどがきっかけで、ほかの施設・事業所や他職種への転職を考えている人もいるはずです。仕事内容や待遇面への不満から、介護職を辞めて他業界に転職したいと思っている人もいるでしょう。
とはいえ、介護職以外の経験がないと、「どんな職種なら介護経験を活かせるのか」「他業界への転職は可能なのか」など、さまざまな不安や疑問があるのではないでしょうか。
そこで今回は、転職する場合の選択肢、介護の経験やスキルを活かせる職種・業種、他業界に転職する場合のメリット・デメリット、成功のポイントなど、介護職からの転職を考える人が知っておきたい知識を紹介します。
そもそもなぜ介護職からの転職を考えるのか
介護職からの転職について考える前に、なぜ介護職から転職をしたいと思うのか、その理由について特に多いものを見ていきましょう。
転職理由と向き合うことは、転職後に後悔することを予防したり、自分自身が何を求めているのかを知ることができたりします。
退職理由No.1は「人間関係の悩み」
介護労働安定センターの調査によると、介護業界で離職をした人の理由として最も多いのは、「職場の人間関係に問題があったため」でした。※
職場の人間関係の良し悪しは、実際に勤めてみないとわからない部分ではありますが、利用者さんや職員、関連機関など多くの人と関わる機会がある介護業界においてはどうしても人間関係の悩みは多くなりがちです。
一方で、職員間の人間関係、利用者さんとの人間関係などでの悩みであれば、施設や事業所、配置などを変えることで解消する場合もあるかと思います。
対人関係を完全に避けた職場で働きたいということでない限りは、そのような選択肢を持ってみるのも1つの手段になると思います。
※ 出典:厚生労働省令和5年度「介護労働実態調査」結果の概要について
ライフスタイルが変わった
介護の仕事そのものに不満はなくても、結婚や出産を機にライフスタイルに変化が生じて、介護職の働き方が合わなくなるというケースはよく聞かれます。
特に施設で働く介護職はシフト制が一般的で、夜勤があったり土日祝日に休めなかったりと、不規則な勤務形態になりがちです。家族のサポートがないと子育てとの両立は難しいため、ライフスタイルの変化を機に介護職から他職種、他業界に転職する人は少なくありません。
ほかにも、パートナーの転勤や家族の介護といった事情で、やむを得ず介護職から転職を考える人もいます。
キャリアアップの見通しが立ちにくいと感じやすい
介護職は利用者さんへの支援を通して、利用者さんの生活の改善や成長・回復を感じたり、ご本人やご家族から直接感謝の気持ちを受け取ったりするなど多くのやりがいを感じる職業です。一方で、努力の成果が劇的に現れたり、介護職ひとりの成果を数値で示すなどは難しい面もあります。また、人事評価制度が定まっていない職場も多く、担当業務をこなしているだけでは昇給やキャリアアップにつながりにくい面があります。
それでも長い目で見ればスキルも身につき、確実に成長しているものですが、短期間では成長を感じにくいため、「このままでよいのだろうか」と将来に不安を感じる介護職もいるようです。
仕事内容と給与が見合わない
介護職は、身体的に負担のかかる身体介護を伴う重労働があったり、利用者さんやそのご家族から無理な要求やクレームを受ける場面もあったりと精神的なストレスも少なくない仕事です。
そのため、これらの対応に対して「しんどい」と感じた場合、給与が見合っていないと思う方もいるようです。給与の少なさや給与が上がらないことを理由に転職を考える介護職は多いようです。
しかし、近年では社会的な介護ニーズの高まりもあり、国の施策として、介護職の処遇改善に向けた「介護職員等処遇改善加算」をはじめとするさまざまな取り組みが進められているため、介護職全体の給与は、少しずつではありますが増加傾向にあります。
また、介護職員初任者研修(以下、初任者研修)、実務者研修、介護福祉士といった資格を取ることで、介護スキルを高めながら資格手当によって収入を上げていく道もあります。
人手不足で1人あたりの負担が大きい
介護業界は全体的に人手不足で、なかには配置基準ギリギリの少人数でなんとか回している施設・事業所もあります。そんな職場で働いていると、一人あたりの仕事量が多く、休みも取りづらいため、疲労やストレスがたまり、結果的に退職を考え始める介護職もいます。
夜勤で生活リズムが崩れた
入居型施設の介護職はほとんどの場合、夜勤がつきものです。普段は日勤中心の生活をしているのに月に数回だけ夜勤をすると、生活リズムが乱れて夜に眠れなくなるなど、不調を招くことがあります。
夜勤によって生活リズムが崩れることが原因の体調不良は、介護職に意外と多く悩んだ結果、入居型施設から訪問介護事業所に移ったり、介護職を辞めて他業界に転職したりする人もいるようです。
身体介護で腰を痛めた
介護職は、入浴介助や排泄介助、移乗介助などで、腰に負担がかかりやすい中腰や前屈みの姿勢になることが多いため、腰痛を引き起こしてしまう方がいます。若いうちは体力で乗り切れても、長年介護職として働いているうちに、腰痛が悪化して仕事を続けられなくなることもあります。
腰に負担をかけないためにケアマネジャーや生活相談員などの事務系職種にキャリアチェンジする人もいますが、他業界への転職を考える人もいるでしょう。
介護職から転職する場合の選択肢
上記にあげた例はあくまで一部ですが、このように転職を悩んだ際、介護職からの転職にはどのような選択パターンがあるのでしょうか。
考えられるのは、主に以下の4つです。
1.介護職としてほかの施設に転職する
「まだまだ介護職としてキャリアを重ねたい」という人におすすめの選択肢です。
介護職の働き方は、入居型、通所型、訪問介護といった施設・事業所のサービス形態によって異なります。そのため、身体介護の負担が大きい、夜勤が体に合わないなど、働き方の問題で悩んでいる場合は、現在の職場とは異なるサービス形態の施設・事業所に転職すると、解決につながる場合があります。
なお、職場の特定の人間関係が要因で転職を考えているのであれば、同じ法人内でチームや施設を変えてもらうか、サービス形態にかかわらず、ほかの施設・事業所に転職することで悩みが解消される可能性もあります。
2.介護業界の他職種に転職する
「介護業界には愛着があるから辞めたくない。でも介護職以外の職種を経験してみたい」という人は、生活相談員やケアマネジャーなどの介護業界の他職種につくことを検討してみるとよいでしょう。
介護職としての知識やスキルを十分に活かせますし、職種によっては、より自分に合う働き方を実現しながら、収入もアップさせることができます。
3.介護の経験・スキルを活かせる他業種に転職する
介護職の経験を活かしながら、「介護業界以外の業種で自分を試してみたい」という人は、介護業界に近い福祉・医療業界への転職を検討してみましょう。
児童福祉施設や障害者施設、医療機関などさまざまな職種があるので、より興味を持てる職場が見つかるかもしれません。
4.介護や福祉とは関係ない他業種に飛び込む
「自分には介護職や介護業界が向いていない」と感じているのであれば、介護・福祉・医療のいずれにも全く関係のない業界へ転職するのも選択肢の一つです。
ただし、業種によっては、介護業界での経験や介護スキルを活かせる場面がほとんどない場合もあります。
今回の記事では、3つ目の「介護の経験・スキルを活かせる他業種に転職する」と4つ目の「介護や福祉とは関係ない他業種に飛び込む」の方に向けて転職の選択肢をご提案していきます。
福祉・医療業界など介護職の経験を活かした転職をする場合におすすめの他職種
まずはじめに「介護の経験・スキルを活かせる他業種に転職する」ことを検討する場合の選択肢を見ていきましょう。
介護業界に近い業界といえば、福祉・医療業界です。介護職として身につけてきたスキルや資格を活かしやすいため、他業界に転職したい人は、まずは福祉・医療業界を検討するとよいでしょう。
以下に、福祉・医療業界で特におすすめの職種を紹介します。
保育士・児童福祉施設の職員
保育士は「人をケアする仕事」という点で介護職と似ているため、介護職にとってはチャレンジしやすいでしょう。子どもは日々成長していくので、高齢者の介護とはまた違ったやりがいや、喜びを得ることができます。特に子どもが好きな人におすすめの職種です。
保育士として働くには、子どもの保育や福祉、教育に関する専門知識が求められるため、保育士の国家資格が必須です。ただし、保育士のアシスタント的な業務を担う「保育補助」であれば、資格がなくても転職することができます。
保育士資格を取得するには、主に、「指定保育士養成施設で学んで卒業する」「保育士試験を受験する」という2つの方法があります。一般の大学や短期大学などを卒業している人は、それだけで保育士試験の受験資格があります。高卒でも、所定の児童福祉施設での実務経験が2年以上あれば、試験を受けることができます。
なお、介護福祉士、社会福祉士、精神保健福祉士の資格を持っている人は、試験科目の一部が免除されるため、保育士資格を取得しやすいというメリットがあります。保育士資格を持っていると、保育園はもちろん、助産施設、児童養護施設、知的障害児施設などの幅広い児童福祉施設への転職が可能になります。
看護師
医療業界に興味がある人は、看護師に転身するのもよいかもしれません。医療機関を利用する患者のなかには、介護が必要な高齢者も多いので、介護職時代に得た知識やスキルを十分に活かすことができます。
ただ、看護師になるには、大学や短期大学、専門学校などの養成校で学んだ後、看護師の国家試験を受けて合格する必要があります。これから介護職を辞めて養成校に通うのはハードルが高いかもしれませんが、その分、キャリアの可能性は大きく広がります。
看護師が活躍できる場は多いので、医療機関のほかにも、一般企業や福祉施設、保育園など、さまざまな選択肢があるでしょう。
リハビリ職
より専門性の高いスキルを身につけて専門職として活躍したいのであれば、医療機関などで患者のリハビリテーションのサポートを行うリハビリ職につくという道もあります。その代表的な職種が、理学療法士、作業療法士、言語聴覚士の3つです。
いずれも資格が必須で、取得するには、養成校で3年以上学んだうえで、国家試験に合格しなければなりません。医療機関だけでなく、主に在宅生活への復帰を目指す高齢者が利用している介護老人保健施設(老健)をはじめ、リハビリをサービスとして提供している介護施設でもニーズがあります。
医療事務
医療事務とは、病院やクリニックなどの医療機関で、来院者の受付対応、カルテの作成、医療費の会計、レセプト(診療報酬明細書)作成などを担当する事務職です。
医療機関では、患者は医療費の一部を負担し、残りの医療費は患者が加入している健康保険組合などが支払います。その残りの医療費を支払ってもらうために、レセプトと呼ばれる明細書を作って保険者に請求する必要があるのです。
無資格や未経験でもできる仕事ですが、レセプト作成業務には医療保険に関する知識が必要なので、医療事務の民間資格を持っていると採用されやすいでしょう。
障害者施設の職員
障害者を支援する施設には、障害のある人が居住して生活する施設から、就労を支援する施設まで、さまざまな種類があります。障害者施設で働く職員にも、日常生活のサポートをする「生活支援員」、職場探しや就職を支援する「就労支援員」、主に職業訓練の指導を行う「職業訓練員」などの種類があります。
障害者施設の職員になるために必要な資格は、施設によって異なります。無資格でも応募できる施設が多いものの、社会福祉士や介護関連の資格があると、採用時に有利になるだけでなく、転職後に実際に業務を進める際に役立つでしょう。
特に生活支援員の場合、障害のある人の着替えや食事、入浴などの介助を行うことも業務に含まれるため、介護の知識やスキルを活かせる場面は多いはずです。
その他の業界に転職する場合のおすすめの職種
次に、「介護や福祉とは関係ない他業種に飛び込む」ことを検討している方に、選択肢をご提案していきます。介護とは全く関係のない業界に転職する場合でも、介護の知識やスキルを活かせる機会は意外とあります。
ここでは、介護職からの転職に特におすすめの職種をいくつか紹介します。
接客・サービス業のスタッフ
飲食店や小売店、宿泊施設などのスタッフは、介護職と同じサービス業なので、利用者(お客様)に対する接遇が業務の大部分を占めるという点は同じです。
介護職の使命は、常に利用者の気持ちを想像し、体調や安全面に配慮しながら日常生活のケアにあたることです。飲食店や宿泊施設などでも、介護職時代と同じように、親身なコミュニケーションを心がけ、丁寧にサービスを提供すれば、自然にお客様から感謝される機会が増えて、やりがいを感じられるでしょう。
営業職
自社の商品やサービスを顧客に提案、販売する営業職は、多くの業種において不可欠な存在です。日々の業務を通して、表情や様子を観察しながら、相手を傷つけないように言葉を選んで話すスキルや高いコミュニケーション能力を身につけている介護職は、営業職向きの人材といえます。
また、介護用品のメーカー、介護業界専門の転職情報サイト、医療機関や介護施設向けの業務管理システムの開発会社など、介護領域に関わる商品・サービスを展開している法人もたくさんあります。そのような法人の営業職になれば、介護職時代に得た知識を活かすこともできるかもしれません。
キャリアアドバイザー
キャリアアドバイザーは、転職エージェント(人材紹介会社)のスタッフで、転職したい求職者に希望に合った職場を紹介し、応募書類の書き方や選考対策についてアドバイスすることで、転職をサポートする職種です。
介護職が介護業界専門の転職エージェントに転職してキャリアアドバイザーになれば、前職の経験をもとに、介護業界の魅力や実情といったリアルな情報を提供することができるでしょう。
また、介護業界専門のエージェントでなくても、介護職で培ったコミュニケーション能力やサポート力を活用し、求職者を支えていくことができるでしょう。
システムエンジニア
介護スキルを活かせるわけではありませんが、一から新しいことにチャレンジするなら、システムエンジニアはおすすめの職種です。IT業界はこれからますます伸びる分野で高いニーズがあるため、常に人材が不足しています。そのため、未経験者OKの求人募集も少なくありません。
無資格かつ未経験でも募集がある職種ですが、専門的な知識が必要な職種であるため、IT関連の資格を取得したり、スクールに通ってプログラミングを学んだりしておくと、転職時により有利になるでしょう。
製造スタッフ
介護職員間や利用者との人間関係の悩みで疲れてしまった方におすすめの職種が、製造工場のスタッフです。製造スタッフの主な業務は、工場のベルトコンベア上を流れてくるネジや部品などの製品を加工したり組み立てたりするライン作業です。
同じ作業の繰り返しなので単調な面もありますが、介護の仕事のようなチームワークではないため、人とのコミュニケーションが苦手な人は気楽に続けられるかもしれません。製造業は常に人手不足なので、未経験でも採用されやすいというメリットもあります。
ただし、近い将来、工場の自動化が進んで少人数のスタッフでも対応できるようになると、失業するリスクもあります。将来も同じ業界で働き続けるためには、フォークリフトや電気・溶接などの資格を取ってスキルアップする、管理者を目指すといった努力が求められます。
介護スキル以外の介護職の強み
ここまで、介護業界から異業種への転職でおすすめの職種について解説してきました。
これらを見ても、介護職は幅広く様々な業務に携わってきたため、多くのスキルを持っていることがわかります。ここからは具体的にどのようなスキルが強みとなるのか解説します。
1.コミュニケーション力
介護職は日々、介護サービスの利用者と笑顔でコミュニケーションをとって、要望を聞き出し、表情や様子から体調の変化を察しながら適切なケアをしていきます。利用者の家族と話をする機会や、介護に関する悩みを相談される機会も多々あります。
介護現場で同じ介護職に囲まれていると当たり前に感じるかもしれませんが、介護職は日々の業務を通して高度なコミュニケーション力を身につけています。特に、利用者の潜在的な要望を汲み取る力はどんな業種の顧客対応でも役立つので、転職活動ではしっかりアピールしたいポイントです。
2.体力・精神力
介護職は、利用者の体を支えながら排泄や入浴の介助をする、車椅子からベッドなどへの移乗をサポートするといった身体介護の場面が多く、体力勝負の重労働です。介護職として日々の業務をこなしているだけで、かなりの体力がついているはずです。
また、ときには利用者やその家族、認知症の利用者のニーズに応えたり臨機応変な対応をすることも求められるため、忍耐強く、精神的にもストレスコントロールに長けている可能性があります。
このような体力・精神力があれば、どんな業種・職種でも強みになるでしょう。
3.協調性
介護はチームワークが重要な仕事です。安全面に配慮しながら利用者を適切にケアするには、チームリーダーやほかの介護職と息を合わせて業務にあたらなければなりません。
また、必要に応じて医師や看護師、ケアマネジャー、生活相談員、リハビリ職などの専門職とも情報共有し、連携していく必要があります。仲間や他職種との協調性は、業種・職種にかかわらず、どんな組織でも求められる要素です。
4.マネジメント力・指導力(リーダーや管理職経験がある場合)
介護職としての経験が長く、リーダーや管理職を務めた経験がある場合は、マネジメント力や部下を育成・指導した経験が強みになります。
マネジメント力のある人材は貴重なので、転職時にはそのスキルを活かせる職場を選び、ふさわしい人材であることをしっかりとアピールしましょう。
介護職から異業種に転職するメリット
ここまで、介護業界から異業種への転職で活かせるスキルについて解説してきました。
いかがだったでしょうか。介護職は、対人スキルや体力など様々な力を持ち合わせているため、社会において活躍できる場は多くあるのです。
とはいえ、慣れ親しんだ介護業界から、他の業界に出ることは楽しみな反面、不安も多くあるかと思います。異業種への転職を終えてから後悔することがないよう、異業種への転職のメリット・デメリットを確認していきましょう。
まずは、メリットからです。介護職から異業種への転職で考えられるメリットは以下の通りです。
1.給与が上がる可能性がある
2.夜勤がない職種が多い
3.土日祝休みの職場が多い
1.給与が上がる可能性がある
厚生労働省の調査によると、介護職全体の平均給与額(月額)は、31万7540円で、年収に換算すると381万480円です。※1
一方、国税庁の調査によると、民間企業で働く全従業員の平均年収額は、458万円です。※2
上記のデータから、介護職の収入は、平均的な会社員の収入よりも低いことがわかります。
もちろん転職する業種や職種によりますが、介護業界から他業界に転職することで、給与がアップするケースは多いでしょう。
また、介護職の場合、どんな目標を達成したらどれだけ昇給するのかが明確に定まっていない職場が少なくありません。一方、他業界では多くの法人において、社員の業績や能力に応じて適正に評価し、給与に反映する人事評価制度が採用されています。
介護職が今の職場で努力しても給与が上がらないことに不満を持っている場合、他業界に転職することで、努力の結果が昇級や給与に反映されるようになり、モチベーションアップにつながる可能性があります。
※1 出典:厚生労働省令和4年度介護従事者処遇状況等調査結果
※2 出典:国税庁令和4年分 民間給与実態統計調査
2.夜勤がない職種が多い
特別養護老人ホームや有料老人ホームをはじめとする入居型施設は、24時間体制で利用者にサービスを提供しているため、夜間も当番の介護職が出勤しています。したがって入居型施設に勤務する介護職には、月に何度かは夜勤が回ってきます。
福祉・医療業界でも、利用者の生活の場である障がい者施設や児童養護施設、入院患者のいる医療機関などでは、基本的には夜勤があります。
それ以外の業界に転職する場合、勤務時間は日中が中心になるため、夜勤がない職種がほとんどです。夜勤が原因で生活リズムが崩れて悩んでいる介護職にとっては、転職が体調を立て直すきっかけになるかもしれません。
3.土日祝休みの職場が多い
介護職や医療機関で働く看護師などは交代制の勤務体制が一般的ですが、一般企業や官公庁などでは、職種にもよりますが、土日祝日が休日になる職場が主流です。
介護職のなかには、交代制で土日祝日に休めないために、子どもの学校行事に参加しにくい、家族と休みが合わないといった悩みを持つ人も少なくありません。そんな人は、土日祝日が休みの他業界に転職することで、希望通りの勤務体制になる可能性があります。
介護職から異業種へ転職するデメリット
メリットもある反面、転職にはデメリットもあります。
メリット・デメリットはそれぞれの考え方次第ですが、転職後によく挙がるデメリットを紹介します。
1.一から仕事を覚えなくてはならない
2.介護の仕事で感じていたやりがいがなくなる
3.介護の経験・スキルを活かせないことがある
4.条件や環境の良し悪しの判断がつきにくい
5.目標やノルマのプレッシャーが大きい
6.残業時間が増えることがある
7.収入が下がる場合がある
8.介護業界に比べると求人が少ない
1.いちから仕事を覚えなくてはならない
介護職から全くの他業界に転職すると、新しい仕事をいちから覚えなくてはなりません。営業職やシステムエンジニアなど未経験の職種につく場合、最初のうちはわからないことだらけでしょう。転職時の年齢にもよりますが、職場の雰囲気によっては、先輩社員に質問しづらい、年下の先輩から新人扱いされるのがつらいなど、何かとストレスを感じる場面が多いかもしれません。
また、介護職は介護サービスに特化した専門職なので、一般企業のビジネスパーソンが当たり前のように身につけているマナーや一般常識を知らない場合があります。そうした初歩的な知識を勉強し直さなければならないことを負担に感じる人もいるでしょう。
2.介護の仕事で感じていたやりがいがなくなる
介護が必要な人を直接的にサポートする介護職は、やりがいを実感しやすい職種です。利用者と心が通じ合ったときや利用者の要望を実現できたとき、利用者やその家族から感謝の言葉を伝えられたときに、多くの介護職が「この仕事を続けてきてよかった」と感じるはずです。
しかし他業界では、利用者(お客様)に直接関わる機会がほとんどない職種も少なくありません。そのような職種だと、介護職のように日常の業務を通して人間らしい感動を得られる場面は少ないと考えられます。
転職を検討する前に、介護の仕事で感じているやりがいがなくなっても自分が平気でいられるかどうかを自問してみる必要があります。
3.介護の経験・スキルを活かせないことがある
介護職を辞めて他業界に転職する場合、「この仕事なら介護の経験やスキルを役立てられそう」と考えて職場や職種を選んでも、いざ入職すると、思っていたのとは違う業務が回ってくることもありえます。
他業界に転職する以上、せっかく身につけたスキルを活かせない場合があることは覚悟しておかなければなりません。
4.条件や環境の良し悪しの判断がつきにくい
介護職が介護業界に転職する場合、今の職場という基準があるので、求人票を見ただけでも、給与などの条件や労働環境の良し悪しがある程度はつかめるはずです。
しかし、他業界に転職するとなると、求人票の文字情報だけでは待遇や労働環境が平均よりも良いのかどうかを判断しにくいかもしれません。他業界への転職活動では、希望する業種・職種で働いている知人に話を聞くなどして、よりリサーチに力を入れる必要があります。
5.目標やノルマのプレッシャーが大きい
一般企業では、事業目標を達成するために、個々の従業員にも個人目標を設定するのが一般的です。特に営業職では「アポイントを○件取る」「契約を○件取る」といった具体的な目標やノルマが課され、達成できないと上司に注意されたり評価が下がったりすることもあります。
一方、介護業界には、介護職個人の目標や評価基準が明確に定まっていない職場もあります。適正な評価を受けられずモチベーションが上がりにくい面もありますが、その分、目標やノルマを気にせず、のびのびと働ける環境ということもできます。
どちらが向いているかは個人の性格によりますが、数字で左右されない介護の仕事に従事してきた人にとって、目標やノルマが課されるビジネスの世界は思った以上に厳しく感じられるかもしれません。
6.残業時間が増えることがある
実は介護業界は、他業界に比べると残業が少ないという特徴があります。入居型や通所型の施設で働く介護職の場合、シフト制で交代がありますし、訪問介護のヘルパーの場合は利用者宅への訪問時間があらかじめ決められているため、残業が発生しにくいのです。
職種にもよりますが、シフト制ではない他業界の職場では、その日の業務を終わらせるまでは帰れない場合もあります。業務が終わっていても、上司が帰るまでは先に帰りにくい雰囲気の職場もあるでしょう。残業の少ない働き方に慣れている介護職にとっては盲点なので、転職する際には注意が必要です。
7.収入が下がる場合がある
介護職から他業界に転職する場合の主なメリットとして、介護職が他業界に転職すると収入がアップするケースが多いと解説しましたが、必ずアップするとは限りません。将来的に上がる可能性はありますが、未経験の職種・業種にチャレンジする場合は、通常、低い給与額からのスタートになることに注意する必要があります。
なお、介護職の給与は、他業界の他職種に比べると低めではありますが、実務者研修や介護福祉士などの資格を持っている場合は比較的高くなります。収入のことだけを考えるなら、すでに資格を持っている介護職は、安易に介護業界を離れず、さらなる資格取得やスキルアップを目指すか、より給与の高い法人に転職するのが現実的かもしれません。
8.介護業界に比べると求人が少ない
慢性的な人手不足が続いている介護業界では、1年中、さまざまな種類の施設・事業所が求人募集を出しています。もちろんほかにも人手不足の業界はありますが、他業界だと、介護業界ほどの求人件数はないかもしれません。
いざ転職しようとハローワークや転職情報サイトをのぞいても、意外と求人件数が少なく、思うように転職活動が進まないおそれもあります。
悩んだ結果、やっぱり介護業界に残りたい!と思った方へ
ここまで、介護業界から異業種への転職について解説をしてきました。しかし、ここまでの内容を読み、自身に落とし込むなかで、「やっぱり自分は介護業界に残りたい」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ここからは、「介護業界には残るけど今の職場・職種からは転職をしたい!」という方に向けて介護業界内での転職について解説をします。
介護業界内でサービス形態を変えての転職
■入居型施設→訪問介護事業所
入居型施設ではチームで業務を行うのが基本なので、チーム内の人間関係がストレスになるリスクがあります。一方の訪問介護では、介護職が単独で利用者の自宅を訪ねて介護業務にあたるのが基本です。
その分、一定以上の介護スキルや判断力が求められますが、業務中に介護職同士の人間関係が原因で衝突が生じる心配はありません。そのため、職員間における人間関係のストレスを最小限にするために、転職先として訪問介護事業所を選ぶ介護職は少なくありません。
また、入居型施設や通所型施設ではレクリエーションの実施が業務に含まれますが、訪問介護では基本的にレクリエーションはありません。レクリエーションの企画が苦手だからという理由で施設から訪問介護事業所への転職を考える介護職もいるようです。
■訪問介護事業所→入居型施設
反対に、訪問介護事業所で働いてきた介護職が入居型施設に転職するケースもあります。
主な転職理由として考えられるのは、単独での業務が中心となる訪問介護では、日々の業務の中で、先輩職員から指導を受けられる機会が少ないこと、チーム介護のノウハウが学べないことです。
そのほか、利用者の体調に異変が起きた際や転倒などのトラブルが生じた際に、自分で判断して対応しなければならない訪問介護ならではのプレッシャーの重さから、入居型施設への転職を希望する人もいるでしょう。
■入居型施設→通所型介護施設
特別養護老人ホームや有料老人ホームのような入居型施設では、要介護度が高い利用者さんも多いため、介護職が身体介護にあたる場面が多く、基本的には夜勤もあります。
一方、「デイサービス」と呼ばれる通所型介護施設では、要介護度が低い利用者さんが多いため、ハードな身体介護の頻度は少なめで、夜勤もありません。したがって入居型施設で働く介護職が通所型介護施設に転職すると、身体的な負担を減らすことができます。
■特別養護老人ホーム→グループホーム
同じ入居型施設でも、特別養護老人ホームの入居定員が30人以上であるのに対し、グループホーム(認知症対応型共同生活介護)の入居定員は18人以下で、5~9人の少人数のグループ(ユニット)単位で、職員のサポートを受けながら共同生活を送ります。
入居人数が多い特別養護老人ホームで働いていると、一人の利用者に密接に関わるのは難しいため、「一人ひとりの特性や性格に合わせてじっくり丁寧にケアをしたい」という人は、グループホームへの転職を検討するのもよいでしょう。
介護業界内で職種を変えての転職
■ケアマネジャー(介護支援専門員)
ケアマネジャーは、介護を必要とする人が適切な介護保険サービスを受けられるように、「ケアプラン」と呼ばれるサービス計画書を作成し、サービスを提供する事業者と連絡調整する事務系の職種です。
ケアマネジャーは、介護保険サービスを利用しながら暮らす人のための相談センターである「居宅介護支援事業所」に常駐しているほか、入居型施設や地域包括支援センターなどで働いています。
ケアマネジャーになるには、介護福祉士や看護師といった国家資格に基づく業務、または生活相談員や支援相談員などの相談業務を5年以上経験したうえで、介護支援専門員(ケアマネージャー)試験を受けて合格する必要があります。試験に合格後、実務研修を修了すると、ケアマネジャーとして働くことができます。
介護職からケアマネジャーに転職すると、介護職としての経験やスキルをしっかり活かせるうえ、多くの場合収入アップにつながるというメリットもあります。実務経験を積んでから試験に合格する必要があるため、簡単な道のりではありませんが、目指す価値のあるやりがいのある職種です。
■サービス提供責任者
サービス提供責任者は、訪問介護事業所で、ケアマネジャーが作ったケアプランをもとに在宅介護サービスをマネジメントする役割を担っています。主な業務は、ホームヘルパーのシフト管理、ケアマネジャーとの連携、ホームヘルパーへの指導などです。ホームヘルパーが足りないときは、現場に入って介護業務を行うこともあります。
サービス提供責任者になるには、介護福祉士実務者研修(以下、実務者研修)、または介護福祉士の資格が必要ですが、ケアマネジャーのように試験に合格する必要はありません。マネジメント経験を積みたい人に適した職種です。
■生活相談員
生活相談員は、特別養護老人ホームや通所介護施設(デイサービス)といった介護施設で、利用者からの相談援助に対応する職種です。一般的にはソーシャルワーカーと呼ばれることもあります。
施設によって業務内容には違いがありますが、相談援助対応のほかに、入・退所の手続き、クレーム対応、施設内のスタッフ間の連絡・調整、ケアマネジャーや関係機関との連絡・調整など、幅広い業務をこなします。 生活相談員になるための要件は自治体によって異なりますが、求人募集の際に、社会福祉士、精神保健福祉士などの国家資格か、社会福祉主事任用資格が求められるのが一般的です。
介護業務のなかでも人とコミュニケーションを取る場面が特に好きな人、悩みごとを持つ利用者やその家族に親身になって向き合える人におすすめの職種です。生活相談員として実務経験を積んだ後、その経験を活かして施設長などの管理職を目指すのもよいでしょう。
■福祉用具専門相談員
福祉用具とは、車椅子や介護ベッド、歩行器など、要介護者の日常生活を補助するために使われる用具のことです。福祉用具専門相談員は、福祉用具販売・貸与事業所などで、福祉用具選びのアドバイスや使い方の説明、点検などを行う専門職です。
福祉用具は種類が多いため、利用者の体の状態や生活環境に合うものを選ぶには専門知識が求められます。そのため福祉用具貸与事業所には、2人以上の福祉用具専門相談員を配置することが義務づけられています。
福祉用具専門相談員になるには、「福祉用具専門相談員指定講習」を受講し、修了試験に合格する必要があります。
ただし、保健師・看護師・准看護師・理学療法士・作業療法士・社会福祉士・介護福祉士・義肢装具士のうち、いずれかの国家資格を持つ人は、福祉用具に関する知識を備えているとされるため、上記の講習を受けなくても福祉用具専門相談員として働くことができます。
福祉用具専門相談員に求められるもっとも重要な点は、人と話すことが好きなことです。また、勉強熱心で好奇心旺盛であることも、必要です。
というのも、福祉用具メーカーは、高齢化による市場規模の拡大を見据えて、新製品を積極的に開発しているからです。最先端のAIやロボット技術を搭載した製品も増えています。福祉用具専門相談員は、利用者の希望や状況を丁寧に聞き取り、理解したうえで、新しい機能を搭載した福祉用具の情報も踏まえて最適なものを提案しなければなりません。そのためには、常に製品や機能に関する知識をアップデートし続ける必要があります。
■介護ドライバー、介護タクシー、福祉タクシー
介護ドライバーは、通所施設(デイサービスやデイケア)、入所施設(ショートステイ)等で、利用者を自宅や施設から送迎する運転手のことで、事業所に直接雇用されているドライバーのことを言います。
必要な資格は、普通自動車第一種運転免許のみとなりますが、送迎時に利用者の移乗などの介助を行う場合は、介護福祉士初任者研修以上の資格が必要になります。送迎時に利用者の介助を行うかどうかは事業所によって異なります。
介護タクシーは、タクシー事業所等が行っている介護タクシーサービスを指します。そのため、雇用先は介護事業所ではなく、タクシーサービスを行っている事業所になります。
旅客送迎業になりますので、資格としては普通自動車第二種運転免許と介護職員初任者研修の取得も必要となります。
福祉タクシーは、たとえば、市区町村などで高齢者・障がい者向けの福祉系移送サービスで活用されているのが「福祉タクシー」です。
福祉タクシーのドライバーは一般的に乗降介助や介護サポートを行わないので、介護関連の資格は所有していなくて問題ありません。ただし、こちらの福祉タクシーのドライバーは二種免許が必要になります。
介護タクシーも福祉タクシーも法令による明確な名称基準が定まっているわけではありません。そのため、名称の使い分け、区分に混乱が生じる場合がありますが、本稿では、上記のように区分をしています。
■介護事務
介護施設・事業所で「レセプト(介護給付費明細書)作成業務」をはじめとする書類の作成や電話・来客対応、備品管理などを行う職種を、介護事務といいます。
資格がなくてもできる仕事ですが、レセプトを作成する際には、介護保険制度や介護報酬に関する知識が不可欠です。転職前に「介護事務管理士」「ケアクラーク」などの民間資格を取っておくと、介護事務に必要な知識を習得できます。
介護事務は正職員のほか、パートや派遣などで働くことも可能なので、ライフスタイルが変化しても続けやすい仕事といえます。介護職のなかには、出産後に育児と仕事を両立するために介護事務に転職する人もいるようです。
■施設長
これまでのキャリアでリーダー職やマネジメント経験のある人は、施設長や施設長候補として他の施設・事業所に転職するのも選択肢の一つです。要件は施設によって異なりますが、介護職としての実務経験や、介護福祉士やケアマネジャーなどの資格が求められることが多いでしょう。
施設長の求人募集は意外と多く、転職先によっては大幅な収入アップが見込めるのがメリットです。
■介護分野の教員
介護職が活躍できる場は介護現場だけではありません。介護職を経験した後、介護福祉士養成校の教員になるという道もあります。
介護福祉士養成校とは、介護職を目指す人のための専門学校のことです。養成校の教員になるための要件はいくつかありますが、「介護福祉士、医師、保健師、助産師、看護師、社会福祉士のうちいずれかの資格を取得した後、5年以上の実務経験を積む」というルートがもっとも一般的です。
すでに介護福祉士の資格を持っている人は要件を満たしやすいため、資格がない介護職より有利といえます。若い人材の育成に興味がある人に向いている職種です。
介護職が転職に成功するためのポイント
ここまで、様々な転職の選択肢について解説をしてきました。
介護業界内での転職、介護業界以外の異業種への転職などいずれの場合も、後悔なく転職することが理想ではないでしょうか。ここからは転職活動において後悔なく、成功させるためのポイントを解説していきます。ポイントは以下の通りです。
1.転職したい理由を整理する
2.希望条件を明確にし、優先順位をつける
3.職種や志望業界をしっかりリサーチする
4.転職先が決まってから退職する
5.介護スキル以外の強みをしっかりアピールする
1.転職したい理由を整理する
転職活動をスタートする前に、まずは転職したい理由を整理することが大切です。「なんとなく今の仕事がつまらないから新しい仕事をしてみたい」といった漠然とした理由で転職に踏み切っても、転職活動はなかなかうまくいかないでしょう。
というのも、転職の目的が定まっていないと、希望の職種・業種が決められなかったり、採用面接の場で説得力のある志望動機を話せなかったりするため、採用につながりにくいからです。運よく面接がうまくいって採用されたとしても、入職してから職場や仕事が自分に合わないことに気づいて、早期離職せざるを得なくなる場合もあります。
もし今の仕事がつまらないと感じているのであれば、そう感じ始めたきっかけや根本的な原因を探ってみましょう。背景を掘り下げると、今の職場では給与が上がらないからやる気が出ない、上司が尊敬できないからやりがいを感じられないなど、仕事がつまらない本当の理由が見えてくるはずです。
転職理由を整理できると、「評価制度がしっかりした職場に転職したい」「尊敬できる上司がいる環境で働きたい」というように、おのずと転職の目的が明確になっていきます。
なお、こうした転職の目的(志望動機)を応募書類や面接でアピールする際には、応募先の法人の採用担当者が納得できるように、「その職場でなら自分の目的が達成できると考える理由」にあたる客観的な事実を交えながら、ポジティブな表現で伝える必要があります。
2.希望条件を明確にし、優先順位をつける
給与、手当て、休日の日数、勤務時間など転職先に求める具体的な条件は、転職活動をスタートする前に全て書き出しておきましょう。とはいえ、希望条件を全て満たす理想の転職先に出会うことは難しいと考えられるため、希望条件には優先順位をつけるとよいでしょう。
優先度別に希望条件をリスト化しておくと、多数の求人募集のなかから、スムーズに転職先の候補を絞り込むことができます。転職活動の過程でどの法人の面接を受けるか迷った場合や複数の内定が出た場合も、比較検討がしやすいでしょう。
3.職種や志望業界をしっかりリサーチする
特に未経験の職種や介護業界以外の業界を希望している場合は、その職種や業界について十分にリサーチしておくことが重要です。リサーチ不足のまま転職活動をスタートしてしまうと、転職後に「思ったより給与が低かった」「こんなきつい仕事だと思わなかった」といったミスマッチが生じるおそれもあります。
転職情報サイトや興味のある法人のWebサイトなどによく目を通すほか、その業界で働いている友人や知人に話を聞くのもよいでしょう。見学会や説明会などのイベントがあれば、積極的に参加しましょう。
4.転職先が決まってから退職する
今の職場を辞めてから転職活動を始めると、収入が入ってこなくなるため、焦る気持ちから自分に合わない職場でも内定をもらえたから…と妥協して選んでしまうおそれがあります。
働きながら試験や面接などの選考を受けるのは少し大変ですが、今の職場に籍を置いたまま転職活動をスタートして、転職先が決まってから退職するのがベストです。
5.介護スキル以外の強みをしっかりアピールする
介護職が介護業界に転職する場合、介護の経験やスキル、働いている間に取った資格がそのまま武器になりますが、他業界に転職する場合、それらを売りにすることはできません。
他業界の法人が未経験者に求めているのは、営業や接客の際に顧客に好印象を与える人柄など、「ヒューマンスキル」と呼ばれる対人間関係力です。
介護職として培ったコミュニケーション力や協調性、体力、精神力は大きな強みになります。
応募書類や面接では、介護職時代の具体的な体験談を絡めてアピールすると、採用担当者に伝わりやすいでしょう。
【年代別】介護職から転職する場合の注意点
ここまで、介護職から転職する場合のおすすめの職種や成功のコツについて解説してきました。
転職の難易度や備えておくべきスキルは、転職者の年代によっても大きく異なります。
ここからは、年代別のアドバイスや注意点を紹介します。
20代は勢いだけでなく、転職の目的や軸を明確に!
20代は、新しい職場の社風に染まりやすく、入職後も長く勤めてもらえる可能性があるため、人材を求める法人から歓迎される年代です。また、企業によっては第二新卒(一般的には社会人歴3年未満)として、未経験の業種でも採用されやすい傾向があります。やりたい仕事や興味がある仕事がある場合は、思い切って他業界への転職にチャレンジするのもよいでしょう。
ただし、キャリアビジョンがあいまいな状態で転職すると、転職後もまたすぐに職場や仕事内容に不満を感じたり、将来に不安を感じたりして転職したくなるかもしれません。転職を考えているのであれば、この機会に改めて自己分析をし、キャリアプランを立てて、転職をする目的や軸を整理しておきましょう。
30代はキャリアプランやライフプランを考慮しましょう!
30代も若手ではありますが、応募先の法人からは、一定上の実務経験があり、課題解決力や自ら学習する力を身につけている人材とみなされます。職場によっては、リーダーやマネジャーとしての役割や経験を期待されることもあるかもしれません。
未経験の業界へのチャレンジも可能ですが、どうしても20代と比較すると求人数は少ないのが現状です。そのため、転職軸や志望動機とあわせて、自分が転職先の法人にどのように貢献できるのかをしっかりアピールする必要があります。自分のキャリアプランやライフプランを考慮して、慎重に職場や職種を選びましょう。
40代以上は自身のスキルを再確認しましょう!
法人が40代以上の人材に求めているのは、主に、長年の実務経験に基づく確かなスキルや若手人材やチームをまとめられるマネジメント力です。40代以上で全くの未経験の人材を積極的に採用しようとする法人は少ないため、他業界では、なかなか希望条件に合った転職先が見つからないかもしれません。
転職するなら、同じ介護業界の他職種か、介護スキルを活かしやすい業種・職種を選ぶのが現実的です。リーダーやマネジメント経験がある場合は、管理職候補として歓迎される場合もあります。
転職先を探す際には、管理職の求人を中心に探してみるのもよいでしょう。
他業種から介護職に戻ることは可能!資格を取得しておくと経験者として有利に!
人によっては、介護職から他業界に転職した後で、「やっぱり介護職が天職だった」と気づくこともあるでしょう。それから再び介護職に戻ることは可能なのでしょうか。
まず結論から述べますと、異業種から介護職に戻ることは可能です。
介護業界は特に人手不足が深刻な業界であり、少子高齢化の影響で、今後もこの傾向はますます強まると考えられています。人手不足ゆえに、40代や50代以上でも十分に活躍のチャンスがあるのも、介護業界の特徴です。
いったん他業界に転職した人でも、採用面接で介護職に戻りたい理由を明確かつポジティブに説明できれば、年齢にかかわらず歓迎されるはずです。介護職時代に取得した初任者研修や実務者研修などの資格があると、介護スキルがあることの証明になるので、さらに採用で有利になります。
他業界への転職にチャレンジしたい気持ちを持ちつつ、なかなか決心がつかないという人は、将来、介護業界に戻りたくなったときにいつでも戻れるように、まずは資格を取っておくのもよいかもしれません。
まとめ:転職活動を始める前に、しっかり準備を行いましょう
介護職は専門職であるがゆえに、福祉・介護・医療以外の業界では知識やスキルを活かしにくい面があります。ただ、介護の仕事で培ったコミュニケーション力や協調性といったヒューマンスキルは、どんな業界でも活かせるはずです。
介護職を続けるのが難しくなった場合は、同じ介護業界で、ケアマネジャー、生活相談員などデスクワークが可能な職種や相談援助業務中心の職種を目指す道もあります。「マイナビ福祉・介護のシゴト」では、介護職以外にも、福祉・介護業界の幅広い職種の求人情報を掲載しています。
転職を考えているのであれば、まずは転職したい理由をよく整理してキャリアプランを立てることが大切です。そのうえで、十分なリサーチをしてから転職活動をスタートさせましょう。
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