人はどんなしくみで不安に陥っていくのか?回復のヒントは「脳」にあり?【心の不調がみるみるよくなる本】
不安障害は「病気」なの?
人はどんなしくみで不安に陥っていくのでしょうか。心の動きだけでなく、人体の働きを通して不安障害のしくみをひもといていきましょう。
「不安」になってしまうのは脳のせい?
内臓や器官に明らかな異常があり、手術や薬で治療をする「体の病気」に比べて、自分がいわゆる「心の病気」であることを認めるのは難しいことかもしれません。
しかし、不安障害を抱える人の場合も、症状をコントロールできず、本来の生活ができずに苦痛を感じているわけで、状態としては一般的な病気と同じです。「病気とは回復過程である」というナイチンゲールの名言のとおり、まず現状を冷静に認めることで、回復への一歩を踏み出していきましょう。
前にも少し触れましたが、脳機能の研究によって、さまざまな心の動きをつかさどるメカニズムが明らかになってきています。近年は、心臓や胃と同じように、脳や神経に働きかける治療も可能になりました。そのしくみを、一部見ていきましょう。
不安という感情によって活発化するのは、脳にある扁桃体という部分です。不安を感じると、扁桃体は心拍数、血圧、呼吸数などを上昇させます。
不安障害の人の脳では、この扁桃体の活動が過剰になっていて、それにブレーキをかける前頭前野の活動が低下しています。また、安心やストレス対策にかかわる神経伝達物質のセロトニンが不足していることが多く、特に薬物治療は、このしくみにアプローチするものです。
ポジティブ回路とネガティブ回路
京都大学の研究によれば、脳にはポジティブ回路とネガティブ回路があるとされています。例えば子どもが多少の危険など気にもかけず、失敗を恐れずに遊んでいるようなとき、ポジティブ回路が働いていると考えられます。これは「報酬獲得の戦略」と呼ばれるもので、「わからない未来を予測する」のに向いている行動です。
一方で、現在のコロナ禍のような状況において、感染する前から外出を控えたり、人と会うのを避けたりするのは、ネガティブ回路によるものといえそうです。これは「罰回避のための戦略」であり、「決められたことを実行する」のには、こちらの回路の働きが適しています。
多くの人は、この2つの回路をある程度自由自在に使い分けているといえます。日によって気分が違うことを自覚できますし、例えば、今日は行ったことのない店で食事しよう、今月は出費を控えようなどと容易に選択できます。
一方、自分でこれらの回路の切り換えができなくなるのが、「うつ病」や「不安障害」の状態だと考えられます。脳の中で、どの部分がその役割を担っているのかは研究によって明らかになりつつあり、将来的には、何らかの医学的方法によって「回路の移行」が実現できるようになるのではないかと期待されています。
CHECK!
「心の病」も「体の病」と同じ病気と認識して、早期に適切な治療を受け、一日も早い回復を目指そう
【出典】『心の不調がみるみるよくなる本』ゆうきゆう:監修