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【交通渋滞はなぜ起こる?】 テクノロジーの力で解決できるの? #もやもや解決ゼミ

マイナビ学生の窓口

交通渋滞ってなぜ起こる?

日常に潜む「お悩み・疑問」=「もやもや」を学術的に解決するもやもや解決ゼミ。

今回は「交通渋滞」についてです。大学生読者の皆さんで日常的に自動車を使っているという人は少ないかもしれませんが、渋滞に遭うと誰もがうんざりします。 

イライラするのはもちろんですが、渋滞に引っかかるのは時間的、経済的な損失にもつながります。この渋滞をテクノロジーでなんとか解決することはできないのでしょうか? 今回は、『京都大学』情報学研究科の竹内孝講師に回答いただきました。

【画像】GWに渋滞する東名高速道路足柄SA付近の下り線の様子

交通渋滞はなぜ起こる?

交通渋滞がなぜ起こるのかといえば、ざっくりいうと「道路を通過できるよりも多い自動車がやって来るから」と言えます。
 
「交通工学」には多くの知見がありますが、例えるなら道路は河川のようなものです。河川では、流れることができる水の量を超えた流量が入ると洪水が起きます。

道路では水が溢れる代わりに、車の流れが止まり、渋滞が起きると考えられます。道路は様々な箇所で繋がっているため、交通量が増加することについては、その時間の交通量が増える要因や、その場所の交通量が増える要因などが複雑に関係しています。

渋滞予測の精度を上げることができた仕組み

渋滞を予測して、緩和できるのか?という取り組みは世界中で行われています。AIの予測から、これから混みそうな場所を運転手に伝えたり、混みそうな道を優先するように信号を制御して、渋滞を減らそうとするというものです。新しく都市を造っている最中の新興国では、街でAIを使うことを前提に都市を設計している場合もあるようです。

このような取り組みが世界各地で行われている理由は、渋滞による経済損失をなくすこと、また、二酸化炭素排出量を削減するという目標を世界中で協力して達成しようとしているからです。

日本でも、このような取り組みが今注目を集めています。ポイントは「渋滞が発生する前に、予測して、できるだけ渋滞を起こさせない」ことです。病気になる前に予防をしようするようなイメージです。

「渋滞が起こってから対策をする」取り組みも行われていますが、一度渋滞が起きてしまうと荷物の配達が遅れたり、ガソリンがたくさん使われて二酸化炭素が多く排出されてしまいます。そこで天気予報のように「今の車の流れだと1時間後には混みそうだから、混雑を回避するために行動しよう」と呼びかけることが重要です。

ですから、まずAIの予測が正確でないといけません。「渋滞が起きるよ」と伝えても、「いつも当たらないな」と思われたら、AIは街の人から信頼されない可哀想な狼少年になってしまいますよね。

そこで、住友電工システムソリューション株式会社と一緒に、渋滞を予測する新しいAIを作りました。警視庁の協力も得て行った実験では、世界最先端のAIよりも高い精度で渋滞を予測できそうだとわかりました。

私たちは、このAIを時空間AI技術「QTNN」(Queueing-Theory-based Neural Network)と呼んでいますが、技術的にはAIと交通工学の「いいとこどり」をしたシステムです。

交通工学では、今まで培ってきた知見を基にした、交通の状況と渋滞の発生を表すための「関係式」があります。ところが、実際にはその関係式どおりにならないことがあります。

一方のAIでは、人間が全部見るには大変な沢山の道路の交通状況をもとに、実際に起こる渋滞をうまく予測できる可能性を持つのですが、どうして渋滞が起こると計算したのか、その計算式がよく分からない問題があります。

そこで「交通工学の関係式とAIの長所を合体させたもの」が、先ほどのQTNNです。たくさんの道路の状況を元に交通工学のわかりやすい関係式に合う予測をするようにした結果、今までにない高い精度の予測が実現できると分かりました。今後も、このAIを賢くして、予測の精度をどんどん高めていくことで渋滞緩和に役立つものになっていくと考えています。

渋滞が緩和されることのメリットとは?

渋滞が緩和されると、1人1人のイライラが少なくなり、それが積み重なって社会のストレスも緩和され、経済的な損失が減るでしょう。また、二酸化炭素の排出量も減少できると思います。さらには日本の街を整備し直す、計画し直すという場合の参考になるのではないでしょうか。

◇けつろん!

交通渋滞は、テクノロジーを使うことによって緩和できそうです。近い将来、自律型自動運転の自動車が登場し、道路上には「AIが運転する車」と「人間が運転する車」が混じって走行することになるでしょう。

竹内先生のお話によると、そのような時代になっても相互に連絡して渋滞を緩和できるようにAIが活躍することになるでしょう、とのことでした。渋滞のできるだけない未来が来るといいですね。

◇教えてくれた先生
竹内孝

Profile
京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 講師。1985年愛知県生まれ。2009年、早稲田大学理工学部電気・情報生命工学科卒業。2011年、同大学大学院 修士課程修了。同年、日本電信電話株式会社入社。2019年、京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 博士後期課程 修了、博士(情報学)。2020年より京都大学 大学院情報学研究科 知能情報学専攻 助教。2023年より現職。

文:高橋モータース@dcp
編集:学生の窓口編集部

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