温泉街からサステナブルな暮らしを発信 下関市「rinne ETHICAL MARKET」と「Hacal」
「持続可能な開発目標」として世界で取り組みが進むSDGs。その達成のために「エシカル」で「サステナブル」なライフスタイルに注目が集まっていますが、その理念や生き方を食やモノを通じて発信するお店が下関の温泉街にありました。
移住してきたオーナーがここに店舗を構えた理由とは?そして「サステナブル」な理想を込めオリジナルに開発した甘い食べ物とは?取材してきました。
【写真はこちら】県内外のエシカルな商品がギュッと詰まった心地よいお店
「エシカル」なグローサリーストア
JR下関駅から30分ほど車を走らせた山里にある温泉街・川棚温泉。
ここの一角に2023年4月にオープンしたのが「rinne ETHICAL MARKET」(山口県下関市豊浦町大字川棚5139)です。
店舗正面に大きく配置されたガラス窓とダークウッドな外壁、そして紺色の組み合わせが、洗練されて落ち着いた雰囲気を漂わせています。
中に入ると、店内は白い壁とウッドの家具で構成されていてナチュラルな雰囲気。様々なタイプの椅子やテーブルが並び、真ん中の柱を除くと背の高い家具が置かれていないので開放感があります。
こちらのお店は、グローサリーストア(食料雑貨店)で、県内だけでなく全国から選りすぐりの調味料や日用品、雑貨を販売しているのですが、全てある基準で選ばれているんです。
それは店名にもあるとおり「ethical(エシカル)」であるかどうか。
エシカルとは直訳すると「倫理的な」という意味。昨今「エシカル消費」などという言葉も広まっていますが、それはつまり「安さ」や「派手さ」ではなく、「人や環境、社会に優しいものか」という大きな視点で物を買ったり行動をしようということ。
その理念に基づき、お店に並ぶのは、地域活性化につながるか、自然環境を改善し維持できる方法で作られているものか、伝統的な技術や文化に基づいて生産されているものか、という3つの視点から選ばれた商品です。
全国から選りすぐりの「良いモノ」
店に並ぶ商品のうち、ローカルなつながりを大切にしたエシカルな調味料をいくつかご紹介します。
まずは地元の下関に移住して活動する料理研究家・西野優さんが手掛ける「ピリカタント」のジャムです。
写真左 苺とラベンダー、ミント 950円 / 写真右 とかち小豆とシナモン 850円
季節の恵み、旬の食材をビンに詰め込んでいる一品です。パンや焼き菓子などに合わせてみてはいかがですか?
続いては、長門市の棚田を活用して作られたハーブ畑「棚田の花段」で収穫されたハーブ各種。
耕作放棄地だった場所を活用して作っているもので、ハーブティーや料理の香り付けなどにぴったりです。
県内だけでなく、県外のエシカルな調味料もセレクトされています。
こちらの料理ソースとプラムケチャップは長野県のもの。
写真左 アントンソース 1850円 / 写真右 プラムケチャップ 1050円
長野県北部・野沢温泉村にあるホテル&ジャム工房「ハウスサンアントン」が、添加物を使わないようにして手作りで仕込んだ商品です。
「アントンソース」はアンズと醤油で作った料理ソースで、現地の農園で手摘みされたアンズが使われています。「プラムケチャップ」は、長野県産のプラムをしっかりと煮詰めて作っており、「ハウスサンアントン」の朝食に提供されているオムレツに添えられているそうです。
店内には、調味料など食品のほかにも、オーガニックな化粧品や地球に優しい生活雑貨なども並んでいますので、訪れると新しい発見がありそうですね。
カフェメニューも
「rinne ETHICAL MARKET」はカフェも展開しており、コーヒーやハーブティー、簡単なお菓子を店内で楽しむことができます。
アイスコーヒー 600円カヌレ 300円
コーヒーは、ブラジルやグアテマラ産などのオーガニック認証をうけたスペシャルティコーヒーのみを使用。
米粉で作ったグルテンフリーのカヌレは、長門市俵山を拠点に「うふふごはん」を運営する古冨南さんが作ったものです。
先ほど紹介した棚田ハーブを使ったハーブティーもいただけますよ。
スコーンセット 850円ハーブティー (別途)
「モヒートミントブレンド」「ブルーマロウブレンド」「ヴァナトゥルーシーブレンド」など、棚田で採れるハーブ各種を使ったオリジナルブレンドです。
セットに付いてくるのは、抹茶とプレーンのスコーン。こちら自家製で、スコーンに添えられているのは先程紹介した「ピリカタント」のジャムです。
開放的な窓から温泉街の景色を眺めながら落ち着くティータイムを過ごしてみるのもいいですね。
この地に移住して見出した可能性
この店のオーナーは下関市彦島生まれの斉藤圭祐さん。
幼少期から県外に引っ越して育ったそうですが、大学卒業後は大手広告代理店の営業職などを経て、2019年に神奈川県でデザイン会社「CLAVIS HELICE」を設立。
サスティナビリティ推進を軸に、企業や団体のSDGsに関するプロジェクトに携わっています。
そして結婚と出産を機に斉藤さんの生まれ故郷の下関に移住を決め、ここ川棚に居を構えました。
川棚温泉を訪れた時に、三方を低い山に囲まれた景色が気に入ったそうで、里山がしっかり残っていること、海が近く保育園なども生活圏内にあることなどが移住の決め手となったそうです。
温泉地には観光で市外や県外からも人が訪れることから活動の拠点としてもぴったりだと感じたのだとか。
デザイン会社の本社も川棚に移し、これまで追求してきたサステナブルな暮らしを実践し発信する拠点として、2023年に「rinne ETHICAL MARKET」をオープンさせました。
「rinne(リンネ)」は「輪廻」、縁や循環、つながっていく、というサステナブルなイメージから店名に使った、と話します。
思いと理念を詰めたアイスクリーム
そして斉藤さんは今年4月29日、地域で活動する仲間と共に「rinne ETHICAL MARKET」の横にクラフトアイスクリーム店「Hacal(ハカル)」を新たにオープンしました。
壁に描かれたピンクの店名ロゴがセンス抜群。
取り扱っているアイスのフレーバーは8種類ほどで、近隣で育ったフルーツに長門の棚田で収穫されたハーブを組み合わせてオリジナルのアイスを作っています。
料金はシングルは450円、ダブルは750円となっていて、今回はダブルで「いちごローズマリー」と「ミルク」をセレクトしてみました。
ダブル 750円 (写真の上がいちごローズマリー、下がミルク)
いちごは近隣の農園で収穫されたものを使い、そこに棚田ハーブをミックスして作っています。いちごそのものの甘さを感じつつも、ローズマリーの風味があり、上品で大人なイメージのアイスでした。
ミルクも動物由来ではなく植物由来のヴィーガンミルクを使用しているとのこと。いずれも、その完成度の高さにびっくりするほどの美味しさ!
斉藤さんに伺うと「Hacal」で扱うアイスは「地域を再生するアイスクリームを目指していく」と語ります。
地域そのものがもつ自然の魅力を食に込めたいと考えていて、子どもから大人まで誰もが気軽に食べられるアイスで表現することに決めたのだそうです。
「Hacal」は「H 幸せ(happiness)」「a 気づき(awareness)」「c つながり(connect)」「a 行動(action)」「l 地元(local)」の頭文字を組み合わせたとのことで、このアイスを食べることで、その地域の魅力を知り、地域のことを考えるきっかけにしてもらいたい、という願いを込めているのだと話してくれました。また、「ハカル」という読みそのものにも、「思い量る」という思いが潜んでいます。
これから暑くなってくる季節ですので、川棚を歩く際にはこちらのアイスクリームで一休み、おすすめです!
今回は「rinne ETHICAL MARKET」と「Hacal」、この本州の西端の湯町から食を通じてこれからの生き方を発信する素敵なお店を紹介しました。
川棚に足を運んだ際には、こちらの美味しいアイスを食べながら、地域の魅力を十分に堪能してみてくださいね!