【にい経編集部発】記者コラム&今週の主なニュース 3月29日〜4月4日
記者コラム
日本酒とトランプ関税
2024年の暮れに、日本の「伝統的な酒造り」がユネスコ無形文化遺産登録された。ユネスコと言えば、やはり2024年に佐渡金山が登録された世界遺産の方が知られているが、近年は無形文化遺産も大いに注目されているのだとか。その中でも特に最近注目されているのは食の分野。2010年の「フランス人の美食」を皮切りに、2013年には「和食」が登録された。
酒類の登録も思っていたより多い。ジョージアの伝統的ワイン、ベルギービール、モンゴルの馬乳酒、キューバのライト・ラム、セルビアのプラム・スピリッツ。これに続いて日本酒が6番目に登録された。
近年のインバウンド増、日本食のブームなどで日本酒はグローバルに需要が拡大、輸出は13年連続で伸びており、かつての6.6倍増に達している。一方でご存じのように、内需は壊滅的で、国内消費量はピーク時の6分の1とも言われ、酒蔵の数は3分の1になった。日本酒はもはや、海外に販路を求めるSAKEとして「世界酒」への昇華が活路といえる。
かつて日本酒王国と言われた新潟県にも、世界進出する蔵が年々増えている。輸出用の銘柄を、わざわざ仕込む蔵などもあり、全体の15~20%程度は海外という蔵もある。酒蔵の海外志向はしばらく続くだろうと見込まれていた。
ところがここに来て、米トランプ大統領による相互関税の導入だ。すべての国・地域に10%、対米輸出黒字の大きい60カ国に上乗せ税率の適用。日本には24%。なおEU諸国は対抗措置として米国産のウィスキーに50%の関税を課す方針を発表すると、トランプは「EUから輸入している酒類には200%の関税を課す」と酷い消耗戦に入っている。
日本酒は、当初は「除外されるのではないか」とみられていた。酒蔵に務める記者の知人も「日本酒は対象外なので、どちらかと言えば、日本経済停滞による先行き不安からの需要減が心配」と話していたが、その直後に付き合いのある貿易商社で緊急ミーティングが開かれたという。
現在、日本酒の海外市場で最も大きいのは米国で、全世界の3割程度だという。新潟の酒蔵の多くも、ほとんどは対米輸出が主戦場。日本酒、日本の酒造りの存在が、かつてないほどにクローズアップされた矢先に、冷や水を浴びせられた格好だ。
日本酒が「世界酒」へと昇華する道は断たれたのか。これには見方が二通りあり「大きな打撃を受ける」とする意見と「打撃は少ない」とする意見に分かれている。日本酒を愛飲する海外ユーザーの多くは、日本酒が持つ世界観やストーリー性に共感し、食事とともに楽しむという向きが多いのだという(このあたり、実は海外の方が日本人より酒の飲み方がこなれているかもしれない)。日本酒を「唯一無二」の存在として愛飲する人たちは、値上げされても飲むのではないか、という説だ。ただ米国での消費量は確実に減るだろう。
(編集部 伊藤 直樹)
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